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一兆年の夜 第三十八話 三兄弟物語 星々が輝く世で(終)

 午後六時十八分三十八秒。
 場所はアリスティッポス大陸エウへメロス地方。
 突然の襲撃もあり、予定より八分の三まで数を減らした進行部隊は神々の意志が宿す仕掛けだらけの建物に到着した。
「兄貴、ここの建物は確か真鍋べア彦の遠征記録では中継として使ってたって記されてたな?」
「ああ、何しろここは鬼ヶ島の地下にある神々が宿す仕掛けだらけの船と同じように自分達の想像を超える!」
「けれども使い方もわかんねえ上にましてや使えるのか? イタラスの作った飾り物斬り包丁みたいにあるだけじゃねえのか?」
 そうかもしれない--星央はとある一室の奥にある鍵盤を触りながら只の飾りである事を確認。
 ここにいましたか--兄弟二名に割り込むように齢三十にして九の月と八日目になるアリスト人族の中年レインズ・キングレイが部屋に入る。
「レインズか。用件は何だ?」
「大変なんだ。また銀河連合が襲撃したぞ、しかも白熊型を連れて!」
「「何!」」
「この建物の裏口からあいつは侵入した! 現在我等は最高官の命令に従って強すぎる相手とは戦わないように有利な条件になるまで退いてますが、それにも限度があります!
 どうかお願いします!」
 二兄弟はすぐさま白熊型が居ると思われる場所に案内するようにレインズに頼んだ!
「代えの包丁は斬れやすそうか、兄貴!」
「『わに兵衛』に比べると重く感じる!」
「そうか。けれども必要になったら俺の『六影』を貸しても良いぞ!」
 持ち廃れさせる気か--すんなりと断った星央。
(白熊型だけ? もしや--)
「どうしたんだ兄貴?」
「八弥、白熊型の所に着く前に自分の頼みを聞いてくれるか?」

 午後六時五十八分五十七秒。
 食料庫と思われる部屋。かつてアリスティッポスを遠征した者達はこの部屋を寝床にした。理由は食糧を置く為に使われる棚がちょうど軍者達の体型にほぼ合ってるからであった。ただし、小さい種族達は除くものとする。
 そんな場所で毛利ベアレルは二度も部下全員の死を見る事になった!
「はあハア、オイラだって熊なんダアぞ!」
 相手は白熊型。物斬り包丁、望遠刀、蘇我鋭棒、徒手空拳を得意とした軍者が次々と白熊型の前に骨となった。残ったベアレルは左肩を脱臼し、右後ろ足は踵より少し上の部分を骨折し、後ろ両足で立つ事もままならない。おまけに持参した二本の雄略差し包丁は折れ曲がり、使い物にならない!
 その為ベアレルは四足歩行の体勢から動かせる足のみで白熊型の後ろ足を掴んで仰向けに倒そう飛ぶ!
 が、信じられない事に白熊型はまるで人型や鬼型のように後ろ右足でベアレルの顎を蹴り飛ばした--成人体型一とコンマ四もあるベアレルを一回転させる程の脚力で!
 うつ伏せに倒れたベアレルは気を失う。その隙に白熊型はこの部屋に残った最後の軍者に足をかけようとしたが--
「ベアレルから離れろ白熊型!」
 成人体型一とコンマ二以上あり、脇まで伸びる長い青髪を美しく乱れながら部屋の外まで聞こえる叫び声を出しながら白熊型を振り向かせた天同八弥が部屋の中へと入った!
 白熊型は本来無視しようとする素振りを見せているらしかったが、八弥をよく見て無視出来る相手ではない事を感じる素振りだった。
「ベアレルを弄ばないのか……つまりそれだけ強い相手である事を理解してるんだな、お前は!」
 同時に--こいつはまともに斬らしてくれない--と直感!
 それでも全生命の為に、美弥の念無きを晴らす為に八弥は突きの構えを保ちながら白熊型に飛び込む!
 白熊型は八弥が間合いに近付くとすぐに身体を動かす--右に動かしながら首根っこに噛みつくという返し技で死なせる為に!
 首ならくれてやる--八弥は包丁を左に寝かす!
 勝負は一瞬で決まった--二つの中心で赤黒い血が天井まで届かんと飛び散る!

