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一兆年の夜 第三十九話 三兄弟物語 無限逃走の責務(四)

『あれから三の年が経つ。八弥兄さんは随分と仕事が早くなったよ。別に星央兄さ
んのように万遍なく仕事をこなせる訳じゃない。けれども特に戦の関連では私の想
像出来ない閃きをするから驚くばかりだ。
 例えば一の年に一回は戦術・戦略の更新をする所を八弥兄さんは半年で更新す
るようにしたり、至らない箇所があれば修正するように現場監督に意見を堂々と言
えるなどあらゆる所で時代を先取りしてゆくんだよ。勿論星央兄さんのようにそんな
閃きは最初の内は閣僚全員の猛反対を受けたさ。採用されてもしばらくの間、現場
はやりにくかったという報告が山程あって処理するのに時間がかかったよ。
 でも今ではもう常識と成ってしまった八弥兄さんの閃き。私も当初は無理だと思っ
ていたのに時の流れはみんなの満足しない部分を押し流してしまうから困るな。
 時の流れで思い出したけどあのお姉さんはもう三十三になってたんだな。いい加
減に恋者を作ればいいのに。それとも恋者を作りたくない理由でもあるのかな。例
えば生涯医者として皆を助けるとかかな。まあいいけど。
 恋者で思い出したけど八弥兄さんに隠し子が居るって噂があるけど本当なのか。
仮にいても八弥兄さんは子供を天同にしないかも知れないじゃないか。その方が子
供の為になると思って。済まないけど今日はここまでだ。
                     私は今年で齢二十一と十の月と十七日目になる』

 十二月七十八日午後四時十二分一秒。
 場所は国家神武首都ボルティーニ中央地区中央官邸。三階にある中央会議室。
 円卓状の机に肘を付ける者は全て重要閣僚。その中で最も位の高い者は赤い丸模様の旗を背に受けた席へと座る。
 齢三十三にして一の月と十日目になる神武人族の中年は白い部分が広がり始める脇まで伸びる長い髪をはためかせ、更には豹族のような鋭い目をしながら自身が考案した物を通そうと訴える!
「--いいか! 銀河連合から学ばなければならないのは彼等の戦い方が時代の先を行く事だ! 昨日まで通用した戦術が今日では通じない。今日通じた戦略が明日では通じない。そうあってはならない! 俺達全生命も銀河連合に倣い、より早く技術の更新を進めなければいけない! より革を新しくした技術へと進める! でないと国家神武は食われます!」
 食われちゅねえ--齢四十一にして九の月と二十八日目になる神武鼠族の老年であり、産業長官のヤマカゼノチュミシタは賛同しようか迷う。
「それに将来の軍者育成は国家神武にとって最大の課題だ! 確かに俺は強い! けれどもいざ俺のような連中が居なくなったらどうなる! 誰か強い者を探すのか? 強い者を起用するのは誰だって出来る!
 しかし、強い者に育て上げる方が最も重要だろう! 強い者は年月が過ぎれば全て居なくなるんだよ! だからこそ兄貴もタイフェスもレオンの爺さんも真鍋べア彦もみんないなくなったんだ!
 産業長官チュミシタよ! お前だって多くの仲間の死を目撃し、なおかつ去年の夏に尊敬出来る先輩が墓の下に埋まったって聞く! お前なら俺の言いたい事は少しはわかるだろ!」
「ま、まあわかりまちゅが、それでも突然の変更で困る者の事を考えると賛同出来かねないのでちゅ」
 それは同感ダダ--齢三十八にして三日目になるゲネス猪族の老年にして交通長官近藤イノ吉はチュミシタとほぼ同じ意見だった。
「どうします、兄さん。このままじゃ規定数に達しません。
 その結果、八弥兄さんが出した案は白紙に戻るかも知れないよ」
「心配するなよ、七。たかが白紙だろ? だったら一からすらりと書いたらそれで済むじゃないか!」
 いや、そんなに簡単じゃないって--七は青く染まる短髪を右手で掻く。
「とにカアく八弥様。戦いは数デエしょう。数を量産しない事には軍者はイザアという時の物不足に困って銀河連合との戦いで勝利出来ないと考えマアスが」
 齢二十四にして十八日目になる神武熊族の若き防衛官カンナギノクマソノヒコは数の論理を主張する事で質の向上を重視する事に反対する。
「俺様が言うのおおもあれだああが、育成官はああどれくらああい回ああす?
 まさか『少ない数で大多数を教えろ』とおおか無茶な注文んんをするでええしょううか?」
 齢三十五にして十の月と一日目になるエウク梟族にして財務長官シャラワウ・シャウルルは八弥の案に反論する。
「どいつもこいつも俺の案を認めない! だったらこれならどうだ?」
 八弥は兵力増強特別案を通すべく逃げ道を駆使する--それは施行を敢えて六の年に延長させ、その間に案を改良するという物。
「五の年だ! それまでに教官軍者の数を増やし、更には国民の総数を今よりも一とコンマ一倍以上に増やす事が出来るなら教官の数不足を凌げる!
 そんな理由で案は一旦休止するんだ、いいな?」
 全閣僚は一斉に--また逃げ道を作って案を通すか--と心の中で呟く。
 その結果、兵力増強特別案は反対の数が半数に迫るものの休止させる事で半ば成立状態にさせた。
(時は一刻も争うんだ! 俺は正面から逃げてでも国家神武の軍者一名当たりの戦力を高めなければならない! そうしないと兄貴の仇討ちもアリスティッポスを俺達の力で取り返す事も叶わない!
 それに俺は子供達の為に格好良い所を見せたいんだよ!)
 彼は理恵が産んだ子供の数を二名以上と直感……!

 午後八時二分七秒。
 場所は未定。神秘的な場所で暮らす三名程の親子。
 齢三十三にして一の月と十日目になる応神人族の一名母は齢ニにして二の月と二十二日目になる雌と雄の双子に子守歌を披露する。
「ねんねん、よいこだ、ねむりのとおき。ぼうやよ、じょうよ、ねんねん、ねんねん--」
 彼女は双子の姉弟が眠りに就くのを確認すると月を眺める。
「ねえ、八弥。これで良いのかな? あたいはあなたが居ないと安心出来ない日々が続いて胸が苦しい。あなたの居ない日々はいつもあたいの死ぬ夢しか見ない。まだ幼い八理と恵弥を置いて死にたくない。けれどももし死んだ時を見越してあたいを迎えに……いいえ、八理と恵弥を迎えに来て。
 特に恵弥は仙者よ。あたいにはこの子の呼吸が他の子と異なるのを感じたわ。
 だから迎えに来て、八弥!」
 八弥と別れて二名の子を雌の手一つで育てる中条理恵であった……。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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