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一兆年の夜 第三十五話 蜥蜴の尻尾(五)

 三月十六日午前九時零分二秒。
 場所は馬子市第二東地区第二東門前。
 馬子市は別名『要塞都市』と呼ばれ、市周囲が巨大な鉄で覆われる。要塞化を決定したのは新国家神武が興った年。当時の町長である蘇我蝸牛族の蘇我カタ津が市宣言とともに要塞化を決定した。当初要塞化は町政府内でも市民となった者達の間でも反対の意見が多数を占めた。自由な行き来を制限する以上、閉鎖的な生命が増加するという懸念が彼等の中にあった。だが市長になったカタ津は自らの種族と同じような速度で演説する事で皆を納得させた。
 宣言から僅か一の月の後に着工開始。本来計画された要塞化は目標五の年で完成と天井高くまで覆う予定であった。しかし、数多物銀河連合の襲来、現場監督との口論、住民の度重なる要望への応答、資金面問題などで予定より三の倍数完成が遅れた。着工から十八の年と五の月を以てようやく市全体を鉄の要塞で覆う事に成功した。当初の目標だった天井を覆う計画は実現不可能と判断され、市の周囲を覆うのみとなった。反対に出入口付近の門は軽量化要望に応えて木の門が採用された。その結果は非要塞化市町村同様、自由な出入りが可能になるという得した部分も見られた。
 そんな歴史ある百年以上経つ木の門から外側で待つ一名の雄が居た。彼はこれからやってくる部下達を待つ。
(一番早いのはブルルンだろ、あいつは規則正しい雄だか、次は多分--)
 待ち伏せする雄トカッガ・ヒラリーの方に近付く二名ほどの影が近付く--どうやら飛んで現われた。
「お前達が先、イン歌は規則正しいんだ」
 イン歌はコケ真の襟首を掴みながらトカッガの正面に降り立つ。
「死ぬのはいやっす! おらはかみさんの所に戻りたいよっそ!」
「そのおくさんがあんたのえんせいをおうえんしてるんだよ。わたしめがつれていかなければ、けっきんさせるところだったよ」
「やっぱ辞めようよっさ! おらは死にたくないよっさ!」
「それは無理な話、一度決めたら取り消しは効かな、諦めて防波堤奪還に協力し」
 そんなっす--早くも涙を流すコケ真。
 コケ真が泣き騒いでいる間に煙をまき散らして突進する一つの巨体が門前で急停止する!
「げほごほ、いのししぞくなんだから、けむりをまいてあらあわれないでくれる!」
「そうはいくかアア! 今日は予定の二分ほど遅刻したはずダダ! 急ぐのが当たり前だろオオ!」
「ブルルン、出発は十の時だ、集合が九の時なだけだ。
 ゆっくり行けば良かったのだ」
「無能が偉そうにするナナ。俺は元国家神武軍者ダダ。少しでも遅れると上官に扱かれるんでなアア」
「そうゆう過去があったんだっせ。知らなかっし」
「三名は予想通り、問題は二名。
 一名は多分寝坊だろうけ、もう一名は確実に--」
 その予想に反して二名一緒に第二東門へと向かう影が現われた--蘇我カマ汰と佐藤パト恵が自分調子で向かってゆく姿だ。
「後ろ向きな考えはやるべきじゃない、今日という今日は前向きに行こう」
「遅れて御免ス。お日様の光を見誤っちまってよおス」
「私はまあ酒を持っていーいか悩んーでいたー所。べー、別に酒はあんまりー飲んでないーよ、本ー当に!」
「しゅつじんのときにさけをのむなさとうさん!」
(案外こいつらは予想に反してやろうとしている、問題は今日までに防波堤に到着出来るか)
 十の時になると六名は石川麻呂の森へと歩を進める。

