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一兆年の夜 第三十四話 袋の鼠

 未明。
(どうしてわいはこんな事になっちゅまったのじゃ!)
 齢十九にして八の月と八日目になるタゴラス鼠族の少年は目が覚めてすぐにそう思考した。
(わいはこう見えてどこの馬の……いや鼠の骨とも知らん今時の若い者ちゅったのに!
 肝試しに友者五名と仲良くエウク山に登っている最中にこんなことになっちゅまうなんて!)
 思考しながらも少年は部屋がどうゆう構造なのかを触診してゆく--暗くて見えないようだ。
(わいはサムソン・チューバッハとして産まれた身なのに肝試し最中に五名と一緒に眠りこけて気がちゅいたらどこかわからないところに連行されちゅなんて!
 きっと銀河連合のせいでちゅ! 話いらの肝試しを本当の命がけの物にちゅるために!)
 少年サムソンの目はようやく暗視状態になった。そこでわかったのはこの部屋は一本の通路となる。前と後ろのどちらか一方を真っ直ぐ進むと分岐に当たるとサムソンは考えるが--
(銀河連合に連れて行かれた気がちゅるけど多分あいつらは出口を提供してくれないとわいは考える! 勉強を疎かにしてきちゅわいでも確かにわかることはある。
 それは銀河連合のやることはいちゅだってわいらとは逆のことばっかりじゃ!)
 そう考えながらも敢えて前進するサムソン。前進して僅か十の分より後に彼が考えた事はまず空腹をどうするかだ。全ての生命に共通する事の一つは物を食べないと生きていけない。彼は幸い眠り耽る前に無断でエウク山菜を五束くらい貪り食べた為、排泄物を出す事以外ではしばらくの間は空腹に悩まされる事はないと考えたが--
(それでも生命はいちゅれ空腹に負ける! 物を食べることは生命にとって一大事でちゅ! その辺はわいでもよおくわかちゅこと! 問題は--)
 次に思考するのは睡眠。先程まで彼は眠りに耽っている間に連行された事を考えた。今度は次回に眠りにいつ誘われるかを思考する。
 生命にとっては食事と同じように睡眠時間も大切な習慣だ。眠らずに過ごせば判断能力が低下して命を落とす危険が高まる。かといって眠る機を誤ると銀河連合に食べられてしまう。だがサムソンは睡眠が他の重要な物をもっている事に着眼する。それは--
(眠れば多少の空腹だって抑えられちゅ。冬眠を御存知か? わいは知らん。それでもわいは最後の手段として眠りに耽って命を少しでも長引かせちゅことだってやちゅさ!)
 最後に考えるのは便だ。サムソンは自分の頭では高等な事を考えるのは容易くない。それでも生命にとって必要最低限の事なら容易く考えられると彼は考える。
(あちこちゅに小便や糞は良くない。臭うし、衛生上に良くないし、何より神様に叱られちゅ! だからどこでやちゅかだよ。わいは胃腸が強くないから厠に直行すちゅ! 下痢になちゅと痛くて死にそうだよ! ワイにとっちゅ最大の壁は銀河連合よりも内なちゅ物だよ。便だよ!)
 そんなサムソンでも身を弁える所はある。それは出来る限り水の流れる場所で用を済ませるというもの。その為なら彼は半の日あっても便を我慢できる。下痢ならば四半の日くらい。
(便のことはこのくらいにしちゅこう。そろそろ分岐が見えるはちゅ……見えた!)
 待っていたのは二分岐--通常なら生と死の分かれ目であろう。
(どちらか一方に銀河連合が待ち伏せちゅて入ると同時にぱくりっちょ! 頭の良くないわい以外でもそんなことは当たり前に考えちゅ。
 しかしわいサムソン・チューバッハはこう考えちゅね!)
 どちらにも銀河連合は待ち伏せする--ならば生存確率の低そうな道を選ぼう!
 サムソン・チューバッハは楽な道を思考する事を持ち合わせず、茨の道を選んだつもりで左へ進んでいった!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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