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一兆年の夜 第三十八話 三兄弟物語 星々が輝く世で

『国家神武。そこは僕の生まれ故郷でもあり、全生命の希望が集まる場所。希望が
集まる由縁は僕自身の言葉では説明出来ない。多分指導者と同一いやそれ以上
の地位にある象徴が希望を与えてるんだろうなあとしか言えない。母や星央兄さん
に聞いてみない事にはわからない疑問だよ。まあ聞こうとする機会があっても忘れ
ているから無理だろうけど。そんな事よりも僕が今注目している事があるんだ。何と
星央兄さんは国が支配する地域を今知られている大陸、地方全てに広げるんらし
い。無茶苦茶だよ。僕は運動自体今一だけど統治の難しさならわかる気がするん
だ。統治ってのは一つの集落を一名で支配するには楽だけどその集落が広くなり
或は村にまで大きくなったりすると一名では労働時間の単位が大きくなって身体へ
の重荷が大変になるんだ。だから者手または者足を増やして一単位当たりの労働
時間を短縮しなくちゃいけなくなるんだよ。まさか星央兄さんはそんな事まで考えて
るのかな。気合いで何とかしろといっても無理な事は世の中たくさんあるんだし、ど
うするんだろうか。今こうして書いている僕は今年で十四にして九の月になったばか
り。この時期は母の話では意地を張りたがるそうだって』

 ICイマジナリーセンチュリー百年三月三十四日午前十一時三十二分四十三秒。

 場所は国家神武首都ボルティーニ中央地区中央官邸。神武聖堂から北へ成人体
型およそ六百八十の所にある白く塗られた建物。
 その中の三階にある中央会議室。立方体にして成人体型およそ三千。出入口は
建物の南口に向かう所に三つずつ均等に配置。机は円卓と成り、中でも赤い丸模
様の旗より前にある席は特別だ。
 座れるのは国家神武指導者--最高政務官天同星央のみ。齢二十八にして二の
月と八日目になる神武族の長を継ぐ者。
 彼は獅子族のような剛胆な目つきと眉間に広がる十字傷で座る者全てを威圧。
「--よって国家神武が受け持つ領地を武内大陸より先の雄略大陸にまで広げる。
 異論がある者は言いたまえ!」
 異論を挟む者は二名。齢二十五にして十一の月と二十五日目になる若き防衛副
官にして星央の弟である八弥と齢三十一にして八日目になるラテス蜻蛉族の中年
にして真鍋傭兵団から派遣された傭兵。
「正岡シ数ならともかくまた八弥か!」
「『また』は余計だろ兄貴! あそこは雄略包丁製作場所だろ。あんな所に生命を
送ったら楽に包丁を製作出来ないだろうが!」
「銀河連合に食われたら更に製作出来ないだろ? だったら少しくらい生命送っても
問題はあるまい」
 練度が下がっても知らんぞ--そう呟いて顔を背ける八弥。
「シ数殿。どのように反論なさるのです?」
「何て言うかい、少し広げすぎではないかと思ってねい。広げれば広げる程一単位
当たりの労働量を増やす事になりませんかい?」
「一地域への軍者の数を減らせば減らす程残業代が増えて社会保障が増す事を心
配なさる……と?
 いえ、それだけじゃあないでしょう、シ数殿」
「私に言わせないで下さい。私はあくまで客ですのでい」
 でも言わないとワテにもわからないね--齢三十七にして五の月と一日目になる
アリスト鴨族の中年にして社会保障長官白石カブ也がシ数に促す。
「戦いは質ではなく量が全てですい。広げれば広げる程一地域への軍者が減って
銀河連合の大群が来たらあっという間に食われる事になりますい。
 その時どう責任をとるおつもりでしょうい?」
 シ数に指摘されながらも星央の表情は余裕だ--何かしらの対策を考えているか
のように。
「これ以上の志願呼びかけも各大陸地方、島では一杯一杯。その事実は我が父
六影の頃からわかっていた。
 なればこそ自分は雄略大陸を支配下に置こうと決めていたんだよ!」
「言ってる意味を理解出来かねますい。一体何をするお考えなのですかい?」
「それはな……作るんだよ」
 作る--その言葉に齢四十八にして二十三日目になるエウク馬族の老年にして
交通長官真島ギャラ蔵以外の者は首(触角)を傾げる。
「まさあか設備投資だなあ、星央様あ」
「そうだ。他の大陸や地域では要塞を建てたり武器を作ったりする技術は易くない。
 だったらそれを大々的に行える雄略大陸で円滑に高い技術を得られれば軍者
一名当たりの重荷も軽くなろう。
 その為に自分は雄略大陸にまで広げるんだ! まだ反論されるならばもう応えら
れはしないが、どうだろう?」
 それでも反論する者は必ず居る。
「何年かかるんだ? 全ての地域を要塞化するのに?」
「またお前か。残念ながらもう応えられはしない。これから採決を始めるんだ。
 投票は顔下に置かれてある白い紙を中央に寄せる事で賛成を表せる。反対なら
自分の方に寄せるんだ」
 議論は靄のかかる状態で終了。これから投票が始まる。
 結果は--
「反対票は四名か。今ここにいる者は二十名である以上自分が出した案は規定数
同意。よって領地拡大案はこれにて成立!
 朝の重要会議はこれにて終了! 閣僚の皆様及び真鍋傭兵団からはるばる来て
下さった二名もわざわざ席に着かれてどうも有り難う御座います!」
 反対票の内、一名は星央の弟八弥の物だった。星央は八弥との仲が芳しくない
模様。
「八弥。わかっていると思うが自分の足だけは引っ張るな! お前の勝手さは全生
命の身を危険に晒しかねない事だってあるんだからな!」
 言ってろ--八弥は星央に満足ゆかない態度をとりながら脇まで届く長い髪を
揺らしながら左出入口から出て行く。
(全く八弥と来たらどこまでも勝手だな。戦闘ではあいつより優れているのは神武鬼
族のカゲヤマノツクモノカミ以外知らない。それくらい強い。仙者ではないのにな。
 ただ、あいつの性格が問題だ。遅刻・欠勤は日常茶飯事。例え戦闘に参加しても
命令を無視して陣地に突っ込んでゆくのは恒例行事だ。眉間の傷はその内の一つ。
どこの戦いだったかはもう忘れてしまったが。だからこそ自分はあいつが心配だ。
 いつかそれが原因で死地に赴くのではないかと心配するんだ。だが、自分が目を
光らせている内はそうさせん! それは七にも言える事だ!)
 最後に残った星央は十字傷を右人差し指で触りながら自分自身の未来がどうなる
かを予見。それが終わると中央出入口から出て行く。

『二名の兄さん。兄さん達は互いに性格が異なる。星央兄さんは真面目で勤勉で無
理を押し通す性格。僕にとっては目指すべき生格者。一方の八弥兄さんは雌垂らし
で明日を考えないどうしようもない方。でも運動神経は非常に良く、力仕事では頼り
になるんだな。肝心の僕は星央兄さんみたいな誰にでも尊敬される部分もなければ
八弥兄さんのように社交的でなおかつ体操が出来る訳でもない。ただ積み木や蹴
鞠をいじくるしか脳がない。そんな兄さん達を前にしたら僕自身の無力さを痛感され
るよ。少しでもいいから分け与えてくれたら苦労しないのに』

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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