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一兆年の夜 第三十五話 蜥蜴の尻尾(二)

 ICイマジナリーセンチュリー九十七年三月十四日午後十時二分七秒。

 場所は北蘇我大陸石川麻呂地方馬子市第三東地区二番地。三番目に大きな一階
建ての居酒屋。
 歴史上初の居酒屋。店名は『大人の隠れ家』。創業者は蘇我パタ音。創業から今年で
四十年目。今も現実逃避するために酒に溺れる大人が集まる。
「母さ、酒をお願いするウ」
 齢二十七にして七の月と十二日目になるタゴラス蜥蜴族の青年トカッガ・ヒラリーも
またその一名だ。
「トカッガちゃんやわ。これで十杯目だよの。脳みそが機能出来なくなって死んだら
どうすんよの?」
 齢三十七にして二の月と五日目になる蘇我熊猫族の熟女にして雌主人蘇我パタ香
は万遍なく客を心配するようにトカッガを扱う。
「いいだろ、お金が入ってくるんだか」
「そうゆう問題ですやわ! お客さんを死なせたら店全体の存続が危うくなるよの!
 そうなれば折角心が平穏じゃない者を助ける為に店を創業した先代パタ音お祖母さん
に申し訳つかなくなるよの!」
「損得勘定のない母さんなこ、少しは俺みたいに酒の水滴一つ分でも掬い上げる根性
を見せたらどうあん」
「五月蠅いゾゾ、無能の癖にイイ!」
 齢三十一にして八の月になったばかりのエピクロ猪族の中年は顔を真っ赤にする
くらい酔い潰れながらトカッガに突っかかる。
「こらブルルンの小僧やわ! 突っかから--」
「ほっといていいよ母さ、相手をするだけ労力の垂れ流しだ」
「ああ、何て言ったんだ無能ウウ?」
 トカッガは無視する。ブルルンと呼ばれる酔っ払いはもう少し突っかかろうと考えたが
酒の方を優先させた為にこれ以上の争いは起こらなかった。
「ブルンデッド兄貴の気持ちは少し考えるんだひっくス。あの方も何だかんだいって
家族がみんな銀河連合に殺されて何かに当たりたい気分なんだようっくス」
 齢二十六にして二十八日目になる蘇我蟷螂族の青年は呂律が回らない状態で
あってもブルルンの気持ちを代弁する。
「そうゆうお前だって多くの同僚の死から逃れたくて呂律が回らな」
「言うなス。某の気分がひっくそれを許さないス」
「勝手な雄だーねえ兄さんーやい。いくら蘇ー我の大地で産ーまれたかーらってそれはー
ないでしょう」
 齢三十三にして六の月と六日目になるキュプロ犬族の熟女は七杯目に入っても平気
な表情で皆の前で色気づく。
「まだ飲めるのかス。ひっく某には無理な量だようぃっくス」
「酒は水みーたいに飲ーめば酔わなーいわよ」
「その理屈は違う気がす、そうだよなあ母さ」
「そうやわ? 私にとっては普通の気がするやわ」
「やめとけっし! 豪傑な雌ほどわいラオスの常識が通用せって!」
 齢二十九にして十一の月と十八日目になる蘇我鶏族の青年は下戸な身である故に
絞りたての馬子蜜柑果汁樽一杯分飲んで酒を飲んだ気分でいた。
「明日下痢を起こすなよス、ひっくコケ真ス」
「お前もだっず、カマ汰っし」
 腰砕け騒ぎは六の時から始まり、現在も客は酔っぱらっては大声を出したり、突然
泣き出す者がいたり、訳の分からないまま笑い出す者もいれば、口喧嘩を起こす者も
いる。ただ言える事は誰一名とて殴り合いに発展するほど酔っぱらわないという点だ。
この点に関しては遠すぎる過去だから出来る事なのかも知れない。
(腰砕けをしたまま俺は毎の日を過ご、あの逃走劇以来俺はずっと前線から退かれ。
 無理もな、六度も部下を全て死なせた雄を誰が次の組に入れるとい、当然の処置、
あれ以来四の年になったか、俺はずっと各地区の掃除だけを任され、退屈だが辛い
仕事だ。
 はあ、でもそれがいいか、俺を出して部下を死なせるよりかは--)
 いつまでも酒を飲んで逃げられるほどトカッガの人生も甘いモノではなかった!
「礼を失するっぞ! ここにトカッガ・ヒラリーはいるがん?」
 齢三十二と二十三日目になる応神鰐族の中年が突然入口から現われた!
「な、何でしょう支部長ど」
「喜べトカッガがん! 君に四の年ぶりに前線復帰してもらっぞん!」
「は、酒に酔ってて何か幻を聞いたよう」
「もう一度言うっぞ! 前線に復帰してもらうがん!
 勿論今回は初めてとなる班を率いてもらうぞん!」
 何度も質問したが支部長ヤマビコノアリゲルダから返ってきた言葉は同じ。
(俺が前線復帰、しかも組を飛び越えて班を。
 班、何だそ、俺に相応しいの、俺が生命の上に立つの。
 そもそ、出来るの、俺に、生命の上に立って部下を死なせずに任務を果たせ。
 こんなの無謀だ)
 喜びよりも寧ろ安心出来ない部分が多数を占めていた。トカッガは支部長の用事を
納得出来ずにそのまま宿に戻り眠りに就いた。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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