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一兆年の夜 第三十九話 三兄弟物語 無限逃走の責務(三)

『えっと最近気になる事を発見。星央兄さんの遺産にもなる新たな都市建設予定の
えっと僕の命名だけどタイガーフェスティの場所で建設業者達は血の跡とかを見つ
けたとの報告が届いたんだ。すぐに交通長官メエメン・メヒイストは調査団を派遣し
て一の週くらい調べたけど、判明した事は明らかにこの現場に銀河連合が現われ
ているとの事。他にはそれを恐らくは二名から四名くらいの数で倒されていったとか
何とか。なおかつ建設予定の周囲を調査したら、一カ所だけ何回も掘り返されてい
る跡があったとの事。
 前はマンドロス山の標高が吉を吸い取られる高さに必ず一カ所に集中する地点
に銀河連合の死体が埋まっていたとの報告が合ってからもう一の月経ったかな?
ログホラーニさんが足を回した事であの場所では無断に立ち入る生命はすっかり
居なくなった。無断で堂々と入るのは八弥兄さんくらいだよ。それが居なくなるとした
ら、待てよ。
 もしかするとタイガーフェスティに無断で入ってくるのは八弥兄さんかも知れない。
それと他に誰か居るのかな。八弥兄さんは深夜に外を放浪しては銀河連合を斬っ
てゆくという習慣を持ってるけど、必ず一名で放浪するんだよ。何故なら兄さん曰く
<死なれたら困る>らしい。全く誰かの助力を借りない八弥兄さんらしいよ。
 僕が言いたいのはそうじゃないよ。あの兄さんと一緒にいるのは誰なのかって事
だよ。雄なのか、それとも雌なの。いやいや、雌は有り得ない。八弥兄さんは美弥さ
んの件もあって雌を連れて行く事は絶対無いはずだよ。だから。
                ごめん、ログホラーニさんが来そうだから今日はここまで』

 三月八十日午前一時五分九秒。
 天同八弥と中条理恵はこの場所で再会して以来、この時間になると毎日のように会っては痴話喧嘩をし、そして出現した銀河連合を倒してゆく。その結果天同六影の形見である神武包丁『六影』は使い物にならなくなり、新たに八弥は神武包丁『星央』を使用するようになった。この包丁は本来は星央に渡される予定であり、飾り同然の扱いを受ける予定だったが、彼が亡き今は母奈々による薦めで八弥に渡された。今のところ『星央』の刃は零れておらず、健在であった。
 話を戻せばどうして八弥と理恵は毎日のように会うのか?
 それは--
「『別れる』ってどうゆうつもり!」
「もうここで会う事はない。七の野郎が本格的に守りを固めに入った。明日になればこの場所もこんな時間帯に来ても軍者が子守をしていてこっそり会えなくなる」
「そんな! だったら他の場所でも会いましょう! 八弥だってあたいと別れるのは--」
「それは無理な話だ! 七は日に日に仕事をこなして来やがる! ありゃあ兄貴以上の才覚だよ、政務に関する事なら!」
「けれども弟君を黙らせれば他の場所だって--」
「やると思うか? 俺はそんな事をしたくねえよ。大体仕事を放り出した男の言葉に耳を傾ける生命がどこにいる? ましてや高い地位にいながらそれに甘んじるこの俺がよ!」
 臆病者ね、八弥は--理恵は本心ではないと気付き始める。
「どうゆう意味だ? 大体俺は七に迷惑をかけるが黙らせる事はしたくねえ! 俺はそうゆうことは好まない--」
「あたいが言いたいのはそうじゃないわ! 八弥は恐いのよ、死んだ雌の事を思い出すのが!」
 死んだ雌--紛れもなく妹分であった叶美弥。
 八弥にとっては守るべき雌だった!
「誰かは知らないけどあなたは……話の続きは銀河連合を倒してからにしましょう、ねえ八弥?」
 ああ、そうだな--八弥は蟠りを抱きながらも二体以上は居ると思われる銀河連合の前に刃を見せる!
 建設途中の建物の影に隠れながら銀色の眼を発光させる銀河連合--何かを過去に飛ばしたと推測される。
(あの光は何なんだ? けれども数はわかった! 三体だな!
 更には一体の居場所が判明したが、距離が遠すぎるな、近付いて欲しいけど奴等が応じるとは思えない。どうすれば--)
「あなたの考えは解ったわ! ここはあたいが彼等の食物になってみせるわ!」
 食物、ってオイ--八弥が叫んだ頃には理恵は位置を特定出来た銀河連合がいる場所に向かって蘇我鋭棒『入鹿』を地面と平行に構えながら腰を屈めた状態で突進する!
(やっとわかったぞ! あの女め! こうゆう時でも俺を捕えておきたいか!
 だったらやってやるよ、出来る限りなあ!)
 八弥もまた走り出す--もう一体がどこに潜んでいるかを突き止めながら!
 な、に--三体目は地面に潜っており、理恵は利き足を掴まれて顔を引き攣る!
「待ってろよ、理恵! 土竜型は斬れないが、他二体は両断してやるからな!」
 高度成人体型四百四十四くらいの高さから急降下する鷹型を迎え撃つように刃を地面に降ろす八弥!
(日に日に奴等は学習してやがる! このままじゃあ傭兵しか一体をなんなく倒せる生命がいなくなるかも知れない!
 兄貴よ、どうやら俺は戻らなくてはいけなくなるかも知れない)

