FC2ブログ

一兆年の夜 第三十八話 三兄弟物語 星々が輝く世で(五)

『僕は助かったのか。それとも助けられたのか。どうして僕が出たらあいつらは逃げ
ていったのかがわからない。僕はそんな事を考えて二の年を迎えた。
 武は一向に上達しない。僕には武よりも本を読んでいる方がお似合いだ。
 そうだ。この際だから武の練習から逃げて本屋のある地区へ向かおう。
                         今年で十六に成る天同七が日記を記す。』

 九月二十八日午前二時十一分五十三秒。
 場所は西物部大陸プラトン地方国家神武首都ボルティーニ中央地区中央官邸。
 三階にある最高政務官室。部屋に入るとそこには歴代仙者及び最高官の肖像画が横並びに飾られる。
 肖像画よりやや下にある執務席に座るのは齢三十にして二の月と八日目になる神武人族にして国家神武象徴天同星央。
(あれから二の年が経つ。砂丘の戦いは結局解けない謎だ。何故七が来たら撤退したのか? 誰もが首を傾げる。
 様々な説が飛び交ってはいるがいちいち調べるのは面倒事。最高官は国の頂点らしく余計な事はあまり考えるものじゃない。自分はそうして進んできたのだからな)
 成人体型一とコンマ三に満たない巨漢でありながら更には獅子族のような剛胆な目つきと眉間に広がる十字傷が一層彼の威厳を強める。
(それにしても忙しい。もうすぐ美智琉は第三子を産もうって時に肝心の自分は政務に追われる毎日。とことん父親の資格がないぞ。これじゃあ星季のみならず輝星にも申しわけがつくまい! こんな所まで亡き父上に似てきたかもしれない。
 きっと十代半ばだった自分のように父に反抗するかも知れないぞ。こんな毎日を送り続けたら)
 後ろ向きな事を考えながらも今日中に全ての書類に目を通す勢いだ!
(どうやら雄略大陸では材料生産が軌道に乗り出そうとしているな。様々な発明家がここで生まれてきてるな。それだけじゃなく新たな理論である地動説が天動説に取って代わろうとしているのか。ここはさっぱり解らないな。やはりこうゆうのは専門家に任せるしかないな)
 右手が墨に染み込まれてもなおも許可及び却下の理由を書き記す星央。
 政務で忙しい星央を困らせるように齢二十八にして四の月と六日目になる武内人族の女性が耳に響く音で扉を開ける!
「静かにしろ! ここは一応--」
「大変です星央様! 七様がツクモノカミの稽古から逃亡してどこかへ眩ました模様です!」
 またか--両手に付けて立ち上がる星央!
「どこに行きましたの、七様は?」
「そんなの決まってる! 大きな本屋のある弐高市第二西地区だ!
 あいつは本を読むのが大好きだからな! まずはそこに行け!
 見つからないのであれば次に大きい本屋のある狭間町第三南地区に足を踏み出せ! いいな?」
 了解--名も無き医療班の女性は星央に言われた市町村へと足を踏み出す!
 七の脱走癖に困りながらも椅子に座って政務を続行する星央。
(七も大分八弥に似てきたな。者様に迷惑をかける部分といい。いや十代半ばなら当然の行為なのかもしれん。
 只、自分の場合は稽古から脱走した記憶がない以上、二名の気持ちがわからない。ずっと普通にこなしてきたからな。反抗的な時代もあったが、それでも包丁の稽古を怠らなかった次第だよ)
 星央は自分自身が思っている程に特別さを持たない事を改めて知る。彼の生涯は全てが働く事以外の楽しみが少なく、面白味に欠ける部分が強い。
(だからこそ余計に八弥と七が羨ましいと言える。あいつらには自分にはない--)
 またしても困らせるように齢十九にして三日目になるアリスト鴨族の白石カブ家が羽音を出しながら扉を開けて入ってゆく!
「三回叩いてから入れカブ家よ!」
「申し訳ないね。実はまたしても八弥様が市町村にいる十代終盤から三十代中盤にかけた人族の雌にちょっかい出している模様ね!」
 あの腰砕けエエ--星央は部屋全体を揺らす程の叫び声を上げた!
「ヒイイイね! 落ち着いて下さいね、最高官殿ね!」
「ふむ。それで今どこにいるんだ、八弥は?」
「それがね、見失いましたね」
 すぐに連れてこい--カブ家を怒鳴り散らす星央!
 カブ家は恐怖のあまり大量の羽を落として部屋から出て行った!
 ふう--カブ家が部屋にいないのを確認すると星央は溜息をついた。
(八弥の件は後でみっちり叱らないと!
 『いつまで結婚しないつもりなんだ。早く--』とな。
 さて、と。政務を続けるか……おや?)
 星央はある書類を見て興味を抱く。
(『海洋藤原一族捜索部』? 海洋藤原一族はおよそ五十二の年より前に起きた海底火山噴火で絶えたはずじゃないのか?
 なのにこの本部を立ち上げようと国家神武に頼む武内鮫族のシャーキングらはどうして生き残りが居ると断言する? 至急セネカ秋刀魚族の明石サン太郎を中心とした調査団を派遣しないといけない。
 えっと……東武内海にシャーキングは居るんだな。よし--)
 星央は書類の空白に詳細を記してそれを一の時に報告すべくやって来た官房長官ログホラーに・メデリエーコフに渡す。
(後は結果を待つだけ。果たして海洋藤原一族の生き残りは本当にいるのか?
 その間自分は今日中に全ての書類を済ませないと……こんだけ済ましても後千枚。明日に持ち越せば終わるに終わらんな)
 結局星央は残り六百五十二枚を明日に持ち越し、明日する分を増やす羽目となった……。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR