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一兆年の夜 第三十七話 鼬ごっこの世(六)

 三月三十六日午前六時二分十九秒。
『物斬り包丁は完成して一日目が過ぎる。俺はこれから次の物斬り包丁を造らなけれ
ばならない。けれども材料が足りない。いつもの事だからいいが。えっと--』
 イタラスは銘が掘られた物斬り包丁を見て感慨に耽っていた。
(六の日は経ったが結局銀河連合はもう来ないのかっち? その間に俺はコアックラウに頼んで物斬り包丁の第四段階を進めて昨日に至ったっち。それにしても美しいっち。
 けれども近くに住む物部わに八に言わせれば『こんな物は飾りにも成らん』って言われたっち。あいつは師匠の遠縁だけあって怒りが湧く鰐だからなっち。ただしっち、あいつの五感と口前は信頼と尊敬に値するっち。悔しいが反論したければあいつよりも技術が良くないといけないっち。
 さてっち、自画自賛ながら美しいっち。このまま舐めずり回し……この足音はコアックラウだなっち)
 イタラスが振り返ると確かに子守熊族とは思えない巨漢が足音を小屋中に響かせて入ってきた。
「おはようっこイタラス。生きてるっこかー?」
 おはようっち--挨拶だけするイタラス。
「今日のっこ朝刊に『新しい象徴に星央様決まる』って表一面にっあ載ってたぞ!」
「何っち? もう決まったかっち! しかも大方の予想を覆して星央様なんてっち!」
「そうだよなっこ。七様っこじゃないのはどうにも奥方様っあである奈々様のご意向らしいってほんのっこちょっとの部分に載ってたが多分ッコ真実でしょ」
「仮にも奥方様のご意向ならどうして七様を避けるのかっち? あの方の呼吸は紛れもなく仙者のそれなのにっち」
「そこらっこの事情は叶家っあ辺りに聞いてみたら?
 そんなことっこよりも今材料足りなくてっあ困ってるだろ?」
 見透かされてたじろぐイタラス。
「たたらに必要な物を一緒に探してくれんのかっち?」
「そのつもりっこだよ。何たって……んっこ?」
 どうやらお前も気付いたかっち--イタラスは先端の折れた物部包丁を抜いて構える!
 そんなっこ状態でも戦う気か--コアックラウは子守熊族に伝わる武術子守熊道の構えをとる。
「数は……十体だとっち! この包丁で綺麗に捌けるかっち!」
「『捌く』ってっこどんだけ足がいいんだよ! 無理っこだったら他八体は我が何とか--」
「お前に十体を相手に何とか出来る足前があるとは思えないがっち」
「知らないっこのか? 我はっこイタラス程ではないがこう見えて真鍋傭兵団っあから度々引き抜き要請を受ける程強いぞ! 足手っこまといにならんぞ!」
 知らなかったっち--さも興味なしげに呟くとイタラスはそのまま出入口から小屋の外に進む!
「辞めたっこ期間が何だっていうさああ!」
 小屋の外に出て半の分もしないうちに三体の銀河連合が上中下頭上左側面足下より奇襲--イタラスは前方に飛ぶ事で回避!
 ところが死角より一体の銀河連合がイタラスを狙撃--幸いにも包丁鍔に当たる事で軌道が逸れ、心臓への直撃は免れた!
(不覚っち! まさか物自身に助けられるとは俺も鈍ったっち!
 とにかく……二度も狙撃を受けるかっち!)
 四身一体の攻撃を類い稀なる反射神経で回避し続けるイタラス--物部包丁を身体の一部にしながら!
(コアックラウは六体も相手をしているのかっち! 助けたいのも山々だが俺は俺で四体に防戦するのがやっとっち!
 別に四体が俺より強いからじゃないっち。ただっち、包丁を着る瞬間を見定める為に俺は……ノワッツっち!
 中々その瞬間は訪れないっち!)
 イタラスは十の分もの間、四身一体の攻撃を躱し続ける。そして、その瞬間が来た--遠くから狙撃する銀河連合がほんの二十の秒くらい狙撃を遅らせた!
 そこをイタラスは見逃さなかった--その間に回り込むように突撃する鷲型の口が巨大になった瞬間を狙ってイタラスは口元から尻尾まで両断!
 まずは一体っち--始めて口にするイタラスだが、物部包丁は先端が折れているにも拘わらず血も付着せず、刃毀れ一つ無い!
 鷲型が倒された後に狙撃を受ける--がイタラスは余裕で回避しつつ人型を頂点から股間まで両断した!
(刃毀れは……ないっち! けれども--)
 地中にいる蚯蚓型は突く事で絶命させた!
(あと一回だっち! 物部包丁が銀河連合を性格に斬れるのはっち!)
 イタラスは狙撃する銀河連合を探しに小前森の奥へと足を踏み出す!

 午前十時九分六秒。
 磁気嵐の激しい場所にイタラスは進む。
(よりにも寄ってこんな所に逃げ込むとはっち。気分が優れないっち。一刻も早く……ウオっち!)
 四方七方より物部刃のようなものによる狙撃を受ける--イタラスは持ち前の反射神経で全て回避!
 けれども身体はふらつく。
(場所は全てわかるっち! しかし、奴等は必ず逃げてまたここに誘導して来るっち!
 俺は確かに強いっち! でもこれは全生命体の共通認識だがっち、俺達は信じ込みやすい故に銀河連合にまんまとやられてゆくんだっち! この状況になったのも容易に狙撃した銀河連合を……危ないっち!
 くそっち! 今にも吐きそうな気分だっち!)
 イタラスは久方ぶりに軍者時代の過酷な状況を思い出しつつあった……。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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