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一兆年の夜 第三十八話 三兄弟物語 星々が輝く世で(二)

 三月三十六日午後十一時七分十六秒。
 場所は首都ボルティーニ中央地区天同星央の館。二体の狛犬族の銅像が左右にある正門前。
 成人体型一とコンマ三に満たない巨漢の青年が帰宅。
「お帰りなさいませ旦那様」
 彼の帰りを待ち受けるのは齢十八にして九の月と二十八日目になるラテス人族の少女にして女中である叶美弥。八弥に密かな思いを寄せる者。
「ただいま美弥君。美智琉のお腹は元気か?」
「姉……いえ奥様の第二子は元気に育ってますわ。ですのでどうぞ鎧をお脱ぎ下さい」
 頼むぞ--星央は鎧を足下に置くと鉄靴を脱いで速い足取りになりながら妻である美智琉と第一子星季の眠る二階寝室へ向かう。
(包丁になっていこう自分は美智琉と星季、それに女中の美弥君に迷惑ばかりかける! 深夜になっても帰れない事は日常的。なおかつ愛を育む事も肌で触れあう事も段々少なくなってくる。父親の資格がないに等しい!
 だがそれでも--)
 ほんの少しでも父親の義務を果たさねば--そんな想いを抱きながら寝室に入る。
 すると--
「あらお帰りあなた」
 妊娠七の月になったばかりの赤子を腹に宿す妻--齢二十五にして一の月になったばかりのラテス人族の女性叶美智琉は齢三になったばかりの第一子星季を寝かし終えたばかりであった。
「ただいま美智琉。星季は大変活動的な娘で困るな!」
「あなたのせいよ。お母様の言いつけを難なく引き受けて只でさえ多忙な日々を更に多忙にしちゃったんだから星季もそれを真似して私をこんなにも困らせるんだもの」
「元気があっていいではないか。自分は成長してゆく娘の姿を見るのも楽しみなんだ。いつか自分達の大きさまで成長してくれたら父親として誇れるよ!」
「その頃まで長生きできることを願うわ」
「それも叶わないんだろうがな。自分はこう言っちゃ何だが働きすぎる質でな」
 普段は陽気な性格である美智琉ではあったが『働きすぎる』という言葉には真っ白な肌に似つかない顔色を浮かべる。
「……強がる美智琉でも隠し通せない部分はある。今は星季も寝ついてるんだから思う存分--」
 いいわ、いつも通り強がるから--嫁入りしたとはいえ叶家の第一子としての誇りなのか強がりを押し通す!
(全く美智琉ってのは。でもそこが自分と一致する部分なんだよな)
「あら? むきになって怒鳴りにいくと思ったけどいつも通りね」
「怒鳴っても美智琉には負ける。ならば怒鳴らずにそのままにする方がいいだろう」
「あなたも相当強がってるのね。まあいいわ。きっと産まれてくるこの子もそうゆう風に育つんだわ」
 かもな--星央は美智琉の側により、美智琉の首に巻き付くように右腕を回す。
「子作りは今度生まれてくる子が歩けるようになってからよ」
「わかってるよ、そんな事は。只自分は美智琉に慰めて欲しいんだ。あらゆる事全てから」
 星央は心の重荷から解放されたがっていた--その手伝いを愛する妻に乞う程にまで。
 星嘔吐美智琉は同じ寝床で抱きつくように眠った--お腹の子供への重荷を出来る限り抑えるように。
(感じるよ美智琉。お腹の子はきっと仙者だ。腹の中から伝わる音に便乗するようなしゃっくり……これは星季にはないしゃっくりだ。どうやらこの先の国家神武は安泰だ。自分の子が将来象徴になるんだからこれほど嬉しい事はないさ!
 だから……)

 三十七日午前二時八分六秒。
 星央の館裏門に近付く影有り。それは雄略包丁を右腰に掛けて成人体型六十七を九秒台ギリギリで届く速さで走りながら!
 裏門を飛び越えると急いで星央夫妻にいる寝室の窓によじ登ろうとしたが--
「あなたは八弥お兄! 何やってるの?」
 女中の美弥に見つかる八弥は成人体型一コンマ二以上もある巨体で近付く。
「美弥……また成長したな」
 腰を砕けないでよ--言葉と共に左頬を右手甲でひっぱたく美弥。
「そんなことはいいとして兄貴に伝えなくちゃいけないことが発生したんだ!」
「何なの、その『伝えなくてはいけないこと』って?」
 アリスティッポスの軍勢が真っ直ぐこっちに向かってくるんだ--美弥の両肩を掴みながら伝えたい事を言う八弥。
「アリスティッポス……誰経由なのお兄?」
「レインズ・キングレイからだ! ちゃんと伝えろよ美弥!」
 じゃあ戦場に戻る--そう言って八弥は来た道を真っ直ぐ戻ってゆく!
「出来ればお兄に私の気持ちを伝えたかったよ」

 午前七時十分十秒。
 成人体型一とコンマ四もある木刀で素振りしながら朝練をする星央に届いたのは五の時より前に八弥が届けた伝言であった。
「何! アリスティッポスの銀河連合がこちらに向かっているだと!」
「御免なさい旦那様! お兄……いえ八弥様からの情報を今になって報告して申しわけ--」
「謝らんでいい! それで誰経由だった?」
「えっとレインズ・キングレイだったわ。アリスト人族の」
 レインズか--星央はレインズ経由なら信頼足り得ると判断。
「今日の素振りはここまでだ。美弥君。木刀を片付けてくれないか?」
 わかりました--美弥は綺麗に置かれた木刀を両手で拾い上げる。
(また美智琉と星季には迷惑をかけるな。どこまでも父親の資格がないぞ、自分は。
 けれども仲間を見捨てるなんて行動を自分は出来ない! 自分は指揮官なんだ! 最高官にして象徴T琉天同星央の名が泣いては神々に申しわけがつくまい!
 よってこのまま迷惑をかけるぞ、みんな!)
 朝食を済ませた星央は愛する妻の唇に自分の唇を丁寧に触れ、愛する娘星季には思う存分抱っこをした後、戦場へと足を踏み出す!
「じゃあ行ってくるよ美智琉!」
「行ってらっしゃいあなた」
「いってらしゃあ!」

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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