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一兆年の夜 第三十三話 蛙の子は蛙(二)

 午後一時二分四秒。
 場所はエウク山標高成人体型六百六十六付近。キュプロ市寄りの道。
 ゆったりと歩くのは齢三十六にして三の月と十二日目になるラエルティオ山椒魚族の中年は生命異動させられた不満を持ちながらも傭兵団の依頼であるエウク山連続失踪事件の調査を行う為に山を登る。
「どうして僕がキュプロ支部に異動されなきゃならない? こう見えてもラテス島の大樹型を倒した希望の一名なのに?」
 山椒魚族独特の訛りのせいで不満そうに感じない喋りでも彼は元々配属していた応神支部が快い環境であったのだろう。その為なのか生命異動場所であるキュプロ支部は知らない顔、環境、掟に挟み撃ちされ、精神的にも参っている様子なのだろう。
「大体見つかるね? 失踪した者が見つかるという保証あるね? 無いに決まってる?
 僕は一刻も早くこんな仕事を済ませてアリゲルダやオタマンの居る応神支部に戻りたいよ? こんな辺鄙な場所は耐えられ……おや? あれは何?」
 傭兵は早速何かを見つけた--それは木と木の間を挟むように置いてある廃材の異質投棄だ。
 傭兵は周りに気を配りながら素早く廃材との距離を自分の胴体一個分開けて覗き込む。
「まさか銀河連合なの? まさっかな?」
 傭兵が廃材に前右足を伸そうとする次の瞬間--背後斜め上より虎型が傭兵の首目掛けて口を大きく開ける!
「僕はこう見えて--」
 傭兵は直前で倒立--後ろ両足蹴りを上前歯に受けた虎型は前方に飛ばされる!
 元の体勢に戻った傭兵は廃材から自分の胴体二個分距離を置いて虎型の出方を窺う。一方の虎型は先程受けた足蹴りで顎が外れ、その痛みであちこちを転がる。それから二の分かけて顎を治すと傭兵が見える距離まで近付く。
「僕と同じ考えね? じゃあ僕から仕掛けよう?」
 訛りのせいでそう感じないが言葉通り傭兵自ら仕掛ける--中指の長さまで廃材に近付くと勢いよく飛び上がり、虎型目掛けて突っ込む!
 虎型は先程傭兵が仕掛けた事を真似るように直前まで惹き付けると素早く左横回転後ろ左足蹴りを仕掛ける! だが、傭兵はそれを前両足と顔をすり寄せる事で威力を半減させる!
 傭兵と虎型は転がりながら相手の急所に噛みつこうと互いの隙を突いて仕掛けるものの互いの高い反応により避け続ける。そうこうするうちに転がる先に成人体型七十もある巨木に勢いよくぶつかる!
 傭兵は背中を強く打ち、先程倒した虎型を離すほどに痛がる--ぶつかる寸前に虎型の頸動脈を噛みついて絶命させた!
「だから異動は好きじゃない? 口元をさっさと洗いたい?
 でも痛い?」
 十四の分経過してようやく痛みが治まり、すぐさま虎型の埋葬を開始しようとしたところ彼は信じ難い光景を目の当たりにする!
「こ? こりゃああなんじゃあああああ?」
 目にしたのはおよそ数千にも上る生命体の浄化しきれない白骨死体の数々であった!

 午後七時一分二秒。
 場所は川上オタ留の家。
 夕飯はオタ奈も含めて一家団欒で食事をしていた。
「ママーオタ! きのこほしいオタ」
「はあいッケロ、オタ一ちゃんッケロ」
 齢七にして二日目になるオタ留の第一子オタ一は幼生期を過ぎて四の年にして五の月と二十二日目になる。
「おかあちゃんオタ! おにいちゃんばっかりいくないオタ。あたちにもオタ!」
「オタ子ちゃんは我が儘だねッケロ」
 オタ一と同日生まれのオタ子は幼生期を過ぎて四の年と五の月と三十日目になる。
「ママアオタ。ぼくはオタ?」
「ぼくもぼくもオタ!」
「わたしもオタ!」
「はいはい頼むから順番に待ってなさいッケロ!」
 川上オタ留夫妻には三十三名の実子がおる。その中には死んだ子は含まれない--死んだ子供の数は十名。
 生きてる子供の齢は最初に紹介した二名を除けば齢六にして十一の月と二十九日目から幼生末期の齢ニニして三の月と四日目まで。彼等は一名たりとも健康状態が良好のまま成長してゆく。
 蛙族は二の年にしておよそ半までオタマジャクシとして過ごす幼生期がある。この時期では言葉を話す事も満足に行かない代わりに水中での生活に適する。やがて言葉を話し始め、尾が目立たなくなる幼体期に入ると徐々に蛙族の姿に成長する。
 そして、成年になる時期--十五の年を過ぎると大人の体つきと共に訛りも蛙族の基本形に成長。
 蛙族は他の種族と異なり、成長段階が三段階に分かれる。故にそれぞれの形態は大きく異なる。
「おたなにいちゃんはたべないのオタ?」
「また食欲が振るわないッケロ? 昼もそうだけどどうしたんだッケロ?」
 オタ留はオタ奈に近付いてゆく。すると--
(ッケロ? 一瞬だがテツのような匂いがするッケロ?)
「どうしたのぱぱオタ?」
「何でもないッケロ! 俺も少々罪深いことを考えていたなッケロ。
 気を取り直して早く晩飯を食べきるぞッケロ!」
「ゆっくり食べなさいッケロ。良く噛まないとオタ奈のように大きな身体にならないわッケロ」
「おたみにいもはやくたべるけどオタ?」
「あらッケロ? ま、まあ気のせいッケロ!」
 オタ留オタ実夫妻は決して子供に良くない視線も思考もしない。夫婦共に『命に上下はない』という思想の元に子供達を育てていった。川上家の幸せはいつまでも続く。誰もそれに反論しなかった。
 彼等一家に近付く山椒魚族の傭兵を除けば……。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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