FC2ブログ

一兆年の夜 第三十四話 袋の鼠(四)

 入ってきた銀河連合は豹型とカラカル型。どれも彼等の知る世界にはいない種族が基だ。おかしな事に彼等は物を漁らず只見回りをするだけで見回り、自信ありげな表情をしていたのかそんな様子で部屋を出て行った。その間にかかった時間は五分。
 二体が部屋を出てから三の分より後、五名は安堵の表情をしながら姿を現してゆく。
(心臓に良ちゅないよ。いつ発見されるかと思うと心臓の音が高く鳴りちゅぎて気付かれるところだったよ)
「あら? あなたもそんな風に考えちゅたのサムソン君」
 ええっ--とサムソンはフランに自分の心境を読まれた事に驚く!
「姉さんが他者の心を勝手に読むのはいちゅものことでしょ、チューバッハ君?
 私は読ませないようにちゅるのはもうやめてるわよ」
「オラなんかいちゅだって姐御に--」
「それよりもフランシチュ・ドヴェルスには今までの状況を説明したいされたりしなくちゅならない! 実は--」
 鋳汰はフランに穴に落ちた経緯と田中チュウ太郎の末路についておよそ十四の分もの間説明した。ただし、チュウ太郎についてはチュミシタと同様にはぐらす形で説明。これを聞いてフランはチュウ太郎の死を感じとるも出来る限り気高く振る舞う事で表情を示さなかった。
 それから二の分より後に今度はフランが今までの状況を説明した。彼女によると目覚めたのは十字架に張り付く人族らしき長髪男性の像がある煌びやかな硝子窓が特徴の部屋。彼女が想像するに恐らくは式場と思われる。突拍子もない部屋で目覚めた彼女は最初戸惑ったが部屋の中から銀河連合が入ってくるとすぐさま落ち着きを取り戻して部屋から出る事を決意する。入ってきた銀河連合はサーバル型。プロタゴラス大陸に住む種族サーバルを基にしたのは明白。彼女はサーバル型から逃れる為に十字架像を活用。それにより部屋から脱出。だが、同時に物部大陸に住むコドコド族が基である銀河連合に捕縛。後一歩で食べられるところを--
「田中さんが助けてくれたの?」
「ええ。チュウ太郎君は命の恩者。妾はあの時、彼の死を確認出来なかったけど、どちゅやらそのまま逃げ切り、今度は--」
「皆まで話さないでくれフランさん。話の続きをお願いしまちゅ」
「わかっちゅわ。その後は怪しい部屋を見つけては隠れて見ちゅけては隠れて……を繰り返したわ。そうして二十の分より後にこの物置部屋に辿り着いたわ」
「成程な。ということは恐らくサムソン・チューバッハが目覚めた場所と田中チュウ太郎とフランシチュ・ドヴェルスがいた場所は繋がっていちゅ事が証明されたな」
「どうゆうことでちゅか、ボス? どうしてそれだけの情報でわいが目覚めた場所と繋がっていちゅなんて断言出来るのじゃ?」
「相変らずサムソン兄は頭が宜ちゅくないね! いいでしょう、ここはオラが--」
「あったわ! わたいが紙に書いて説明ちゅるわ! 今までの状況は紙に書くと……こちゅでしょ?」
 チュンナは一名一名の話を基に地図を作成。まずサムソンは前と後ろがどこまでも続く所で目覚める。彼は真っ直ぐ進む事を選択して最初の分岐点に当たる。彼は革新的な思考の持ち主故に左を選択。
 それ以降の状況に入る前に張鋳汰から先に説明する。彼が目覚めた場所は分岐した場所。彼は自分を含めて六名の頂点故に現実的な思考の持ち主。選んだのは右だった。それから彼は真っ直ぐ進むものの途中で左曲がり角を進んで今度は一文字の分岐にあたったがそこで左側から僅かではあるがサムソンの叫び声が聞こえたので左を選択。
 そこから先はサムソンと鋳汰の状況に移る。ネコ型の襲撃を受けたサムソンを助けに鋳汰はネコ型よりも早く彼の襟首を掴んで逆方向に逃走するもネコ型に追いつかれそうになる。
 田中チュウ太郎の加勢に入る前にフランシチュ・ドヴェルスの状況から説明する。彼女が目覚めた場所は神々が眠る十字架部屋。そこで彼女はサーバル型の襲撃を受けるものの十字架に眠る神々の力を使って何とか逃げ切り、部屋を脱出。部屋を出るとそこは一文字に分岐していた。だがそこで待ち構えていたコドコド型に捕まった。そんな彼女を助けるべく田中チュウ太郎がコドコド型を襲う! チュウ太郎のお陰で脱出出来た彼女はチュウ太郎に勧められて右方向に逃走! それ以降は各部屋に入っては銀河連合が入ってくると入れ物箱などに隠れて何とか切り抜けてゆく。
 一方の田中チュウ太郎は左方向に逃走したと思われる。そうして難聴である彼は自慢の視力で鋳汰とサムソンが猫型に追いつかれそうなのを目撃。二名を助ける為に単身ネコ型の襟首を噛みつこうとするも……。
