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一兆年の夜 第三十六話 弥勒菩薩を待ち侘びて(六)

 三月二十五日午前六時二分一秒。
 場所は武内大陸波多八代地方巨勢山標高成人体型千くらい。波多八代地方は広範囲にわたっており、各大陸で最も面積が広い。その上、山は所狭しとある。しかし、落雷は全く発生しない。代わりに降雨量は南物部大陸に次いで多く、毎の年、月に必ず死者を出す。
 現在の天気は大雨。昨日の日が沈む頃に降り始め、現在は巨勢山の至る所で土砂災害が発生。
 三名は巨勢山の標高のみならず、波多八代地方の大雨にも苦闘する。
「絶対成人体型九百を越えてるゾオ! さっきかラア耳鳴りがアきついぞ!」
「それだけジャありませんね。わわ、大雨のセイデ地盤ガ弱まってる! 砂漠と異なり雨水デ足ヲ滑らす危険性ガ高いですよ!」
「さっきから……がああじゃ! 危うく落ちる所じゃあ! こりゃ四本足でしっかり着地しないと転落しは免れんじょお!」
「わわ! ありがとう真鍋さんニ林原さん! それにしたッテ……危ない!
 だ、大丈夫ですカ真鍋さん!」
「年上と二十代に達しナアい若者に助けられるトハアまだまだ怠けている証拠ダア!」
「現役時代と山道じゃ、どちらが辛いじゃあ?」
 どちらモオ辛いに決まってる--真鍋べア彦にとって人生に辛さの上下はなかった。
 そんな時一行の目の前に巨大な何かが斜め左から迫ってくる!
(さっきから何かガア近付いてくるようナア?)
「この音は……林原さんト真鍋さん! すぐに右上にあるあの木陰ヘ避難シテ下さい! 土砂に流されタラ一溜まりモありません!」
 マンマミーの警告は早かった--それを聞いた二名と発したマンマミーは指さした右上の隠れる場所へと避難。
 その直後だった--土砂はさっきまで居た所にある半径成人体型十まで押し流した!
 その様を見た三名は改めて旅の過酷さを思い知らされた!
(神々の怒りはこんなにも激しいのじゃあ! 改めてわしは遠征時代から現場に駆けつける頃までに死んでいった部下を思い出すじゅう。確かこことは異なる場所だったじゃあ? わしがまだ二十代前半だった頃に突然遠い場所に派遣されて現場に急行しようとするも途中の山がちょうど大雨で土砂災害が発生じゃあ。
 ふふじゅ、やはりわしの人生は死と隣り合わせじゃあ。いつ死ぬかはさっぱり分からない以上どうする事も叶わんかじょお?)

 午後二時十八分三十八秒。
 場所は標高成人体型千九百付近。ちょうど南西西へ登ると巨勢集落に辿り着く。
 だが、道はそう容易く出来ていない。二十年ものの木造吊り橋が集落との外との道を繋ぐ。よじ登るとしたらコブ吉では無理があった。
 もう一つの懸念材料は同時に乗るには鶏量が合計四十以下でないと破りかねない。
「じゃあ年長者カラ先ニ進んで下さい」
「わしは最後にするじゅう。べア彦が先に渡るじゃあ?」
 仕方ないナア--べア彦は言われた通り橋を渡り抜く。
「次は林原さんじゃないト--」
「さっきも行ったじゃろじゅう、わしは最後にするじゅう」
「でも--」
「お前さんが先に渡った方が良いのは先程のお前さんの活躍を見越しての事じゃあ!
 だから先に渡るのが先を生きる者の務めじゃあ!」
 わかりました--マンマミーは吊り橋の重荷を出来る限り与えないように跳ねながら渡りきった!
「最後にわしが渡ればいいじょお。頼むぞ吊り橋じょお」
 コブ吉は慎重に渡る。吊り橋はあちこちに音を立てる--渡る者を安心出来ない状態にする金切り音。
 この場合かそう話ならここで慮らない事故が起きて吊り橋は破れる。
 だが、そうはならなかった--何故ならここは現実の世界である。
「何事もなくテ良かった良かった」
「本当ですよ。世の中無事なのが一番だって!」
「ってお前人族だナア! 名前は何テエ言うんだア!」
 私は武内人族のミスティ--齢十八にして三の月と二十八日目になる少女は三名の前で自己紹介した。

