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一兆年の夜 第三十七話 鼬ごっこの世(終)

『あれから三の年になるのか? 都合良く生き残ったコアックラウが間一髪の所で俺を引き上げていなかったらこうして包丁を造ってない。銀河連合との戦いで生き残ったの
はいいが右後ろ足を切断してしまうとは。一時期は五体の一部がなくなって後ろ向き
になったさ。人生を共にする物を取り除かれたなんて耐えられると思うか。けれどもコ
アックラウや後に結婚するイタネの励ましや支えのお陰で完全とはいえなくともこうし
て鍛冶仕事をやれるんだから感謝しても仕切れない。
 それにしても俺は妙な体験をしたな。あれは何だった。時が経てば断つ程夢の世界
の話だと思ってな。どうにも思い出せなくなってきている。恐らく俺の脳が防衛反応を
示してそうしているんじゃないか。考えすぎだな。もはや信じられない経験だ。
 そんな事よりも右後ろ足を切断以来俺はどうやって生計を立てているか知りたいか。
コアックラウやイタネによる稼ぎで賄いはしているが俺だって稼いでいるさ。物斬り包
丁でな。
 と言っても戦場で使う為の物じゃない。俺が目指す飾りだけの物斬り包丁さ。戦いが
好きじゃないなら果物包丁や野菜包丁を造ればいいとお考えの者もいるだろうが俺は
初めから飾りだけの物斬り包丁製作の為にこれからの人生を全うすると決めてる。
 俺は軍者時代に多くの銀河連合を斬り、自衛の為とはいえその後の人生においても
銀河連合を斬る運命から逃れる事は叶わない。三の年より前に右後ろ足を切断する
まで俺は穢れを浴び続けた。俺はそんな穢れを祓う為に包丁を造り続ける事にした
のだ。自らの罪を償う為に。
 話が長すぎるな。こんな事は滅多に有り得ないのに。どうやら包丁鍛冶が上手くなる
のに比例して日記まで長々と書けるようになったかな。長々--』
(いけないっち! 炉の温度上がりすぎてるかも知れんっち!)
 彼の名前はイタラス・ジャレモンド。齢三十三になったばかりのルケラオス鼬族の中年。かつては国家神武の軍者であり、軍者内では『歩く物斬り包丁』と謳われる程にまで類い稀なる包丁捌きの持ち主。七の年より前に穢れを祓う為に軍者を引退。その後高名な物斬り包丁鍛冶の物部わに兵衛に弟子入り。わに兵衛の死後は独立して現在の廃れた小屋で包丁製作に励む。独立して初めて完成させた物斬り包丁の銘を刻んだ矢先に銀河連合が襲撃。それにより彼は右後ろ足を切断する事になった。だが、これが切っ掛けとなり当時高名な医者だったエピクロ鼬族のイタネ・ポリトネンコと運命の出会いを果たし、一の年より後に結婚。子供こそまだいないがいつか作る予定である。
 話は変わってイタラスの作り上げた飾りだけの物斬り包丁は彼の死後百の年が経過して骨董品収集家の間で高額な値が付くようになる。それは鼬ごっこしか有り得ない世の中で唯一彼が示した飾りだけの物斬り包丁がようやく日の目を見た瞬間である事を忘れてはならない……。
「人生は本者に都合良く出来ていないように見えてっち、実は全体としては上手く出来てるんだっち!」



 ICイマジナリーセンチュリー九十九年十二月十二日午前八時二十四分三十七秒。

 第三十七話 鼬ごっこの世 完

 第三十八話 三兄弟物語 星々が輝く世で に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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