 戦いは僅か二の分で決着が付き、一の時程かけて銀河連合を埋葬した二名は話の続きを始める。
「もう忘れなさい! そうすればあなたは毎日あたいと会えるわ。あたいと共にお喋りをして、共に銀河連合を--」
「無理な話だ! それに理恵も気付いてるだろ? あいつらはもう今までのやり方では倒せなくなってきているという事を!」
 使い物にならなくなった『入鹿』の事なの--背中から蘇我鋭棒を降ろして、刃を付ける先がやや曲がっている事を確認する理恵。
「刺した時に僅かだがずらしやがった。俺だってそれを思い知らされたよ、理恵と再会する時に!
 あの時は酔いと腕の低下による刃毀れかと睨んでいたが、もう一度奴等を斬った時に気付いた! 俺の太刀筋を研究してやがるってな! それから兄貴の形見に換えてからは奴等の動きに注意しながら両断したが、これは付け焼き刃に過ぎん。もう一度やり合えばまた刃毀れを起こす」
「……戻るの、政務に?」
「気付かれたか! そうだな、戻ったらどれだけ叱られるかわかんねえが、そんなのは兄貴の時から慣れっこだ。一の月が経てば文句を言う奴らは居なくなるだろう」
 本当にそれだけ--後に『女の勘』と呼ばれるものを発揮する理恵。
「どこまでも疑う女だ! いいか、理恵! あいつの代わりが務まると思うなよ!
 俺はあいつの事なんて只の妹程度に見ていたんだ! 心臓を高まらせるものだって感じないし、欲情だってしなかったはずなのに! なのに死んでからどうして締め付ける!
 教えろ、理恵! どうすれば忘れられる!」
 豹族の如き鋭い目つきは猫族のような何かに縋るような弱い目つきに変わる! 天同八弥は過去から逃げたかった! けれども過去は彼を逃がしてはくれない! その結果として彼が行う行動は更なる逃げを作る事にあった!
 そんな八弥の心情を全ては理解しなくとも愛情を持って接しようと試みる者は目の前に居た!
「もっと逃げて良いわ。ただし、あたいを抱けたらの話だけど」
 彼女は種を残すべく賭けに入った--口では運命を受け入れたつもりであった彼女も逃げを求めていた!
「雌の尻を追っかけた男が……今年で三十に成ったこの男が抱ける道理なんてあるか!」
 それは果たして一兆年の神々による導きなのか……?

 二の時が過ぎる頃、八弥は目を開けて理恵の前から姿を消した--服をしっかり着せる事で恥ずかしい姿を晒さないように。
(さよならだ。恐らく子は宿ったのだろう。雄なのか雌なのかは知らんが、俺は確信を持って言える!
 中条の血筋は今もまだ健在であると!)
 八弥が去ってすぐに理恵は起き上がる。彼女が最初に行動したのは腹を摩る事だった。

 三月八十二日午後十時七分五十六秒。
 場所は国家神武首都ボルティーニ中央地区中央官邸。
 中は今までで最も騒然と成った! 全閣僚が驚愕の余り落ち着きのない行動をしては誰かにぶつかる始末だった!
 ここ最高政務官室は現在天同七の執務室に変貌するもある者の帰還でそれは吹っ飛ぶ!
「な、な、な、な、な!」
 齢十八にして十の月と十七日目になる神武人族の少年天同七は二番目の兄八弥の政務復帰に一番驚いていた!
「相変らず優しすぎるな、七は」
「何言ってるんだ! 八弥兄さんのせいで僕はどれほど苦労したかわかってるの!
 目の隈はこんなになってるんだ! ちゃんと鏡で見たから--」
「ところで戦術・戦略に関する書類を俺に寄こせ! 今から済ませに行くぞ!」
 七の目から大粒の液体が机の上に落ちてゆく!
「やっとやる気になったんですね、兄さん!」
「ああ、俺が居ればこんなのすぐに片が付くぜ!」
 そうかな--七は十の分かけて八弥用の書類を分けてそれを纏めて八弥の両手に乗せた!
「オイ、七よ! 百枚以上ないか?」
「最後まで付き合って下さい、八弥兄さん!」
 格好付けて戻るんじゃなかったよ--八弥は後悔しながらも慣れない手つきで書類を通してゆく!
(折角全て終わらしてもログホラーニの腰砕けは約六割を返して来やがった! お陰で一日分を二の日をかけて終わらす羽目になったよ! 何で俺がこんな目に遭わなくちゃいけないんだよ!)
 それから三の年の秋が訪れようとしていた……。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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