 今度は地図作成者であるチュンナ・カテリウォットの状況に移る。彼女が目覚めた場所は行き止まりがあった。行き止まりを背に真っ直ぐ進むと目にしたのは正面に続く道と後ろ側に繋がる左右の道。彼女は名門の家でありながらチュウ太郎の為に出奔した事を考えて右後ろの道を選んだ。だがそこは行き止まりであった。仕方なく戻ろうとしたら鋳汰とサムソンが進むべき方向を決めるのに叫び声と同じ音量で議論しているのを聞く。彼女は銀河連合はまだ来てないと考え、ゆっくりとした足取りで戻ってゆき、彼等が行きたい道は行き止まりである事を告げる。消去法で三名は残る道を進むがいきなり床が開いて三名ともさっきまでいた真正細菌族が活発に動く土の上に落ちていた。
 恐らく同時刻と思われるが、穴に通じる物置部屋に入ったフランは下の方で聞き覚えのある声がしたので部屋中探していたら縄と穴に通じる開閉式の床を発見。
「--んでその後は今の状況に至ちゅ……と」
「あのお、オラの状況も--」
「妾の進行方向としまちゅてはチュウ太郎さんの薦めで右方向に逃走。その後くの字分岐にあたったので右方向に行きまちゅとそこで台所と厠と思われる部屋に入っては隠れちゅといった行動をしながら進みました。そこで行き止まりに当たりましたのでさっきの分岐に引き返して左に進んで個室らしき部屋に入って同様の行動をしながら現在に至ります。蛇の足付けに成ちゅけどいいかしら?」
「となるとサムソン・チューバッハが最初にあたった分岐をもしも反対方向に行っちゅらフランシチュ・ドヴェルスと早々に合流したかも知れない。または次の分岐で反対を行けばこの張鋳汰の背中を見ちゅいただろうか?」
「頭の良くないわいでもこれだけははっきりちゅる! 後は落とし穴の先にあちゅ通路しか道は--」
「いやあ、それなんちゅけど--」
「どうしたのチュミシタ? さっきから言いたいことあちゅのにここぞという時にはっきりしないんだから!」
「礼を失ちゅるなあ! オラはさっきから言おうとちゅてるのにみんなが勝手に--」
「早ちゅ言えヤマカゼノチュミシタ!」
 チュミシタはうつ向きの状態で溜息をつくとすぐに深呼吸をした後こう言う。
「オラが目覚めた時、目の前に行き止まりがあっちゅんだ! 更にいきなりピューマ型に襲われて反対方向に逃げてゆくと直角分岐にあたっちゅよ。真っ直ぐと左の分岐に。んで深く考えないオラは真っ直ぐ進んだら何時の間にか穴に落ちてじたばたしている間にボス達と合流を果たちゅたよ!」
 鋳汰の表情は穏やかではなかった。六名を連行した場所の構図をようやく理解したと同時にどうしようもないところに閉じ込められた事に気付く。フランは鋳汰の表情を見て何かが閃くと同時に自分達の置かれている状況は大変深刻であると自慢の気高さに綻びを露にする。
「どうちゅたの姉さん? いつもの姉さんらしくありまちゅんわ」
「気付かないの、チュンナさん? 先程までの話を纏めれば自ずと解ちゅわよ」
「先程までの話は確か……そんな!」
「チュンちゃん! そんな真っ青になって大丈夫か!」
「大丈夫じゃないわ! チューバッハ君は気付かないの? わたい達が置かれちゅる状況を!」
「ど、どんな状況なのかオラにはさっぱり--」
 サムソンは先程までの話を整理し始めた。自分達が目覚めた場所、進行方向、各部屋……そしてようやく--
(銀河連合を甘く見ちゅんじゃなかったよ! あいつらはいちゅだってオラ達の考えることの真逆を行く存在だってのを!)
「あのお? オラにはさっぱり--」
「単刀直入に言おちゅ! オラ達五名……いや正確には六名は出口無き場所に運ばれたんだよ!
「へえ、そうなんだああ……ってなちゅううう!」
「正に袋の中に入ちゅ鼠。この張鋳汰を含めた六名を脱出不可能な場所に運ぶなんて一体何を考えていちゅ、銀河連合!」
「遊んでいちゅのよ、きっと」
「どうゆう意味でちゅか、姐御!」
「ほら、さっきここに入ってきた二体の銀河連合の行動。それ変に思わなちゅ?」
「言われてみれば変ね。いえそれ以外にも落とし穴にわたい達を入れちゅ時もそうよ。どうして追い打ちをかけちゅにそのまま穴を閉じたの? 銀河連合らちゅくないわ」
 その後もサムソン以外の者が議論をする。サムソンは別の考えが先行する。
(遊ぶ為? 果たして本当にそうなんちゅろうか? 遊ぶ為ならどうちゅてチュウ太郎が死んだ後、議論中に襲いかからない? あの時はチュンちゃんと合流ちゅた分岐地点。なのにネコ型は襲わなかった。いやそれだけじゃないかもちゅれない。
 フランさんは十字架のある部屋から脱出する時、チュウ太郎に助けられちゅよな。その時だってそうだ! あの話は真実だ! 真実であちゅ以上、どうしてわい達を助けちゅまでチュウ太郎は無事でいられた? ネコ型はすぐにチュウ太郎を食べたといちゅのに!
 まさか銀河連合は遊ぶ以外のことが関係すちゅのか? わいの頭ではこれ以上は無理だ! せめて『世界観補正』を研究なさっちゅいた吉良家のような柔軟な発想があった……ら?
 待てよ! ひょっとしたらあの部屋に脱出する鍵があ--)
 思考する間もなく連行した数の分だけ銀河連合が部屋に侵入!

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR