FC2ブログ

一兆年の夜 第三十六話 弥勒菩薩を待ち侘びて(五)

 三月二十二日午後六時七分零秒。
 場所はプロタゴラス大陸フィス地方。砂漠地帯は抜け、前方には荒野が広がる。
 気温は砂漠地帯よりやや低いが湿度は高く、今度は暑さよりも湿った空気が旅者を次々と襲いかかる。
 四名は人族及び鬼族のように発汗作用による冷却機能は備えておらず、種族毎の呼吸法で熱を下げる。
「それにしても長距離を走る事はままアナラアん。絶対に走るナア! 熱射病にかかるゾオ!」
「もう罹ってるっさ。アジイ。砂漠を抜けたら今度は湿気による無視暑っそ。もう死ぬ」
「良くないよコケ真おじさん。ボク達ガ死んでモ骨ヲ回収するノハ銀河連合ニナッテ後味良くないト思いますよ」
 真っ先に回収するっそ、奴等--コケ真は死の覚悟を決める事は叶わない。
「情けない雄ダア。そんなんだから嫁さんトオ婚約解消しそうにナルンだ!」
 嫁の関係を口にしなっさぞ--ますます情けない雄であった。
「そのお陰で神々から死ぬのを惜しまれじぇえ。感謝するんじゃあ、コケ真じょ」
「ちっとも感謝出来ないっす! みんなしておらを腰砕けに見やがっしなあ」
 口数はここで仕舞いにしロオ、咽がア涸れる--べア彦の言葉を機に一の時の夜食を始めるまで口を抑えた。

 午後九時十二分十八秒。
 場所は南武内大陸と南物部大陸の境目。左右に検問所があり、左側が最も古く、右側は完成したばかりであるが未だに準備が始まらない。
 四名は左側でなけなしの水とおにぎり四個を貰う。
 一行の代表林原コブ吉は齢二十二にして三十日目になる武内カメレオン族の雌所長から一泊出来るか聞いた。
 返答は--
「外で寝て下さじゃあ。あなた達は大きすぎる二名が居る為じゃ、検問所に入り込めませんじょお」
 大きくテエ何が良くナアイ--成人体型一以上ある所長をしゃがみながら胸ぐらを右前足で掴むべア彦。
「諦めナアさい。大きすギイる真鍋さんや林原さんが運がなかっただケエです」
「僕ハ入ってない。良かったノカソウデなかったのか……」
「まあ仕方ないじい。毛布はあるかカメレナちゃんじゃあ?」
 カメレナと呼ばれる所長は首を縦に下げる。それから検問所の備品室から三枚もの毛布をコケ真以外に与えた。
 三名は検問所の扉近くで毛布を被り、種族それぞれの体勢で眠った。
 一方のコケ真は何度もカメレナに--あまりの毛布はないの--と尋ねるも返ってくる答えは首を横に振るだけ。
 終いには中に入ろうとして隙を突いて検問所へ侵入--
「アラッサアア!」
 阻止された!
「私を誰と存っそる? ラテス島大樹型討伐の貢献者カメレーオの次女っせよ!」
 知らなかっそ--そのまま意識を向こうに持ってゆくコケ真だった。
「やり過ぎたかっさ? しっかし私も旅の道連れになりっさがここを離れる訳に行かっせ、諦めて彼等の無事を祈るしか通は無いっそっさ」
 他にも理由はあった--銀河連合に検問所を取られる訳にはいかない為。彼女は形は違えどカメレーオの遺志を受け継ぐ!

 三月二十三日午前十時二十七分九秒。
「ハックショオオッガ!」
 コケ真は毛布無しで寝た為に風邪を引いた。熱も高い模様。
「こりゃあもう連れて行けんじゃあ。折角ここまで連れて来たのにわしが昨日うっかりコケ真をそのままにして寝たのがいけなかったじゃあ」
「じゃあ始めカア……ヒックッシャアア!
 ぶるっす、毛布って四つしかない?」
 はい--カメレオは首を縦に振る。
「御免なさい。僕が昨日軽弾みデ毛布ヲ取らなケレバ--」
「ヒックシ! 気にしなっさよマンマミー。おらは後から追いつっさ。だから先に進んっさ!」
「いいのかコブ吉ヨオ? コケ真を置いていっテエ?」
「いいじゃあ。旅はどこに向かうかわからんものだじい。その代わり必ず追いつけよコケ真じゃあ!」
 ははあ--熱があってもなくてもやる気を出さないコケ真。
「後ハア頼むぞカメレオ!」
 了解イ--右前足で敬礼するカメレオ。
「じゃあ行こうか二名じょお」
「あっ、その前にカメレオさんニ聞きたいことガあります」
 マンマミーはコケ真を運ぼうとするカメレオを呼ぶと。
 何--カメレオは不思議そうにマンマミーを見つめる。
「カメレオさん、一つ聞いてモ良いですか?」
 どうぞ--コケ真を丁寧に降ろしながら質問を待つカメレオ。
「いつまでここヲ死守するノですか? 施行まで後一ノ年クライなのに。
 なのにドウシテコンナ暇デ辛そうナ仕事を引き受けられるの?
 教えて下さい!」
 マンマミーはカメレオの顎より下まで頭を降ろす。
「父の為よ。父カメレーオは自分ノ命ヲかけて仲間ヲ助けた。だから今度ハ私ガ命ヲかけるの! 例え暇ナ仕事アッテモココハ境目なの! 大陸と大陸ノ二つヲ繋ぐ境目。だから私ハ命ヲかけてココヲ死守するわ!」
 マンマミーはカメレオを少し羨ましがった。
「大丈夫よ。後一の日ガ経てバココニ新任ノ所長ガ来るわ。それまでノ辛抱よ!」
 やはりマンマミーは羨ましがる--自分にない強さを持つ彼女を。
「まあいざとなったら、へっくしょうっさ!
 おらが何とか……出来なっさ」
「もうあなたは口を閉じて下っさ。どうか旅を続け下っし、マンマミー・レヴィルビー」
『それが少年と女性の最後の会話だとはこの時のわしでも予想出来なかった。わしら
は針路を武内大陸のある西に向けた。そこへ向かう訳は只の気紛じゃ。何故ならわし
らの旅に目的はない。施行されるまでに行きたい所を全て通るだけなのじゃ。全くわし
もコケ真を馬か鹿と言えた義理じゃないの。そんなコケ真とも分かれて一の週が経た
ないうちに合流する。何て誰が予想出来るかの。
                          旅をして九日目の防人達が守り通す昼じゃ』

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR