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格付けの旅 プロローグ 宇宙のアルッパー

 第十惑星<リューイチ>から第三惑星<わとーそ>へと光よりやや遅い速度で進むデュアン。彼はブラックストーン製のB5ノートを軽々しくめくる。
『[神殺しの九十九]最新版


 ~生誕の順-統合日時より
 【緑肌の剣士】
 【混沌の帝皇】
 【植物学者】
 【格付士】
 【時空王】
 【政治家】
 【不死身の銃士】
 【人肉喰らいの科学者】
 【初めからない欠番】
 【妖艶の痴女】
 【卑怯なる黒豚】
 【俗物の悪獅子】
 【収集の古代種】
 【交渉家】
 【強者を屠る格闘家】
 【神死なせの哲学者】
 【快楽の半人半獣】~』
 デュアンはルイ14世時代の学者シャワルン・マゼーラモアの記す神殺しに関する書物を基に予めノートに記したページに眼を配る。
(さすがのシャワルンもマザーシステムが捕獲した門番まではわからなかったな。俺はこの十七の馬鹿野郎に加えてマザーシステムから聞かされた連中の通り名も追加しておく)
『[神殺しの九十九 verデュアン監修]最新版


 ~生誕の順-統合日時より
 【緑肌の剣士】
 【混沌の帝皇】
 【植物学者】
 【格付士】
 【時空王】
 【政治家】
 【防犯の家】
 【不死身の銃士】
 【人肉喰らいの科学者】
 【爆発する老人】
 【初めからない欠番】
 【妖艶の痴女】
 【1/1のスケール】
 【紳士的な骸骨】
 【卑怯なる黒豚】
 【俗物の悪獅子】
 【収集の古代種】
 【右に属する化学記号】
 【左に属する化学記号】
 【交渉家】
 【強者を屠る格闘家】
 【踏ませる地雷】
 【神死なせの哲学者】
 【快楽の半人半獣】~』
(そもそも俺達全員が全て人型という訳じゃない。通り名でも解るように豚やライオン、それに家や地雷も神が困るほどの成長をする訳だ。ちなみに俺は【格付士】だ。
 ってそんなのはどうでもいい!
 俺はこいつらの中で注意してかからないとならないのが多分三体もいるぞ!
 一体はどうしようもない悪党。こいつは何もかもが危険過ぎる!
 もう一体は種をまき散らす中年太りのクソ野郎! こいつほど殺してやりたいと思わせる男は他にいないが勝てる気がしない!
 最後の一体はこの中じゃあ一番苦痛がわからん奴だ! そいつは持ちうる力が何かと厄介な代物だ! なんでこんな奴をあの最大最悪の男は気に入ったんだ?
 他の連中か? わかりやすい悪党は三体いるが内二体とはいやいやながら同盟を組んでるな。まあ始末する気が全くおこらない以上仕方のない事だ。他には……まあ敢えて尊敬する男も居るけどここは思い出さないでおこうか。
 さっさと……もう<マクタガ>まで進むとは体内時計が進んだ時間と一致しない証拠だな)
 デュアンが<マクタガ>まで来る頃には半日経過。光に近付くと物体は進んだ時間よりも時間の経過が遅くなる。改めてアルバート・アインシュタインを褒め称える--が同時に軽蔑もした。
(何が光より早い物体はない……だ! ここに俺がいるではないか! あのチョビ髭はもっと頭を働かせれば良かったのによ。はあ、まあニュートリノに危うくスピード競争で王座を譲りそうになったけど頼むぞアインシュタインよ!)
 アインシュタインへの愚痴を宇宙空間に溢そうとする頃には第三惑星<わとーそ>を回る衛星<月>を背後に構えていた。
「どの太陽系も結局は月に守られている……と」
 デュアンはA4のノートを取り出して<わとーそ>の地形がどのように成ったのかを直視。
(月からの角度じゃあ海はもう無いも同然だな。それなのに超重元素が原料の超重兵器でも無事な鯨が居るのか。どんな魔法を駆使したんだか)
 ここは自分の故郷の宇宙とは違う。物理学が支配するエーテル無き宇宙なのだ。
(さあて降りますか。エーテルが無くても俺は困る事なんて一つもないからね

 <わとーそ>へと降りたデュアンが早速目にしたのは超重兵器によって年中雪が降る北アメリカ大陸の合衆国領地だった。そんな光景を見るなり早速大量破壊兵器を記したB5ノートを懐から取り出す。
(原子力爆弾はアインシュタインが宇宙斥力以上に人生において影を残した悪魔の兵器だ。キノコ雲は日本人に放射能アレルギーを植え付け、放射能と共に生きるという責務から逃げる連中を作り出したと言えるな。全くこれだから原子力を兵器にするべきじゃあないんだよ。後の戦争がまるでにらみ合いのつまらない戦争になるんだからさ。
 全くアインシュタインにしたってオッペンハイマーにしたってフォン・ノイマンにしたって偉大なる天才は同時に悪魔にさえ手を貸す愚行をやってしまうんだから世の中はどう転ぶかわからん。
 さてと、超重兵器とは何なのか? それは俺の目の前で繰り広げる終わらない雪……だけじゃないな。終わらない雨、終わらない火山噴火、終わらない地震……果たして原爆よりも危険な物をどうして人間様は作れようか?
 あの兵器は一度起爆すれば瞬間的に小ブラックホールを出したかと思うとたちどころに全てを歪ませて気がつくと原形を留めないものが一帯に広がるというのさ。果たして放射能を悪に仕立てた原爆と重力を悪に仕立てる超重兵器。どちらがよりサタンを誘わせるだろうな?
 まあどちらも絶対悪と見るのは死人のする事だ。生きてる奴等はそいつらと真っ正面に向き合う事を勧めたいね。俺だってそうしたいがどうにも向き合えない部分があるんだ……止めようこんな考えは。
 今はどこかに生命反応があるはずだ! 探し出して確かめないとな、格付けの為に!)

 デュアンは一時間で全世界の隅々まで調べる--光を難なく超えた速度で!
(こんだけ人間様が<わとーそ>を痛めつければコキブリや植物といった恐竜共が蠢く時代からの奴等以外は生きられんはずだぞ! なのに十三発目以降を難なく防ぐ鯨は本当に鯨なのか?
 仕方ないが、海も隅々まで調べてみるか? 面倒くさいが)
 太平洋上で浮かぶデュアンが海に潜ろうとしたその時だった!
「反応した! しかも--」
 突然百メートル以上の影がデュアンに襲いかかる--不思議な事に影が襲う前に波飛沫が発生!
 デュアンは光以上の速さでこれを回避!
「光を越えただと! お前は門番だな! 全く新しいタイプの!」
 いや動物がお喋り出来るとは思え--デュアンがそう思考している内に影は姿を現しながら口を開く。
「お前は二本足だな! 俺以外で目に追えない奴がまだ居るとは!」
 それはお喋りが出来る--ブラックストーンを呑み込めば出来ない動物が果たしていようか?
 影は全長百メートルで恐らくシロナガスクジラに近い姿。体色はやや藍色がかる。
 何時の間にか[神殺しの九十九]が記されたB5ノートを取り出すデュアン。
「ここに新たな神殺しが追加されたな、鯨くん?」
 自分を無視してノートに記してゆく者を見て怒りの湧かない動物はいない--鯨はすぐに食らいついた!
「危ないだろ! 紙を破ったらどうするんだ鯨野郎!」
「お前の趣味は知らん! さっさと俺に食われろ二本足!」
「俺が食われる? 食われると言うより寧ろ倒されるのはお前だ鯨!」
 B5ノートにある程度記したデュアンはそれを懐にしまうと教典を回し始めた!
「その教典が自分でに動く? お前は錬金術師か?」
「鯨の癖に錬金術を知ってるなんて意外だな。生憎外れだ。俺は--」
「魔術師風情が俺を倒せると本気で思うなよ!」
「言う前に答えを当てるなんてお前はどんだけ賢いんだよ、鯨外生物が!」
 こうしてデュアンと巨大鯨の神智を越えた戦いが幕を開けた!
 日本の沖縄から北海道に至るまで彼等は現在光よりやや遅く、音では決して届かない速さで戦いを繰り広げる!
 一方は積極的に食らいつき、もう一方は躱しながら火、水、風、土、氷、雷属性の低級魔術を放ってゆく!
「二本足の癖してエーテルってんじゃねえぞ!」
「エーテルはこの宇宙じゃあ否定されてるんだよ! つーかエーテルという単語を知ってるお前は人間臭くない?」
「そんなへなちょこで俺を倒せると本気で思ってるのか!」
「わざと使ってるんだよ。どうしてだかわかるかな、鯨君?」
「小さい癖してブンブンと! いい加減俺の腹の中には入れっての!」
 お断りだ--その言葉と共に巨大鯨の中心部に山吹色の巨大なダビデの紋様が記される!
「これでお前は俺の攻撃を回避出来ない。少し本気を見せてやるよ」
「何訳解らん事言ってる! もうノロノロ動くのは飽きたんだよ!」
 巨大鯨は光速を僅かに超えた速さで右捻り回転の突進をデュアンに仕掛ける--実像は後に続くように!
 だが、暖簾に腕押しするように当たり心地を感じない!
「何、どうゆうトリックだ二本足!」
 こうゆう事だ--デュアンは火、水、風の下級魔術を周囲に放つ!
「俺に近付いてるだと! そんな物は--」
 巨大鯨は避けようと速度を上げる--火球、水流、鎌鼬は虚ろな実像をすり抜ける。
 ところが三つの魔術もまた速度を上げて巨大鯨を追尾--鎌鼬の実像は恐山に届いていないのにも拘わらず斜め上に真っ二つ!
 巨大鯨はなおも回避しようと速度を上げてゆくが三つの魔術は呼応するかのように速度を上げる!
「あの紋様はそうゆう事か! よりにも……しまったぞ!」
「もういっちょ行っとくぞ鯨よ!」
 デュアンは追撃するように土、氷、雷の下級弾幕魔術を北方四島を覆うように放つ!
「クラスター爆弾も放てるのかよ! つーかもう避けるのも面倒だ!」
 巨大鯨の口から光のような物が収束--下と同時にそれは弾幕ごとデュアンに放たれた!
 デュアンは予めバリアを唱えていた為、周囲半径二メートルより内側は無事で済むものの、それより外は二十一世紀初頭に製造された一般核兵器並の威力に晒され、火の海と化す!
(実際に核戦争が起きたら択捉島も国後島も無事では済まないな。キノコ雲こそ発生しなくてもたけのこ雲や蛇雲、それに落雷に似た発光を起こせば何もかも一瞬で焼き尽くす物だよ。まあそれだからこそ核抑止力は成立しちまうってもんだよな)
 デュアンはその光景を眺めながらまるで余裕の態度で格付けしたい事を考える。
「何ぼーっとするか二本足! そのまま俺に食べられろ!」
 巨大鯨は背後をとって漁船すら呑み込まんと大きな口を開かせる!
 かかったな間抜け--デュアンの口元は笑みを隠せない。
 次の瞬間--
「ががああ、忘れていた!」
 巨大鯨はデュアンの放った火球、水流、鎌鼬を三方向から受けた!
「弾幕は虚仮威しだよ。それと先に放ったそいつらも同じだ。
 本当の狙いはここからだ!」
 デュアンは火、水、風、土、氷、雷、光、闇の中級第一魔術を周囲から放つ!
 そんなもの俺の鯨砲で吹き飛ばしてやる--巨大鯨はもう一度口から核エネルギー並の光線を放つ!
 放たれた光線は八大属性の第一魔術を吹き飛ばす……はずだった--八つは光線の周りに沿うように巨大鯨目掛けて向かってゆく!
 気付かない俺だと思ったか--巨大鯨は目前のところで急加速しながら上昇!
「放った瞬間に動くなんて俺に出来ない事をやりやがるとは。それにしても<わとーそ>人共は大変な奴を出してしまったよな。
 そうだろ、鯨くん?」
 光線を防ぎながら頭上から巨大鯨が大きな口を開けながら右螺旋で突進するのを超光速による感覚で気付いたデュアン。
「独り言多いんだよ二本足が!」
 格付けだよ、鯨くんよお--デュアンは特殊な魔法で物理攻撃を回避!
「二度目だぞ! しかもまだ八つが追って来やがる! しつこい奴等だぞ!」
「お前も独り言呟いてるんじゃねえか、鯨!」
「間抜けが! それは俺の作戦だ!」
 しまったなあ--巨大鯨の真上に居ることを当てられたデュアンは笑いながら右手の人差し指と親指の平で交差しながら音を立てた!
「これで年貢の納め時だ、魔法使いの二本足がああああ!」
「それはこっちの台詞だ! 落ちよ、熱圏!」
 ななな--デュアンによる大気圏をずらす魔法だけは避けきれなかった巨大鯨は太陽の表面温度の約三分の一の熱と<わとーそ>上の全ての電流をまともに浴びた!
「<わとーそ>生まれの鯨君はわとーその力にやられ、更には俺が放った魔法をガンマナイフの原理で--」
 中心部向かってエエエエエ--<わとーそ>を半壊させかねない程のエネルギーを受けた巨大鯨は全身を焼き尽くされてゆく!
 そろそろ格付けしないとな--その様子を月面で眺めるデュアン。
(確かに強すぎたが俺の敵ではなかったな。えっと……マザーシステムには何て報告すればいいかな?
 そうだ! ここは……ググ!
 危うく左腕を持って行かれるだけで済んだか!」
 デュアンは肩から先までの指まで左腕を抉られながら視線を張本人……いや張本鯨に向けた!
 宇宙空間でも活動出来るのかよ--視線の先には骨と内臓を出しながらも左腕を器用に咥える巨大鯨の姿があった!
「勝負はまだ着いてないぞ、二本足イイイイイ!」
 全くこれだから神を易々と越える奴は常識が解らないんだよ--デュアンは余裕の表情で呟く。
「そのままテメエの左腕を味わってや--」
 かかったな、鯨--左腕はデュアンに鼓動するように掌から火、水、風を融合した極限魔法を放つ!
 巨大鯨は--危うくやられる所だった--と月が隠れる地球圏まで光速移動する!
「有り難う、鯨! お陰で左腕は元通りだ!」
 デュアンは何時の間にか巨大鯨の背後に移動--経典を外して!
「生身で声が聞こえる……まさか本気を出すのか!」
 その通り--デュアンは突然地、氷、雷を融合した極限魔法を巨大鯨目掛けて放つ!
 しかし、巨大鯨は難なく回避したと思った矢先に何故か下腹部に回避したはず魔法を受ける--固められ、急激に冷やされ、痺れながら!
「がああああ! まさか同時に放てるのか、経典とテメエは!」
「その通りだ! 俺が本気を出した暁として、もう太陽系を大事にする気は毛頭無くなった……ディバインドライヴとファントムハザード、それにギャラクティックヘブンを惜しみなく使ってやる!」
 とすでに経典を含めて三の九乗分放つデュアン--太陽系の重力はひび割れを起こしてゆく!
「受ける前にテメエを食らってやる!」
 巨大鯨は口を限界まで開けながらデュアンのいる方まで最大速度で迫る--もはや映像が一時間遅れる程に!
「俺を食らうって? 甘いぞ、鯨!
 経典にも注意を払わんか!」
 いつの間に--経典は巨大鯨を覆うように周囲を回りながら拘束!
「いで! 俺を閉じ込めるなんて!」
 チ、チ、チ、閉じ込めるという発想は止めよう--デュアンはくっつけた左腕の人差し指を左右に振る。
「まさか約二万もの魔法が俺に--」
「ああ、しかも経典でさらに二倍来るぞ! それを避ける術は--」
 合計39366もの極限魔法を受けた--巨大鯨の周りで太陽系の星々はエネルギーに耐えられず、次から次へと消滅!
 戻れ、経典--デュアンは<リューイチ>まで避難して巨大鯨の周りで起こる出来事を観察。
(どうやらブラックホールの発生でエネルギーはこれ以上やってこない。ただ、太陽が消滅したからもうここら一帯は漂流してゆくってな)
 安堵したのか懐からB5ノートを取り出すデュアン……だったが--
「信じられない! あれだけのエネルギーを耐えきるなんて!」
 巨大鯨はブラックホールにもがきながらも今なお生きていた--吸い込まれながらも体中の傷を超光速で治しながら!
(魔術師という人種は火を起こす為に詠唱を行う。これは数学者が三角形を証明するように魔術師も火起こしの証明をするんだ。その為に火を起こす魔術回路を通じて体内に蓄積されたエーテルと俺達魔術師が必要とするマナと呼ばれる生命エネルギーを消費して火を実体化し、そいつを目標に向けて放つ。ただし、マラソンランナーが大量の肺活量を必要とするように魔術師もまたそれを必要とする。魔術一つ消費するだけでも息切れを起こすなんて事が多々ある。
 んで俺はどうして巨大鯨を眺めながらそんな事考えているかだろ? それは俺の詠唱方法がやや特殊なんだ。これは俺が開発した詠唱方法ではないんだが、『零秒詠唱』と呼ばれる詠唱法について……ガ!)
