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一兆年の夜 第三十六話 弥勒菩薩を待ち侘びて(四)

 三月二十日午後五時十二分八秒。
 場所はヒッピア砂漠。朝は小さく月が現われるまで巨大化する螺旋の砂が各地に点在する所。ゴルギ村までもうすぐだ。
「巨大化する螺旋ノ砂ニ気ヲ付けて下さい! ブラックホールサナガラニボク達ヲ呑み込むカモ知れないノですから!」
「とはいっさよお、足場が更に安定しなくて困っせえ!」
「恐いのならわしの背中に乗れじぇえ! 道連れにはちょうどもってこいじゃあ!」
 不安を煽らないで下さっさ--コケ真は背中に乗るのを断る。
 三名は秒を数える毎に拡大する螺旋の砂の数々と苦戦苦闘しながら進む。昨日みたいに踏み外す者が居れば二名掛かりで助け合うなどして一名の死者を出すことなくゴルギ村を目指して歩く!
 そしてとうとう南南東向こう側に村と思わしき薄黒い長方形が見えた。
「もうすぐですね! 後は気合いデ進むのみ!」
「とか言ってまた砂漠の山だったらどうっそ?」
 希望を破るようなこと言うんじゃないじい--コブ吉はコケ真に怒鳴った!
 それから十の分が経過。見えたのは希望の色だ!
「良かった! おらは初めから村だって信じてたっす!」
「……コケ真おじさんにイチイチ突っ込むノハ止めニシテ良いですか?」
 今更何を呟くじゃあ--その言葉は暗黙の了解であった。
 それから一の時が経過。三名はようやくゴルギ村に到着。目的無き次の目的は伝説の軍者真鍋べア彦。真鍋傭兵団十四代目団長クロコッペ・真鍋の母方伯父にあたる。彼からアリスティッポス大陸遠征の体験談を聞く事にあった。

 三月二十一日午前十時二分三秒。
 場所はゴルギ村中央地区。一階建て藁小屋。扉は引き戸式。
 朝食を済ませたコブ吉達三名は真鍋べア彦のいる藁小屋前に来ていた。
「じゃあ扉を叩くじょお」
 その必要はなアい--扉は突然開く。そこから成人体型一とコンマ六未満ある齢三十九にして八の月と十七日目になる既に帰化したゴルギ熊族の老年が姿を現す。
「爺さんでかいっさ!」
「でかいも何もお前らが小さすぎるんだヨオ!
 そんで何のようダア、この負け熊ニイ!」
「その負け熊のあんたの名前とその体験談を聞きに来たじゃあ。いいかじょお?」
「お前ハア確か……国家神武軍者にして遠征家の異名を持つ林原コブ吉カア!
 名乗らない訳にイもいかないなア。この負け熊こと真鍋べア彦はかつて特殊部隊の副長を務めた程のオ足椀を持つよオ!」
 前右足親指で自分の胸に突き出しながら堂々と自己紹介するべア彦と呼ばれる老年。コブ吉以外の二名は後ろにたじろぐ!
「恐がんなヤア若いの二名! 負け熊となってはア何者も恐怖するくらい落ちぶれてあるんダア。気軽に話をしナア!」
 それでも無口になる二名。コブ吉が代表して話をする。
「体験談を話す気になったじゃあ? 無理をしなくても良いじゃあ。わしは軍者を引退してじぇえ。その--」
 コブ吉は旅をしている理由を話す。気がつくと藁小屋の中に入っていた。
 新聞記事を切っ掛けに人生最後に各地を回る事。コケ真の嫁による婚約解消を諦めさせる事。マンマミー自身を鍛え直す事。それから--
「--まあそんな感じじゃあ。どうじゃあ? 話す気になれるじゃあ?」
 べア彦は体験談を話したがらない--彼は今でも引き摺る。
「そうじゅ、そうだろうじゃあ。誰でも話したがらないのなら仕方のない事じゃあ。
わしらは明日の昼までにここを出て武内大陸と物部大陸の境へ向かう予定じゃあ。それまでに話す気になったのならいつでも呼んじぇえ。西地区にある一階建て藁宿で泊まっとるから気が向いたら来てくれじぇえ」
「遠い所をハアるばる来て貰いながら済まない事をしたナア。話す気にナアったらそちらの宿に向カアう」
『結局べア彦は体験談を語らなかった。だが不思議な事に彼はもう一名の旅の道連
れになったのう。理由はいつ話す体勢を取れるように付いて行くというものじゃ。彼の
仲間入りはもう驚きで一杯じゃ。何故なら軍者を辞めて半年しか経ってないのじゃ。
わしとは経験の記憶が違うぞ。これほど頼もしい仲間はどこにいようか。まあ役に立
たない仲間は一名おるが、あやつは居るだけで十分じゃ。とにかくわしら四名は境に
ある検問所に向かう。
 検問所? 実は施行される前から国家神武は実験的に検問所を設けておるのじゃ。そして境にある検問所は五の年より前から稼働しておるのじゃ。ただし、今は施行開
始までに新たな検問所に取って代わる為、機能停止となるの。だったら施行する前に
それを拝めるのも旅の目的というもの。
                           旅をして七日目となる頼もしい朝焼けじゃ』

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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