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一兆年の夜 第三十六話 弥勒菩薩を待ち侘びて(九)

 三月三十日午後八時三分十二秒。
 場所は波多八代地方高向川。
 四名は川内集落を目指していた。理由はミスティーが行きたいから。只それだけの為に針路を川内集落に設定した。
 月が隠れて雲が十文字の痣を浮き出す夜中。コケ真は縄のかけてあった木を見て不思議そうに感じた。
「あの縄はいつ頃からかけてたんっさ?」
「さあ? つい最近ジャア……あれ?」
 マンマミーは縄が古そうに見えた。気のせいか近くに寄った。
「これって、十の年ヨリ前カラかけてあったんジャないですか?」
「言われてみればこの縄はかなり古いわ。触ってみるとまるで最初からここに巻かれてあったみたい……あら?
 この縄、引き千切られてるけど。しかも歯形からして鬼族の者かしら?」
「何しとるのじょお。さっさと進まないと雨が降るじゅう」
 コブ吉は木を無視して先を進む--三名は早足で進むコブ吉に追いつく為に走り出す。
「教官殿はせっかちすぎるっさぞ!」
 二名よりも出だしが遅れたコケ真は川内集落到着後、早々に説教を受けた。

 三月三十一日午前十一時零分十九秒。
 場所は川内集落中央地区酋長邸二階娯楽室。
 コブ吉とミスティーは酋長の齢四十二にして六の月と二十九日目になる武内猿族のゴーリラーマと彼の右腕である齢三十九にして一の月と二十三日目になる武内山羊族のエリフェインと談話した。
「そりゃあそうじゃあ。親は息子に継がせたがるものじょお。全くそれだから当時のゴーリラーマ殿も子供と思われるのじょお」
「死んでからこの歳になるまっで私も父の思う事は理解出来なかった次第だっよ。あの時っも若すぎったな」
「気にしないで下さいうえ。自分もかつては若造でありましたうえ」
「思い出話をするとどうしても私だけ置いてけぼりを受けるんだから」
 ミスティーは両眼を閉じて両手を対称的に広げながら首をやや下にしながら振り子のように左右三回揺らす。
「若い頃は良かったと感じるものじょお。まだまだお前さんには可能性が溢れてるって悔しがってるのじょお。そんな事よりもお前さんに聞きたい事があじゅう」
 何--ミスティーはコブ吉を見て鼻まで伸びる複数の前髪が揺れる。
「ここにどんな思い出があるか教えて欲しいじい」
 それを聞かれたミスティーは--そうね、思い出と言えば--と十一年前に自分を救った医者の話を始めた。

 午後零時十八分二十四秒。
 場所は川内集落東地区。川内プリの栽培が盛んな地区。
 十一の年より前は銀河連合によって生産不能な状況に追い込まれた。その後、全ての地区が一体となって川内プリの栽培を一からやり直す。その努力が実ったのが二の年より前だった。全盛期程の美味しい川内プリは栽培出来ないものの少しずつ前進する地区のはずが……。
「わね、私の丹精込めた川内プリを何て事ねエエエ!」
 武内鴨族のカモッテルは無謀にも銀河連合に突撃して--
 ウワラバネ--八つ裂きにされた!
「あわわわ、おらは見てはいけないモノを見てっすまった!」
「コケ真おじさん。まさかアノ指揮官型ガカメレオさんヲ死なせた銀河連合?」
 は、はい--首を縦にも振った。
「強そうだよ! 逃げたいよ! でも怒りガ専攻している以上ボクハ無謀ニモあいつト戦ってやるさ!」
 だったらそのまま向かうなっさ--その言葉よりも先にマンマミーは指揮官型に突撃!
「は、早く教官殿や他地区のみんなを呼ばっさ!」
 コケ真はコブ吉達の居る中央地区へ向けて走り出す!

 午後零時三十二分十九秒。
 場所は中央地区酋長邸二階娯楽室。
「--というわけよ。今でも私はスネッガーさんを尊敬してるわ」
 ミスティーは不思議な事に涙を流していた--その涙は感動ではなくどこか悲しげなものだった。
「成る程じゃあ。だからミスティーはここへ行きたがっているのじょお。ん?
 多分筋が外れると思うがここへ行けば探している何かを--」
 コブ吉が予想した事を言おうとしたら一階から扉を強引に開ける音がした!
 何語とっか--ゴーリラーマが一階まで響く叫び声を上げると物音は近付く!
 そして--
「大変でだイー! 南地区に銀河連合がやってきーイたよ!」
 齢三十八にして五の月と七日目になる武内羊族の老婆が息を荒らしながら伝えた!
「無理すんなうえ! もう老年似成った身なんだぜえい」
「南地区と言えば酋長さん! 銀河連合が--」
 大変だっし--今度は家の外から甲高い声が二階まで響き渡る!
 エリフェインが窓の外を見るとそこにはコケ真が羽を散らしながら慌てた様子だ。
「蘇我コケ真でえい! 何を伝えに来たうえ? 簡潔に言いたまえい!」
「西地区に銀河連合の親玉が来やしった!」
 コブ吉は親玉が何なのかを想像出来ない--なので窓の方に駆け寄った!
「親玉とは何じゃあ!」
「指揮官型でっさ!」
 部屋にいる全員が指揮官型が現われた事に戦慄が走った!
『一応老婆シーピーの報告から説明しよう。南地区に現われた銀河連合鬼型は銀河
連合だけが埋葬される墓に無断で入ったのじゃ。止めようと南地区住民六名が鬼型
に挑むもあえなく食われてしもうた。近くを通りかかったシーピーは急いでその場から
離れて酋長邸に報告した訳じゃ。
 その後にコケ真がやって来たのじゃ。あやつによると指揮官型は西地区に入ると
すぐに栽培中の川内プリを食い荒らしたのみならず主のカモッテルを八つ裂きにした。
現場を見たコケ真とマンマミーの二名はそれぞれの行動を取った。コケ真は救援を呼
びに酋長邸に。一方のマンマミーはあろう事かカメレオの敵討ちをするべく単身挑んだ
のじゃ。あの子についてはどうなったか後で書き記すつもりじゃ。
 仇討ちと言えばマンマミーだけじゃないのう。ミスティーもそうじゃ。南地区に現われた
鬼型は命の恩者の仇ではないかと勘繰り、あやつは感情のままに南地区に向かって
いったのじゃ。恩者はこんな事を望んじゃいないのにのう。それが若い者が出来る無謀
な挑戦じゃ。
 それでわしとゴーリラーマ、それにエリフェインとコケ真にシーピーはどうするか。そう
じゃなあ。シーピーは銀河連合から住民を守るべく安全な所への誘導を任された。そ
んでゴーリラーマは酋長らしく家から一歩も出ず何もしない仕事をするのじゃ。これは
一見すれば怠けているように見えるが意外と中々出来ない仕事なのじゃ。エリフェイン
の方は酋長と異なり、ありとあらゆる指示を出してゆくのじゃ。シーピーの仕事もわしら
二名の仕事も実はエリフェインによる指示の賜物じゃ。残ったのはわしとコケ真じゃが、
コケ真はミスティーを守る雄になって貰おうと南地区に行かせたのう。別に妻を変える
為じゃないぞ。ミスティーに恩者の石とは何たるかを伝えればそれで良いのじゃ。残っ
たわしはマンマミーに加勢すべく西地区に向かった。
 わしが到着した頃には大変な事になっとるのう。マンマミーが手も足も尻尾も出ずに
一方的にやられているとはのう。
                         旅をして十八日目の続きが気になる昼頃じゃ』

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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