FC2ブログ

一兆年の夜 第三十四話 袋の鼠(六)

 場所は十字架に磔された人族男性像のある部屋。神と他二つに祈りを捧げていたと思われる。成人体型縦三十、横十五、高さ二十五。
 四名は部屋に置かれている神々と成人体型十くらいある縄を使って窓の一つを破らなければならない。窓までの高さは二十。十字架は成人体型六の所にある。そこに登るのは鼠族の誰もが容易い事であった。
 サムソンとチュンナは縄を引っかける及び近付いて祭壇の上にあった厚紙の本で窓硝子を破る係り。一方のフランとチュミシタは銀河連合が来るのに備えて扉または祭壇付近で待機。
(わいとチュンちゃんが登り縄を引っかけ部分に上手く入れないと良ちゅないぜ。にしても縄が短ちゅぎる。仮に引っかけても足を離せば宙に舞うからな。どうちゅ--)
「何ちゅてるんだよ! 早くしないと銀河連合が来ちゃうよ!」
「ええ、自信ないならわたいが投げちゅもいいのよ。どうちゅるの?」
「こんなこちゅで雌の子に頼ってはボスに叱られるよ! わい自身でやってやちゅさ!」
「全くこれだから雄といちゅ生き物は」
「でも頼もしい生き物よ。何たって約束は必ず守る雄ほど頼もちゅいって言うらしいわ」
「姐御。多分それは何か異なちゅ気が--」
「腰砕けはそれくらいにちゅよう。
 それじゃあ行くちゅ!」
 十字架の頂点からサムソンは思いっきり縄を放った--ご都合な事にその縄はギリギリの所で引っかける事に成功した!
 だが、放った勢いでサムソンは後方に倒れようとしていた。すぐさまチュンナは彼が落ちないように十字架の左側から支えようとするが--
「無理ちゅるな、チュンちゃん!」
「これだから雄といちゅ生き物は田中さん以外は有り難くないんだから!」
「こんな時でもチュウ太郎の名前を出ちゅか!」
「あなたの気持ちはとっくの昔に気付いてたわよ……ってわわ!」
「二名とも危う……わわ!」
 間一髪の所でチュミシタが支えた事により縄を離す事も十字架の上から真っ逆さまに落下する事も防げた。
「あ、危なかっちゅよ。チュンちゃんとチュミシタがいなかっちゅら今頃は--」
「ごめんチューバッハ君。罪深いこちゅ言って」
「気にしないよ。いやこんなことを気にちゅたらチュウ太郎に顔面を蹴られていたよ!」
「あはは、多分ちゅるわね!」
「あらあら二名ともお熱い様子ね」
「どうでもいいけちゅ、さっさと体勢を整えてくれない? 重いよ」
 言われた通り体勢を整えた二名は早速縄をよじ登ってゆく。
「姐御もさっさと登ってきて下さい! でないとオラはいつまでも縄を持ったままで右前足がきちゅいよ!」
「わかっちゅわ、今行くから!」
 フランは軽快に十字架の頂点に登り切り、チュミシタの両肩を掴む--彼はゆっくりと縄をよじ登ってゆく。
 すると縄は支える物が無くなり中央に向かって揺れ始める。その頃にはサムソンとチュンナは窓硝子の側まで到達。すぐさま支えが十分でない縄に代わり、サムソンが支えとなる。残った縄はサムソンの服袖を掴んだチュンナが腰回りに巻いてゆく。
「大丈夫か? いくら懐に詰め込んだとはいえ厚ちゅうな本が巻くのを阻んでいるだろうに」
「平気よ。それに巻けば巻くほど二名をわたい達の近くまで寄せて行くんだから」
「もうチュン姉の尻に近付きまちゅたぞ!」
「チュミシタ? 後でどうなるか覚えておいちゅね?」
「あらあら空気が読めない雄だちゅね、チュミシタ君は」
「何てことだよ! オラは正直に言っただけなのに--」
「長話はこのくらいにしろ! もう腰に巻き終えちゅよな」