 午後零時七分十三秒。
 場所は石川麻呂の森。中心部。石川麻呂の森には生命の開拓しきれない場所が未だに多く、中心部もまたその内の一つだ。
 トカッガ達は中心部で地盤が緩やかな場所に来ていた。ここで昼食を取る。
(もろこしだけで空腹を和らげられるとは思え、いずれまた腹を空かす。
 にしても事故が少ないと思われる場所なのに頭に響く碌でもない感じは何、長居をすると皆に迷惑をかけるな。
 その前にさっさと--)
「ここに何か出るれっしいいいい! おらは先に帰れっさ!」
「かえらすとおもったか!」
 快くない感覚に思わず逃げ出そうとするコケ真の襟首を掴んで空中に浮かす事で脱走を阻止するイン歌。彼も影響を受けて少し目眩を起こしていた。
「無能班長さンン。そろそろ飯を切り上げる頃だと思うがなアア」
「そうだ、ここは案外俺達には快くない場所だ、おかしくなる前に出発しよ」
「そうしてくれス。目が回るス。こんな所にいたら銀河連合が狙いを付けてくれえス」
「呂ー律回らなーいね。酒飲んーでもいないのにここは酒飲みー状態にすーるんだね。私はそーんなに感じないーけどね」
 中心部から発せられる磁気嵐のような物で神経系の調子を狂わされながらも六名は銀河連合の襲来を警戒しながら復興赤兄村方面へと進んでゆく。
(吐きそ、だが堪えないと、堪えて赤兄村で休憩を取らせないといけ)

 午後一時十五分七秒。
 場所は石川麻呂の森北出入口赤兄村方面。出入口から赤兄村までに何もなくただ真っ直ぐ村へと進める場所。
「ふうう、外は何だか気持ちいいさっす!」
「ぎんがれんごうは……だいじょうぶ、かな?」
「心配ならー私も見ー回るけーど?」
「パト恵よオオ。お前さんは切り込み役に徹しロロ! 点呼の時に配置を知らされたろうにイイ」
「そうーだった? 忘ーれたわ、酒飲んでたかーら」
「まだ酒飲んでるよこの姉さんス。水みたいに飲まないでくれるかス? 支障きたしたらどうすんのですかス?」
「あーら忘れーた? 酒を飲めばー強くなーるのよ、私ー」
「迷信はいいだ、そろそろ赤兄村に入る」
 六名は順調な足取りで赤兄村に入ってゆく。
(ここは四の年より前に俺が任務に失敗して部下全員を死なせた場所。
 その後別の組が村を奪還した、それからここは復興作業で大忙しってわけ。
 ただ--)

 午後二時五十分八秒。
 場所は復興赤兄村中央地区。銀河連合真正細菌型による土壌の浄化はまだ完了せず未だに快くない匂いが充満する。
 そんな思い出の場所でトカッガは黙祷を続ける。
(今だけでいい、今だけ俺に力を貸せ部下共、俺は今までお前ら四名だけでなくおよそ二十名もの部下を死なせ。
 そんな俺がどうしてここまで生きてきた、兄の為だ、兄トカーゲンに救われた命を根治まで大切にしてきたからここまで生きてこられ。
 今度は俺があいつらを救う番、あいつらもまた俺と同じ、俺とは角度は異なれど仲間を死なせた罪、酒に逃げた罪、家族を死なせた罪、逃げてきた罪、そして傍観し続けた罪で苦しんで。
 俺はあいつらの苦しみを全て受け入れて今度こそ汚名を返し上げる所存。
 だからどうか力を貸せ、四名)
 ゆっくり目を開くと各地区で待機した部下達を呼び出し、出発を開始……する前に--
「イン歌、ここで復興作業をする隊長にこれを出してくれない」
「はあ、はんちょうのめいれいとあらばしかたないね」

 午後四時一分七秒。
 場所は赤兄森。石川麻呂の森と比べて三分の一ほど小さい面積でありながらも複雑な地形により身長に進まざるおえない場所。
 五名の元に手紙を送りつけてきたイン歌が追いついた!
「そがいんかただいまもどりました!」
「随分遅かったじゃないかス。国家神武軍者は円滑な行動が出来なくて困るなス」
「もうしわけありませんはんちょう!」
「別にいい、赤兄森は予想以上に進みづらい地形だから遅れるのを想定してあそこの隊長に緊急時の手紙を出したまで。
 上手くゆくといい」
「ところで何をだっすか?」
「それだけは教える訳にはいかな」
「班長ーも秘密主ー義だね」

 午後八時九分十三秒。
 場所は防波堤第三門前。そこは赤兄森東出入口から直角に真っ直ぐ進んだ所にある。
 ヒラリー班は目的の場所に到着。そして--
「食事を済ませた後、これより任務を開始す」

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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