 午後七時五十二分二秒。
 表門前には無数の死体があった--生命と銀河連合が混じり合うように!
 星央とレインズはその場で強者と出会う!
「援護しましょうか? その方が少しは--」
「付け焼き刃にもならない。ましてや相手が指揮官型となれば尚更だ!」
 星央は今まで二度も指揮官型と戦い、辛勝してきた。
 一つ目は八弥の初陣の時でその戦いでは眉間に十字傷を受けながら十名掛かりで倒した。
 もう一つは四の年より前の東海洋藤原で羽根付きとの戦い。この戦いでは八弥こそ参加しないものの十名以上かかっても相手に成らず、もう少しで自分自身が死にそうな所を駆けつけたツクモノカミの協力もあってこれを倒した。
 だが、今度の指揮官型は一目見て今までとは大きく異なると直感!
(何よりもこの凍えるような環境であるアリスティッポスに住む以上は一体どうゆう戦い方をするかわかったものではない!
 とにかく八弥を離して良かったのかも知れない。あいつを加えても勝てる気がしない!)
 それでも星央は歩を進める--レインズには無言で退却するように指示しながら!
(レインズは生存者を捜しに向かったのか? いずれにしろ無意味に死者を出すくらいなら自分が足を止めてやらないといけない! 勝てる勝てないなんて問題ではない! 自分はこうして自らの人生を記してきたんだからなあ!)
 星央は指揮官型に無謀な挑戦を開始!
(まずは……思考する間もないくらい速いのか!
 それでも……隠し腕なんてどうだっていうんだ! 大事な……ドウワット!
 首を持って行かれるとこ……グウウ! たかが左腕一本くらい食え……何、当たらないだと!
 肘から先が骨になってまで狙った攻撃が……ガア! 今度は左肩の肉を裂かれるなんぞ!
 血は……虚仮威しなんぞ受け取る! 自分は貴様に勝つつもりはない! 勝つつも……リリイイイイイ!
 息ぐる、しい! 右の肺を、やられ……今度は、胃に穴が空いて、グウウ!
 全ての、攻撃は、寒さ、も。肉体、から出る、血も。じぶ、んは、たた、戦うしか……目があああ!
 く、暗い、か。真っ暗な、はず、じゃ? こ、れが盲目なる者の世界……左耳の感触がおかしい?
 どう、やら左耳朶は斬られる事で、すん、だか? だが不思議な感じ、だな! 死を感じるというのに……ここに、そこに、あっちに! 感じてくる! 指揮官型の攻撃が解るような感じは変かも知れん!
 けれどももうすぐ指揮官型に攻撃を当てられるかも知れ……ググウウウ!
 咽を掻き切られたような? 声も出ない? 声……アガアアアア!
 今度は五カ所、以上、も突き刺さる痛み? もはや痛みすら自分に……寒い。
 血を出しすぎて寒くな、る、かな? 左腕……は肘より先、は骨だら、け。右手の感覚は、もう、な。死を感じるのは良い気分じゃないと思っていたのに、お、も、ぉ、ぇ……あれ?
 声がすぅ? や、ぁ、う、ぅ、ぃ? ぁ、ぁ……)

 男は起き上がる。
『ここはどこ? 自分はなんだ? 何の為にここにいる?』
 男は全身が光の玉で構成された存在。記憶もなければ肉体もない。ましてや重さだって存在しない。只はっきりする事は自分は魂だけの存在であり、自分は僅かな時間を懸命に生き、僅かな大地を開拓してゆき、僅かな数の部下を持ち、僅かな力と知恵で支え合い、僅かな魂を脅かす僅かな者達を倒し、僅かしかない存在に、僅かな理由で死を迎えた。長く生きたつもりでも結局は僅かしか進歩しない。それだけの魂である事を理解しては忘れてゆく……。
『帰りたい理由があったはずだが、忘れてしまうとは。そうか。魂だけでは記憶は保存出来ないのか。あれ? 何を考えた?
 まあいいか。死んでしまった以上はもう自分が生者の居る世界に戻る訳にも? 何だろう? 叫び声が届く? 誰の叫び? 女の叫び? 赤ん坊の叫び? 子供達の叫び? 他にも少年と青年の叫びもあったかな?
 何を考えていたっけ? もう思い出せない以上は悠久を彷徨うしかないよな?』
 男は想念の海を漂い、やがて同化して個性の全てを預ける事になった……。









『アリスティッポス大陸進行作戦は大方の予想通りの結果となった。だから何。止
めとけば良かったのか。あいつらはみんなして星央兄さんへの責任を。
 第一そんなに悲しいのか。そんなに悔しいのか。そんなに辛いのか。苦しいのか。
僕にはその答えを出せない。美智琉さんにどうやっても答える事が出来ない。僕の
限界だよ。
 僕は遺された者達を慰める資格はなかった。特に八弥兄さんと輝星の心は修復
なんて出来る訳がない。あれだけ仲が良くなかった八弥兄さんも余計に酒への依存
を強め、輝星は余計に口の聞かない子供となってゆく。そして国自身もここへ来て
大きく揺れ始める。
 僕には感じるんだ。僕達兄弟は国その者に個性を与えようとしているんだと感じ
るんだ。星々が数億もの個性を見出すように僕達三名の舵取りもまた三つの個性
を出してゆくように。星央兄さんはいろいろと働きすぎたんだよ。でないと僕は関係
ないで済まされなくなってきてるよ。
 <何を訳の辿れない事なんか言ってる>って。いつもの事だよ。僕はこうして変わら
ない暮らしをしてるんだけどね。けど、八弥兄さんが政治に口出し始めたらもう関係
なくない。八弥兄さんはいつも通り仕事を放り出すんだよ。
 長くなりすぎたので今回の日記はここまで。いや違うか。この場合は星央兄さんの
話はここまでって事なのかな。もういいや。次からは八弥兄さんの話に移るよ。
 星々を輝かせる世から無限に広がる逃げ道ヘの答えが待ってるみたいに。
                    もうすぐICは数字が変わるかも知れない時期かな』


 ICイマジナリーセンチュリー百年十二月百八日午前八時十分八秒。

 第三十八話 三兄弟物語 星々が輝く世で 完

 第三十九話 三兄弟物語 無限逃走の責務 に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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