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一兆年の夜 第三十五話 蜥蜴の尻尾

 ICイマジナリーセンチュリー九十六年三月十四日午前九時零分三十七秒。

 場所は北蘇我大陸石川麻呂地方廃赤兄あかえ村中央地区。
 真鍋傭兵団馬子支部トカーゲン組は赤兄村奪還の任務を果たすべく五名の精鋭で
村にいる銀河連合を倒してゆく。ところが--
「はあはあ、何て強さなん」
 齢二十三にして七の月と十二日目になるタゴラス蜥蜴族の青年トカッガ・ヒラリーは
村にいる銀河連合鍬形型によって部下四名が死んだ。残ったトカッガは敗走への道筋
を考える。
「俺はまだ死ぬ訳にはいかな」
 鍬形型に背を向けながら彼は南地区出口へと逃走すべく足を踏み入れようとしたが、
目の前にもう一体の銀河連合が立ちはだかる!
(土竜型だ、こんな時にお前ミタイナのが出てくん、馬なのか鹿なの)
 トカッガは右横に匍匐前進しながら追ってくる二体から必死で逃げる!
 建物と建物の隙間、井戸から井戸へと抜け、或は建物の屋上から建物の屋上に
飛び込む事さえする!
 だが、二体は持ち前の巧みさでトカッガを追い詰めてゆき、とうとう南出口を目前に
建物間に挟まるように囲まれた!
(俺達生命が銀河連合みたいな考えなんて思いつけ、結局俺は後に続く者の為に死ぬ
運命な)
 トカッガには大きな心の傷があった。それは『無能組長』という劣名。これまで部下に
なった者達は彼を除きことごとく全て土に帰ってゆく。今回の任務でもそうであった。
 組は途中まで何事もなく順調に進んでも最大の山場で強力な銀河連合によって部下
全員を死なせる。トカッガにとって今回で六度目。
(何もかも俺が無能だからいけな、俺が有能なら部下の一名でも生き残るの。
 今回だってそう、俺の無能さで部下を踏み台にし、俺はまた生き残るの。
 でも--)
 考える暇もなく二体の銀河連合は空と地中からトカッガを挟み撃ちした!
 トカッガは死んだのか鍬形型は彼の尻尾を咥えながら満足げに中央地区に帰って
ゆく。一方の土竜型もまた尻尾の一部を咥えながら地中深くに帰る。
 けれどもトカッガの命は尽きていなかった
(い、いなくなっ、ならこのまま俺は馬子市に戻ってや)
 トカッガには罪の意識はあっても自ら命を差し出す心意気は持ち合わせていなかった。
彼の人生観は常に生への執着心から成り立っていた!
(いくら他者を死なせた罪が重くても死んでいい命は認めな、俺は後二続く者達の為に
死んでなるもの、俺を助けてくれたトカーゲン兄さんの分も生きな)
 彼の兄は五の年より前にエウク山で行方不明……正確には銀河連合に食われた
登山家トカーゲン・ヒラリー。元々は登山家になるはずだったトカッガはエウク山に挑戦
しようとしたところをトカーゲンに止められた。トカッガは親の薦めで軍者になる予定で
あった。ところがトカッガは兄トカーゲンに憧れていた。その為なのか彼は両親に認めら
れたくて何度も無謀な登山に挑戦しては両親と兄トカーゲンに叱られ続けた。
 そしてエウク山挑戦を控えた前の日にトカーゲンは弟を守る為に内緒で真鍋傭兵団に
無理矢理入隊させた。自慢の蜥蜴の尻尾切りで脱走しようとしたが当時引き抜きに来た
者はラテス島大樹型銀河連合を倒した英雄の一名ヤマビコノアリゲルダであった。
よって得意の尻尾切りも空しく彼は連行された。
 そして二度とトカーゲンとの再会が断たれた……。
(当時は兄に怒りを見せ、でも兄がアリゲルダに頼んでいなかったら俺はあの山で
銀河連合の腹だ、悔し。
 俺自身が助けられる立場であるという現実)
 トカーゲンは面を上げきった状態で馬子市へと戻っていった。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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