 午後五時四十七分九秒。
 場所は巨勢集落。酋長邸。一階庭。コブ吉とべア彦並の体型をした者は入るのが容易でない鉄風呂があった。
 少女ミスティーは鉄風呂の底でも薪を燃やす火を巨勢竹を切って適当な長さにした竹筒で息を吹く。
「鉄風呂は熱いカラ雑巾デ保護しないト火傷してしまう!」
「仕方ないでしょ。ここはとっても小さな所なんだし。それに私の産まれた大切な大切な場所よ!」
 鉄風呂に入るマンマミーをミスティーの後ろで眺めるコブ吉とべア彦はある話をしていた。
「ここじゃあ何だア。中デエ話をしようカア、コブ吉!」
 二名は老年同士の話をする為に中へ入ってゆく。
「気持ちいい。ところで林原さんト真鍋さんハ何ノ話ヲするンだろう?」
 さあ--ミスティーは即答すると再び火加減を調整する。

 午後六時一分三秒。
 酋長邸一階寝室。酋長とその妻が寝る部屋。本棚はなく壁一面に描かれた解読不能な文字が集落の神秘性を高める。
 そこにはコブ吉とべア彦以外に齢四十九にして三日目になる武内百足族の老年ムカッビが座る。なお妻は十の年より前に他界。跡取りは存在せず、代わりに養子となったミスティーが酋長を引き継ぐ予定。
「じゃあ旅者のノノの皆様。思う存分話イイい合われなさい」
「百足訛りが何とも言えんナア。まあ種族の問題ダア。この負け熊がどうして話す気ニイなったかアを言おうか?
 やめとこう、時間の浪費ダア」
「早く始めてくじゅう。前置きは後でたくさん聞くからじゃあ」
「いいだアろう。では語る。この真鍋べア彦ガアどうしてアリスティッポス遠征を受ける切っ掛けになったかを始めよう。
 あれはちょうど二十の年より前カア? 新米軍者の頃ダア。当時の--」
『真鍋べア彦は語り始める。父であり傭兵団団長だったベイアル・真鍋と対立した事
が切っ掛けで国家神武軍者になった。当時の彼は戦いの生業を腰砕けに見ておった。
まあ新米は誰だって馬か鹿みたいな奴等ばかりじゃ。このわしだって当時は血気盛ん
じゃ。
 わしの話は置いといて、べア彦は態度に比例して軍者内では太刀打ち出来る者が
少数と言えるくらい強い雄じゃったの。わしでも歯が立たないと思うな。そんなに強い
彼は事もあろうに更なる強者を求めてアリスティッポス大陸を目指す事になったんじゃ。
じゃがここで彼は人生出最も辛い時期に当たったのじゃ。そこの銀河連合は最初の所
までは大したモノは居なかった。問題はそこではなかった。彼は銀河連合以上に恐ろ
しい存在に苦戦する事になったんじゃ。それは過酷な冬。冬は寒い。そんな事は誰で
もわかる。
 重大なのは雪じゃ。わしも行きで苦しめられた事は遠征時に十度くらい味わったか
な? まあいい。わしが苦しめられた以上の雪がべア彦達を次々と襲撃。そこに狙い
を定めるかのように突然百獣型級の銀河連合も襲来してべア彦だけ生き残った訳
じゃ。
 あれだけ負けたんじゃから当時の彼の悔しさは想像以上じゃの。それ以来五の年ま
で彼は強者との戦いを避け続け、地味な仕事だけを黙々とこなす日々が続く。そんな
彼がどうしてまた挑戦したのか?
 それはあれだけ喧嘩していた父親が無謀にもアリスティッポス大陸に挑戦してほぼ
三分の一近くまで到達した挙句戦死するという方を聞いたからじゃ。彼は父が銀河連
合に死なされて奮起したのではなかった。怠けている間に父が自分以上に進んだ事
が大変悔しい事も含んどるのじゃ。気持ちはわかるの。
 そんな悔しさを胸に彼は司令官直々に土下座までして再度挑戦を懇願したのじゃ。
普通なら断る案件じゃ。ところが当時の司令官はべア彦の実力を信じて許可したの
じゃ。全くいい加減な者はどこへ行っても存在するのは余り良いものじゃないぞ。
 そんでまた挑戦したけど結局敗走した。けれども今回の敗走は少し異なってのう。
お陰で雪原地帯にいる銀河連合への対処法が確立する切っ掛けを作ったのじゃ。
 それに満足したのかべア彦はこの後九回もアリスティッポス大陸に挑戦し続けたが、
全て敗走。けれども最後の挑戦で大陸の五分の二を制覇したんじゃ。これはほんの少
しではあるが全生命にとって掛け替えのない一歩となるのじゃ。ところがそんな彼も九
回目で受けた傷が元で引退年より先に辞める事になるとは。べア彦の成果は後世の
者達に受け継がれる事を願うばかりじゃ。
                               旅をして十一日目の寒空の夜じゃ』

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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