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一兆年の夜 第三十四話 袋の鼠(二)

 頭上から何かが飛び込んできた!
「オワチュウ!」
 サムソンは右に横転しながら回避! そのまま飛び込んだ相手の方に視線を向ける!
(やはり銀河連合でちゅたか! しかもわいら鼠族にとってやりにくい猫型を狩りに出させちゅとはやるなあ!)
 感心したと思ったら猫型は右前足を突き出して突撃! サムソンは先を進む為に左へ避けるが--
「アガチュウ!」
 それは猫型の読み通りだろう--左へ避けるのを見計らって後ろ右足で着地し、右回転しながら尻尾による攻撃でサムソンを吹っ飛ばす!
 サムソンは胸を壁にぶつけ、地面に落ちると痛みのあまり悶える。
(よりによって心臓近辺にぶちゅかるなんて。わいの人生はもう終りでちゅ!)
 猫型は舌なめずりしながらサムソンに近付いてゆく。一の分と経たないうちに前左足で首根っこ目掛けて振り下ろす--
「サムソン・チューバッハアアア!」
「その声は--」
 サムソンが向かおうとしている道から齢二十三にして四日目になるキュプロ鼠族の青年が姿を現す!
 張鋳汰ちゅ--とサムソンは叫び声を上げる! 鋳汰と思われる青年に視線を振り向かせた猫型は思わずサムソンに致命傷を与える攻撃を外した!
(目の前に猫型の足が! ぐちゅ、動けない)
「今助けちゅぞ、サムソン・チューバッハアアア!」
 鋳汰はサムソンに襟首を利き前足である左で掴むと後ろ右前足でサムソンが進みたい方角に身体を向けさせる! 猫型が次の攻撃準備が整った状態よりも早く後ろ左足で大地を斜めに蹴ってその場を離れてゆく!
「ググチュウ、ありがちゅうボス」
「礼を言える状況ちゅ、サムソン・チューバッハアア!」
 確かに--とサムソンは猫型がいる方角に顔を向けるとそこには距離を詰めてゆく猫型の姿があった!
「一名分じゃあさすがに追いちゅかれる! どこまで行っても鼠じゃあ猫に勝ちゅないのか?」
「いや噛むこちゅなら容易さ!」
 その声は田中チュウ太郎--とサムソンは叫ぶ! 猫型の後方より齢二十にして十の月と二十七日目になるタレス鼠族の青年が姿を現す!
「難聴鼠の田中チュウ太郎とは拙者のこちゅだよ!」
 チュウ太郎と名乗る青年は猫型の襟首に掴むと歯を立ててゆく!
「無茶すちゅな田中チュウ太郎! 死んだら--」
 ありがちゅう--チュウ太郎は猫型に噛みつきながら別れの言葉を念じる。猫型は強引にチュウ太郎を引き離すと問答無用で頭を食らった!
 チュウたろおおおおおう--サムソンは悼むように叫んだ!
「田中チュウ太郎。お前に助けられちゅことを忘れない……」
 チュウ太郎の犠牲により二名は猫型が見えなくなるまで逃げ切れた--サムソンが通っていった道を横切って!

 未明。サムソンが目覚めて一の時。
 三方向に分岐する地点。暗視状態になっても壁と床の色は灰。天井は見えない。
 サムソンと鋳汰はどの方向へ進むか議論を交わす。
「ボス! どのみち銀河連合は待ち伏せまちゅ! この際は中央を進みましょう!」
「甘いぞサムソン・チューバッハ! 真っ直ぐな気持ちは銀河連合に利用されちゅ! チュウ太郎が命を賭ちゅて伝えたのをまだわからないのか! この場合は左を目指ちゅべきだろう!」
「わいは頭が良ちゅない! 数学の公式だっちゅ解らない! でも当たり前のこちゅならわかる! それは曲がっちゅことが好きじゃない! 真っ直ぐ進むべきでちゅ!」
「この張鋳汰に知識的でないこちゅを吹き込むか、サムソン・チューバッハ!」
「頭でっかちじゃあ時間の浪費でちゅよ、キュプロ学校主席張鋳汰のボス!」
「主席である張鋳汰の言うことに従ちゅ、サムソン・チューバッハ!」
 二名は十の分もかけて議論を交わす。その光景に堪えかねたように--
「全く鼠族の雄はどいちゅもこいちゅもどうして暑苦ちゅうの?」
「張忠太が行きたい方向からどうしてチュンナ・カテリウォットの声がすちゅ?」
「それはね、ここがもちゅ行き止まりだからよ」
 齢十九にして三の月と十七日目になるルケラオス鼠族の少女チュンナ・カテリウォットは左の方向より姿を現した。
「チュンちゃんも無事だっちゅのか」
「ええ。わたいはこう見えちゅルケラオスの名門カテリウォット家の雌なのよ。肝試しちゅけで死なない命運びなのよ」
「ちゅまないが道中で一名の死亡を確認した。」
「え? 誰なちゅよ」
「わいからは言いにちゅいことだが耳の聞こえない--」
「まさか田中さんが! 本当じゃなちゅよね?」
 チュンナはチュウ太郎の死を受け入れ難い。だが鋳汰はチュウ太郎の思いを代弁すべく--
「田中チュウ太郎は最後まで仲間思いちゅった。それだけは受け入れちゅチュンナ・カテリウォット」
「田中さあアアアあん!」
 チュンナの両眼から溢れんばかりの涙が零れた!
(だよな。チュンちゃんはチュウ太郎が好きちゅもんな。好きだから家を捨ててまでチュウ太郎と付き合おちゅとしたもんな。それに比べてわいはどちゅなんだ!)

 未明。チュンナと合流して十の分より後。
 チュンナからサムソンの進みたい道も行き止まりであることを知った。
「じゃあ右に行くしかなちゅの?」
「そうよチューバッハ。確かにそこにも銀河連合が潜んでいちゅかも知れないわ。
 それでも--」
「皆まで言ちゅなチュンナ・カテリウォット。この張鋳汰を始めとした肝試し家共は危険を承知で進ちゅ腰砕けの集まりだ! それをわかって肝試しに参加しちゅのなら『後退』という二文字は無用。進むぞ!」
「「オオ!」」
 三名は右へと歩を進める。そこに道があるのを信じて……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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