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一兆年の夜 第四話 どうしておいらなんだ(六)

 ソウスブは快い夢を見ていた。
 それは憧れのウル子との結婚式。その後の身の崩れた騒ぎ。いつも通りソウスブのおっちょこちょいで大惨事。結婚した後も子育て、夫婦ゲンカ、ご近所騒動……何もかも過去、現在、未来と変わらない些細な毎日。熱い毎日。悲しみの毎日。喜びの毎日。そして幸せの毎日。そんな夢を見ることで現在起こった悲劇を紛らわす--はずだったが。
「--きろ!」
(どこんからともんなく声すうるが?)
「--起ーきろ!」
(この間延びえる訛りは……?)
「ソウスブのおーっちょこちょーい! 起ーきろ!」
 ソウスブはやっと声の主に気付いた。同時に目をゆっくりと開けた。
「いでう……やっぱりんラシーだっとか」
 普段は無口なラシーも土壇場になると喋り出す。ソウスブは存在すら忘れていたラシーがどんな者かを思い出した。
「へーへ、無事ーじゃねーの? 拙はとてーも嬉しいーぜ!」
「ラ、ラシー! お、おまんはその後ろ左足をど、ど、どうしとうたんだ!」
 ソウスブはラシーの後ろ左足が欠けていて、そこから赤い物が吹き出ていることに唖然とした。
「こ、こーれが精一杯ーだったよ……あの方々ーはお前じーゃなく、それ以外--つまり拙達ーが目当てだーった、グウグ」
「も、もう喋っっと駄目だう! 今からおいらが向こうからそこを動くないでくんれ!」
 ソウスブは痛みを我慢しながらラシーを手当てするために坂を勢いよく登った--がラシーは登ってきたソウスブの右足を噛みついた!
「いだあ!」
「心ーの痛みがー何だ! 拙の後ろをよく見やがれ!
 見えるはずだ! 得体の知れないモノが!」
 ソウスブには確かに見えた! ソウスブの顔面に右手を振り抜いた人型が今にもラシーを食らおうとしているのを。だが、それでもソウスブは--
「皆を守るんのが親善大使の務むどあああ!」
 ソウスブはかまれた右足を強く踏みつけ、坂を登ろうとした--が彼のおっちょこちょいぶりがここで発揮!
「土壇場でおいらはのんて格好の良くうないんことをおう!」
「いーや、それーでいい! 場ーの雰囲ー気が明ーるくてーソウスブらし--」
 ソウスブは彼の最後を見ることなく、坂道を転げ落ち、自然井戸に落ちた。彼の意識も同時に。
 一回目の意識不明から一の時が過ぎ、二回目では二倍の時が加算され、計三の時が過ぎた。
 日は沈もうとしている時に、自らの腹の虫によってソウスブ・ブルホルは起こされた。
「ここ、は? ああ、おいらのおっちょこちょいは結局誰も守れのかったんだねん」
 ラシーの子は目撃していない。だが、目撃しなくてもソウスブには分かった。彼もブヒンやコケータの処へ旅立った事実は。
「諦めるんわけにんはいっかないん。彼らの死を無駄にすない為にも……でも腹が減ったう。一旦村に、うう、どの面を上げきっとままで帰るうんっだろう、おいらは」
 親善大使として相応しくない。その事実をソウスブの心を傷つけた。だがソウスブは--
「開き直るんっのも手だう! おいらはまだ生きとるう。ここまで生きていて罪造るなおいらだう。帰らずうに行くるなら更に神様への礼を欠こうだけど! 例え皆がおいらの見るう目がきつうくてもおいらがウル子に好これなくなってもおいらは彼らの為にんも生くて償わなっければならないん! うう、おいらは、おいらは三名の命を分こう与えられとうんだよ! ここで諦みたら、うう顔見すできなくううなるうう」
 ソウスブはそう決意した! そして彼は一の時をかけて井戸から抜け出るとそのまま真っ直ぐ村へ向かった!
(お腹の虫さんが今も食べ物を欲すがってるう。でも今は我慢するうんだ。おいらが意地でもあごるから)
 そうして一の時と三十の分。ようやく村に到着した--が。
「な、な、何々なんだ! こ、こ、これはどいうなるんどう!」

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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