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一兆年の夜 第三十八話 三兄弟物語 星々が輝く世で(零)

『僕が生まれた日。それは父が死んだ日と重なる。僕は生まれた頃から父の素性
がわからない。覚えているのは父の名前が天同六影。神武人族の長にして国家神
武の象徴である事。父の享年は確か母から聞いたことなんだけど三十七だったよ
うな。父が死んでいる事に悲しみなんてない。覚えていないものを悲しむなんて僕
には出来ない。けれども忍挟にはざ大伯母様が死んだ時は僕にはある種の悲しみを感じ
たよ。生命はいずれ死ぬという幼い僕にはどうすればいいかわからない悲しみが。
あれだけ長生きした大伯母様の死は僕に死ぬ事とは何かを伝えた。僕もいずれそ
うなるのかな。星央ほしお兄さんのように覚悟もない僕に死を覚悟出来るかな。八弥やつみ兄さんのように何でもそつなくこなせる訳でもない僕にこれから先を生きる術はあ
るのかな。僕には二名の兄さんと異なり何かしら特別な扱いを受けている。末っ子
だからなのか。僕にはわからない。今こうして書いている時は僕の齢は十。月と日
は後で母から聞いてみるよ』

 ICイマジナリーセンチュリー九十九年三月三十四日午前九時四十八分五十七秒。

 場所は国家神武首都ボルティーニ中央地区神武聖堂天同六影の間。
 参加を初めとした新国家神武の象徴及び指導者の肖像画が並ぶ。肖像画を描い
た者は時代ごとに異なるものの唯一有名な者は六影を描いたのは叶奈々。現在の
天同奈々その者。その肖像画の前に齢四十二にして十の月と六日目になる旧ラテ
ス人族の老婆が肖像画に勝るとも劣らない威風堂々とした面構えで三名の雄を
圧倒する。
「--以上で今日から星央。あなたが国家神武の象徴を務めなさい」
 後ろに括った腰まで伸びる茶髪をした老婆より正面から中央に座る齢二十四にし
て二の月と八日目になる神武人族の青年星央と呼ばれる者は言葉に詰まる。
「どうしたの星央? 指導者と象徴の両方を継ぐ事に反対でありますの?」
「い、いえそうではありません! 自分はいくら説明を聞いても納得ゆかないので
御座います!
 母上! どうして象徴は七ではないのですか!」
「七はまだ幼い。それにこの子には国の象徴というのは重荷でしかないわ。父を見
る事もなく生を受けたこの子にはもっと広い視野で育って欲しいと私は願うんです
もの」
 『願うんですもの』って、オイオイ--齢二十一にして十一の月と二十八日目になる
神武人族の青年は星央よりやや後ろ右に右肘付けて寝転がりながら呟く。
「八弥に呆れさせるのはわかってるわ。私がどれほどあなた達に我儘を言い続けた
かは当の私でもわからない。それでも私は自らの存在を思って七ではなく第一子で
しっかり者の星央に頼むの。星央は大変努力をして国家神武の政務を休む事なく
こなしていると聞く訳ですので」
「勝手だな。お袋のごり押しに俺は賛成出来ない。じゃあ兄貴がいなかったらどう
すんだ? しっかり者でない俺に頼むんか、そんな面倒な役を?」
 そうよ--脇まで髪を伸す青年八弥の質問に対して奈々は素早く返答。
「やっぱり反対だ! 俺は兄貴を過労死させるような真似をさせないぞ!」
「黙れ八弥! お前に自分の仕事をとやかく言う資格はないぞ!」
 心配しているってのに--豹族の鋭い目をした八弥は星央の胸ぐらを掴みに立ち上がる!
「止めなさい八弥! 七がびっくりしたらどうするのですか!」
「びっくり? びっくりも何も--」
 七は熟睡中です母上--獅子族の頑強な目をした星央はやや後ろ左に座りなが
ら目を閉じる齢十にして九の月になったばかりの神武人族の少年七を左指さす。
「自分の調子だけは崩さない子ね、七は。それならばこの子もあまり重荷を背負わ
なくて済みますね。
 では星央。象徴を引き受けますの? 出来ないのでしたら八弥にでも--」
「俺がいつ象徴になりたいと言っ--」
「いいでしょう。八弥にやらせるくらいなら自分が引き受けましょう。それに大伯母様
亡き後いつまでも空席となっている象徴の椅子にはいずれ誰かが座らねばいけなく
なる。
 だったらその椅子を自分が座ろう」
 青い髪を逆立てる青年星央は母である天同奈々の期待に応える形で象徴を引き
受ける--立ち上がり、右手を広げて左胸に当てながら!
「二対一かよ! でもな、お袋! 二対一では決まった事にならないぞ!
 この事を後ほど全閣僚を呼んで三分の二以上の合意だったっけ?
 それくらいないと決定されないぞ!」
「わかってますわ八弥。星央、そろそろ行きましょう」
「ええ。ところで七は起こしましょうか?」
 寝室に運びなさい--奈々はそう答えた。
(合意は困難を極めるものだと自分では思っていたが思いの外すんなりと進んだ。
そして採決の結果は三分の二以上の合意が成立し、ここに自分天同星央は指導者
兼象徴となった。
 自分はこれから全生命を正しく導かなくてはならない! 自分には母上のように予
報も出来ない。八弥のような戦闘の才もない。かといって奈々のように長く生きられ
ない。ならば答えは決まる! 自分は普段と変わらない振る舞いをすれば良いだけ
の話。
 それが天同星央の生きる道……)
 それから四の年が過ぎた……。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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