 油断をしたデュアンは巨大鯨の体当たりをもろにくらい、<Hカー>まで直径千メートルものクレーターを出しながら激突!
「余所見してるんじゃねえ、二本足!」
「油断してただけだろ、鯨君よ!」
 デュアンは見覚えある島まで飛ばされた事を確認する。
(連中は既に避難済みなのか? 無理な話だ! 何れグリーンP太陽系は……考えさせろよ、こいつは!)
 右捻り回転による体当たりを寸での所で避けるデュアン!
「俺をここまで痛めつけた事を後悔させてやる、二本足!」
 それはこっちの台詞だ--デュアンは雷系上級魔法を放ち、巨大鯨を牽制!
(話の続きだ! 『零秒詠唱』で俺はこいつに僅か零秒でも詠唱の隙を……クソ、また正確無比になって!
 隙を与えずに放てるんだ、魔法を! けど、こいつにも……経典も限界を迎えそうだな!
 『零秒詠唱』にも弱点がある! それは予め入力したい魔法を放つ以上は大量の消費マナを体内に蓄積するんだ! これが厄介な代物で……考えさせろよ、巨大鯨の癖して!)
「お前は圧倒的に不利なんだな、エ!
 あんだけ魔法を放っても俺一匹倒せないから不利なんだろ、エ!」
「鯨の癖にチンピラみたいな言葉遣いをするなよ。いつから俺が不利になった?
 独り言でも吐くぞ! いいか?」
 敵である俺に聞くな--巨大鯨は海に潜る!
(俺が予測出来ない場所から這い出て来るってか? んじゃあ話の続きだ。
 えっと、大量の消費マナを蓄積する以上は当然人体には様々な悪弊が出る訳よ。消費マナってのは生物が腎臓で有害な物を尿に還るように人体に有害なマナもまた消費マナとして魔術経路を通じて体内から放出されるんだ。だから消費マナを体内に蓄積するなんて事になると魔術回路がおかしくなって様々な状態異常にかかり易くなる。それだけ危険な詠唱法なんだ、『零秒詠唱』は。
 そろそろ来る頃かな?)
 デュアンは水系上級魔法で周りにある海を更地にさせた!
 すると、巨大鯨が正面よりやや垂直に白く輝きながら突撃してくる!
「奥の手を見せてやる!」
 お前に手がないだろ--そう言いながらデュアンは防御魔法で周囲半径一メートルまで覆うバリアを張る!
 巨大鯨による『ホワイトホエール』を受けながらデュアンは話しかける!
「この技は何て言うんだ、鯨君?」
「『ホワイトホエール』だ……テメエは余裕こいて聞くんじゃねえよ!」
「んで俺が『零秒詠唱』を難なく放てるのはまあ他の連中と違って対処法を駆使してるのもある上、俺自身が蓄えるマナが星の容量を遙かに超えるからだ!」
「んな事知らん! つーかいい加減そんな防御壁も限界だろ!」
 そう言えば--防御壁はひび割れを起こしながら半径を縮めていき、デュアンの服にまで接近しようとしていた!
「『ホワイトホエール』を破る方法なんてねえ! そのまま食らっちまえ!」
 とうとうバリアは壊れ、白い光は<リューイチ>を呑み込む!

「はあはあ、二本足の分際で俺をここまでコケにしやがって!」
 <リューイチ>は跡形もなくブラックホールに吸い込まれてゆく中、巨大鯨はデュアンを探す!
「倒した……はずなんだけど。あの二本足の事だからどこかに--」
「へへ、ターバンを脱ぐぜ!」
 巨大鯨は驚愕の表情を見せながら声の聞こえる方へ向いた!
 そこには血だらけになりながらターバンを脱ぐデュアン--隠れていた肩まで伸びる白髪を宇宙に晒しながら凍らず、原形を留める!
「『ホワイトホエール』をくらってもまだ宇宙で活動出来るのか!」
「俺を誰だと思ってる! 故郷の賢者共から忌み嫌われた魔術師及び魔法使いデュアン・マイッダーだ!
 超神魔道師たる俺がそんな攻撃をまともに浴びながら無事である事はお前が証明しただろ!」
「つまり『同類』と言いたいのか!」
 ああ--デュアンは金色の光を放ち出す。
「まだ戦えるのか?」
「『零秒詠唱』をたった今解除した。ここから先は時間のかかる事をする」
 有り難い--巨大鯨は口から光線を放つ!
 しかし、デュアンを通過するように曲がりくねってブラックホールに向かう!
「言い忘れたけど、解除する前に一定時間物理攻撃を無効化する魔法をかけた。一般人にとっては一定時間でも俺達にとっては一日以上に耐えがたい長さだよ、鯨君」
 二本足がああ--巨大鯨はデュアンを倒すべく尻尾攻撃及び噛みつき攻撃を仕掛けるが何れも空を切る!
「鯨君は御存知かな、ボーリングについては」
 お喋りは手の内さらしだ--巨大鯨はデュアンに体当たりを仕掛ける!
 またもや通過--勢い余ってブラックホールに引き寄せられそうになる巨大鯨!
「どんなトリックなんだ! 無敵時間が長すぎるぞ、二本足!」
「光は光に、闇も包み込もう。そして穴は全てを引き寄せ、光すら逃さない--」
「その詠唱は……ブラックホールでも出す気か!」
「--ならば世界は転がるように回れ……さて、長ったらしい詠唱時間はお終いにしよう。
 いでよ……小宇宙!」
 させるかああああ--巨大鯨は白く輝き出す!
「また『ホワイトホエール』か。その技は光よりやや遅いのに使うよな。止めを刺すのか?」
 今度こそ消滅しろ、二本足--『ホワイトホエール』がデュアンの寸前まで迫った!
「……無敵時間は終いになったが、お前もそろそろ消滅しろ!
 『ボーリング・オブ・コスモス』によってな……」
 油断した--巨大鯨の周りを経典が覆い、そしてプラネタリウムのように中で模様を描き出す!
「お前は俺に触れる前にその小宇宙から逃れようと必死になるのさ。まあすぐに脱出出来るだろうが、そんな事をしたら……無事でいられるかな?」
「てめえ、動くぞ! 経典まで捨てる気なのか!」
 捨てないさ--巨大鯨をブラックホールより月の直径まで運ぶと突然姿を消す!
「ほら、元通り……遠すぎて声が届く事すらわからねえな」
 二本足イイイイイイ--小宇宙はブラックホールに呑み込まれ、急激に引き延ばされてゆく!
 デュアンはようやく決着が付いた事を安堵する。
(はあ、同類に勝てたのはこれが最初だ。俺もようやくあの男に近付けたかな?
 もう二度と俺の同類と出会うのは御免被りたい。俺の中にあるエーテル量が少なすぎる。もうこの宇宙から脱出する以外の消費は出来ない。さっさと……また迫り来るんかよ!
 ……いや、今度は神々が来るのか!)
 デュアンは二つの反応に気付く--その内の一つがドーナツ型宇宙の支配者である八百万の神々による光の速度で迫る無数の隕石群だった!
(あんだけ荒らせば神様だって怒るのは当然だな。俺は奴等に勝てるが、エーテルを維持したい。ここは--)
「勝負はこれからだぞ、二本足!」
 デュアンの眼前で空間が硝子のように割れる--そこから血塗れの巨大鯨が飛び出す!
「ちょうど良い所に来た、アルッパー! 神様が俺達を仕留めに隕石を寄こしたぞ!
 そんな訳で--」
「待て、二本足! 勝手に名付けてんじゃねえぞ!」
「話をしている場合か! 宇宙八百万の神は空間を使う者も含まれるんだぞ!
 ほら、あっという間に!」
 危ねえ--巨大鯨アルッパーとデュアンは紙一重で避けてみせる!
「怒ってるぞ! 神様はお前の先祖である怪獣王もいるぞ!
 放射能熱線を浴びせられるんじゃないか?」
「そんなことよりもお前に負けっ放しでは俺の--」
「だから喋っている場合じゃないだろ、アルッパー!」
「いつから俺に名前が付いたんだよ!」
「強敵兼相棒として認めたんだ。んで通り名は『宇宙のアルッパー』でいいか?」
「ええい、神が邪魔をしなければお前との決着が付いたのに!」
 こうして巨大鯨は正式に門番となった。名前はアルッパー。名付け親はさっきまで死闘を繰り広げた魔術師デュアン。
 二体の門番はその後、天文単位の隕石を躱しながらドーナツ型宇宙を脱出してゆく……


 PROLOGUE END

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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