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一兆年の夜 第三十八話 三兄弟物語 星々が輝く世で(七)

『何だか知らないけど母に勧められて僕は星央兄さんの家に住み込むようになっ
た。理由は銀河連合の襲来で美弥さんが死に、死を二度も目撃して心に傷を受け
た甥っ子の輝星、それに美智琉姉さんの心を癒す為だけじゃないみたいだよ。何で
も先輩仙者として心に傷を受けた輝星、それに今は赤ん坊同然の姪っ子美世を指
導させる事も目的みたい。
 正直僕は二名に教える事といっても遊びとか絵本を読ませる以外にあるかな。羽
子板遊びだって星央兄さんならわかる遊びだし、札遊びは仙者抜き以外は得意じゃ
ないからね。後は、思いつかない。とにかく寝転んだり、高い高いするくらいだね。
 住み込んだのは何も僕だけじゃなくツクモノカミも同様だった。稽古は辛いよ。でも
今までみたいに脱走が難しくなって困ってるよ。
                 星季に日記作成を阻まれながらも頑張る齢十七の僕だ』

 十二月六十六日午後九時二分一秒。
 場所は国家神武首都ボルティーニ中央地区中央官邸最高政務官室。
 館襲撃事件からおよそ一の月が経った。銀河連合の侵入経路ははっきりしており、大胆にも流れ星に紛れて侵入したとの調査結果が示された--調査結果自体は事件から一の週より後に中央官邸へ直接届いた。
 彼は事件に大変な衝撃を受ける事となった。
(こうして仕事を増やす事にしたのも心の傷を覆う為だ! 特に八弥なんかは雌だけじゃなくなった。とうとう酒にまで手を出して余計に迷惑をかけるようになった! どこまでも心だけは強くならない雄だ! けれども自分が八弥をどうこう言う資格があるというのか!
 現に自分はたった一名の息子である輝星の傷を埋める役目を七に押しつけた! 道徳的な理由という名目で! こんなのは八つ当たりだ! これで一体どこに家族を守れるというのだ!
 今日もヤケ仕事だな! えっと……そう言えばこの書類は?)
 星央の目に留まった書類--海洋藤原探索部による調査報告書--には驚くべき内容が記されていた!
『東藤原海洋を入念に探索した結果、珊瑚で埋め尽くされた島を発見。
 シャーキングら六名はすぐさま島を調査した。結果はそこには生命が生活した跡
を発見。肝心の生命は発見出来なかったが、墓と思わしき珊瑚の墓標を次々と発
見。ただ、掘り返すと神様に叱られる為、墓標に関する調査はここで終了。
 珊瑚島に関して判明した事実はこの島に住んでいた住者は我々生命と同等かも
しかするとそれ以上かも知れない知能を持つ。何しろ薄れているとはいえアマテラ
ス文字と思わしき文字を一体どこで覚えたのか。
 ひょっとするとここに海洋藤原一族が子供達に希望を託しながら遺書を記したの
かも知れない。今は憶測だけが一人泳ぎ中。後日調査報告書を提出する予定』
(はっきりしない。けれどもこれだけは明らかだ! 藤原マス太の血筋は絶えていないと! 彼等は新天地に旅立ったのかも知れない……絶対そうに違いない!
 ……恥ずかしいな。だけど自分の心に少しでも明かりは点いたかも知れないかな?)
 星央はまだまだ子供心を理解する探検精神がある事を知り、あの事件を払拭する方法を閃き出す!
 だがそれは同時に--
(難攻不落の大地に降り立つんだ! あっちが攻めてきたんならこちらも攻めないでどうする……とはいえ勝算が少なすぎる!
 気合いでは押し通せないのは目に見える……違う! 訴えないといけない! ここで自分があの地に降り立たないとこの先もあの地に立つ者は永遠に現われなくなる! そんなのは逃げと全く同じだ!
 だから、だから自分はあの地に立つ! 勝てるとか勝てないとかそんな理由じゃない! ここで立たなければ--)
 舞台は六十七日午後二時十八分二秒経った重要会議室内へと移る。
「--全生命は何年経っても銀河連合と分かり合えないのかもしれないんだぞ!」
 星央は約三の時かけてアリスティッポス進撃作戦の重要性を訴えた! 席に座る者の中には朝から酒を持ち込んでは飲んだくれて潰れそうになる八弥が居た。
「へへ、いいらえうか! こんおはかならうみいあのかたいをふっとあゆー!」
「退席しても構わないね! こんなに酔い潰れたらまともに評決出来ないね」
 齢四十にして六の月と八日目になるアリスト鴨族の老年にして社会保障長官白石カブ也は八弥を心配する。
「ほっとくのが優しさだ、白石殿。戦いになれば少しは心の傷を癒せるかもしれん。それにいざとなれば自分が八弥の盾となる!」
 は--八弥は酔いが回っても星央が宣言した意味をどこかで気付く!
「どうした? 少し酔いを覚ましてしまったか?」
 何でもない--星央に気付かれないように顔を背けた!

『僕はこの場には居ない。けれどもミス、いや美雌のお姉さんから聞いた内容を基
に僕なりの解釈をしたが、どう修正しても八弥兄さんが星央兄さんの意味深な言葉
を真面目に受け取る以外に解釈しようがないんだよ。
 いや、僕は気付いたんだよ。こんな事は気付いてはいけないのにどうして神々は
僕達兄弟にそんな運命を背負わせるんだ。ボク達はこの先もこれからも三名四脚
で進んできたんじゃなかったのか。
                            日記で八つ当たりするのは僕天同七』

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darkvernu

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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