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一兆年の夜 第三十七話 鼬ごっこの世(三)

 三月二十五日午前十一時五十九分一秒。
『玉鋼を適度な大きさに削った後、床を作るという面倒な作業の後、梃子棒に先程選
別した玉鋼を積んでそれから湧かした後、コチンカッチンコチンカッチンとやった。音を
表現したけどいいかな、日記で。そんでちょうど良い状態に仕上がったら延べ棒状の
形にして適度な大きさに切ったら第一段階は終了っと。
 後は第二段階に入るんだけど、何か忘れてるような』
(日記に書いたけどっち、何だろうっち? まあいいやっち、俺はもうねむ、うい、ち)
 イタラスが目覚めるのは第二段階に必要分の卸済みの鉄を用意するのを思い出す頃だった--それは同時にコアックラウが籠一杯の必要分の卸鉄を持ってきた頃でもあった。

 三月二十六日午前七時五十四分一秒。
『コアックラウは昔から頼りになると実感が湧くのはいつ頃だろうか?
 というのも第二段階までに必要な鉄を用意しなかった俺がいけかったな。いくら包丁
捌きが上手くても作る作業が行き当たりばたりではどうしようもない。これじゃあじじい
が墓の下から出てくるぞ、怒鳴り散らしにな。そんな意味ではあいつは頼れる雄だ。あ
いつがいないと俺は--』
(書く事が思いつかないっち。腹が減ってる証拠だっち。そろそろ食べるかっち、コアックラウが用意してくれたおにぎりをっち)
 イタラスは塩かけおにぎりの四分の一を一飲み三十回以上噛んで胃の中に入れた。朝食を済ませたら第二段階に入る。まずは床を作る。それからコアックラウが持ってきた鉄を積んだら沸かし始める。湧かす作業中にコアックラウが現われる。
「また来たのかっち。軍者時代にしてもそうだけどよっぽど暇なのかっち?」
「堅いっここと言うなよイタラス。我はっこお前と仲良くしたくてこうしてっあ軍者を辞めて今は亡き師匠のっら下で包丁鍛冶にッコなったんだぜ!」
「男色家の気はないぞっち、俺はっち」
「男色家っこ呼ばわりするな、気味がっこ良いもんじゃないっての!」
 それ以降は作業に集中すべく口を閉じたイタラス。
「ったくっこ当時の同僚間ではこれほどっあまで仲良くできない雄もっら珍しくないな」
 作業は十五の時以上かかった。月は一層輝きを見せる夜の時間--コアックラウは日が暮れる前に家路に就いた後だった。
『芯鉄と綺麗な鉄が完成するとすぐにコッカンカッコンズッチントッカンとまただれる作業
をしなくてはいけない。それからちょうど良い仕上がりになったら今度は両方の大きさ
を合わせるように切らなくてはどうしようもない。斬りすぎればまたたたら吹きからやり
直さなくてはいけないからな。こんなのどう考えってお金にならないって実感するよ。
 けれども不思議だな。作っている内に損得なんてものよりも大事な何かを求める気分
は。ジジイもこの感覚が堪らなくて生涯作り続けたんだと今では思えてきたよ。これが
物作りの極意なのか。未熟な俺がこんな事言ったラ師匠級それに俺よりちょっと出来
る奴等から文句言われるな。
 俺ながら随分長い文章が出来たな。この調子で--』
 イタラスは背後に気配を感じる--銀河連合と思われる死を呼ぶ気配を!
 日記の側に置いている物部包丁を鞘から抜く!
(包丁はいつだって持参しているがっち、どこだ銀河連合っち!
 ……逃げられたかっち。俺も足が落ちたなっち。さっきまで居た銀河連合をみすみす逃すなんてっち!)
 イタラスは包丁を鞘に戻した。そして四本足ながらに見事な正座を構えながら両眼を閉じた。
(今度もまた眠れそうにないなっち。銀河連合は油を断つべき相手でない以上はっち!)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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