「ええ、二名分じゃあ少し重いかな? だからこれあげちゅね!」
 チュンナはゆっくりと本をサムソンに渡す。右前足で握ったサムソンは--
「硝子の神々の涙だ! 出来る限り刺さらないでおちゅれよ!」
 硝子の破片を覚悟しながらサムソンは勢いよく窓硝子に厚紙で出来た本をぶつける--窓硝子は四方ないし八方に飛び落ちてゆく!
「ヒイイイイ!」
「奇跡ってあちゅのね。服を引っかけちゅけど皮膚には届かなかったみたいね」
「硝子が落ちゅて行くわ。どんなに煌びやかな物も破れば雨のように憐れにお……え?」
「どうしたのチュンナさ……あ……れ?」
「あのお? 何を……うわあああああ!」
 チュミシタが見たフランシチュ・ドヴェルスは胸から下が無かった。生命の最後はこんなにも呆気なく終わる事にチュミシタは怖れに恐れ、叫び声を上げるしかなかった!
「ど、どうし--」
「見るなチュンナ・カテリウォット! もうフランさんはいないんちゅよ!」
「で、でも--」
「うわあああああああああ!」
「いつまで叫んでいちゅんだチュミシタ! わいはもう窓の外まで登ったんだ! さっさとチュンちゃんと共に下を見ないでここまで登ちゅんだ! フランさんの死を無意味にちゅない為にも!」
「で、でも目を逸らせな--」
「わ、わたいももう登っちゅよ! あなたを見ちゅと同時にフランさんを見てしまったわ! で、でも見ちゅてもいいから身体は何とか動かして! で、でないと--」
「あ、あの。銀河連合がオラを食べようとしちゅて迂闊に動けないよ! ど、ど、ど、どちゅればいい?」
 サムソンは腐乱の死体と同時に壁蹴りしながらチュミシタを食らおうとするサーバル型を見る。
(上手いこと引っ張り上げてチュミシタを救えちゅか? でも相手は銀河連合だぞ! フランさんの時ちゅってそうだ。すでに部屋の中に入っちゅるのにすぐに襲撃せちゅ、わいが窓硝子を破り、破片が全て下に落ちゅたのを計らってあんなことを! いつだってわい達生命体の真逆をゆちゅんだよ!)
 サムソンは引っ張るのを躊躇う。
「チューバッハ君! 早くちゅて! そんなに銀河連合が恐いの?」
「銀河連合のこちゅよりもチュミシタを助けるつもりが--」
「肝試ししちゅおきながら途中で怖じ気ちゅかないで! 死んだ彼等の為にも肝試しをここで終えないちゅよ!」
 サムソンはここに来て自分が今までどうしてこんな目に遭っているのかを忘れた。
 彼は……いや彼等は皆エウク山に潜む神隠し事件を口実に肝試しをしに山に登った。その途中、銀河連合らしきモノに気絶させられここに連行された。そう、全ては自分達で撒いた種。
 安心出来ない思いからそんな事を忘れていたサムソン。それを思い出させたのはチュウ太郎との仲を知って思いを打ち開けられないでいた相手からの言葉であった。彼女の名前はチュンナ・カテリウォット。
「聞こえちゅか、チュミシタ!」
「あああ、オラの人生はもう終りちゅああああ--」
「覚悟しちゅるな! じゃあ阿吽の呼吸でいくぞチュンナ!」
「またいつもと異なちゅ呼び方!
 せえ、のお!」
 二名は神頼みで引っ張り上げた--サーバル型はフランの上半身を食らう事しか叶わなかった!
「姐御オオオオオオ!」
 チュミシタは別れの叫びを響かせながら窓の外には行ってゆく!
(また一名死なせちゅしまった。わい達の行く先に出口はないのか? 答えは窓の外を確かめちゅ以外に他はない。
 抜け出せない袋を抜け出ちゅ為にも!)

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR