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一兆年の夜 第三十三話 蛙の子は蛙(零)

 ICイマジナリーセンチュリー九十四年二月百六日午後五時七分三秒。

 場所は西物部大陸ユークリッド地方アデス川。ギャラッ土橋付近。
 そこには蛙型銀河連合の死体が五体並んでいた。訳はこの一帯で真鍋傭兵団
アデス支部とギャラッ土橋を占拠していた銀河連合の一団との戦いが繰り広げられ、
銀河連合側が全滅。傭兵団は現在死体を並べて塩蒔きを始める。銀河連合は清浄
された塩を万遍なく染み込ませないと土壌・水質を枯れさせかねない。塩蒔きは
必ずしも効果的ではない。けれどもそれ以外の方法が確立されない現在でも全生命
体は銀河連合や銀河連合が住み着いた土地に塩蒔きを続ける。
 今日アデス支部から派遣されたのは三名。全員蛙族だ。中には卵を多数抱えた
まま戦闘に参加した者もいた--口の中に入れながら。
「銀河連合をこのまま川に葬ろうかなッケロ? どう思うオタ実ッケロ?」
 齢二十三にして五の月と九日目になるアデス蛙族の青年川上オタ留は齢二十二
にして九の月と六日目になるエウク蛙族の女性にして妻の川上オタ実に聞く。
「その方が彼等も安らかに川で過ごせるわッケロ。出来れば土に被せないといけ
ないわッケロ」
「んッケロ? 蛭戸は何か言いたそうだなッケロ?」
 齢二十二にして三の月と一日目になるメデス蛙族の青年にして二名のように家庭
を持つ王蛭戸は前右足で右から二番目の死体の後ろ足の方角に指を示す。そこ
には二十から三十ほどの卵があった。
「何で気付かなかったッケロ!
 もし孵ってしまったらこの先我々に襲いかねないッケロ!」
 オタ留はすぐに卵を潰そうと川に潜るが--
「待ってッケロ、あなたッケロ!」
 オタ実はオタ留を制止するも既に一個だけ残して全て踏みつぶされた後だった。
「それは大変罪深い行為なのよッケロ! 確かに銀河連合は私達全生命体が
倒さなければいけない存在なのはわかるわッケロ! 彼等のせいで私達の仲間や
先祖が次々と死んでいったのもわかるッケロ! それでも今度生まれてくる子供達を
死なせる意味があるのッケロ!」
「オタ実は何もわかってないッケロ! そうやって助けても銀河連合は恩義すらも
仇で返すような存在だぞッケロ!
 武内蛇族にして世界最高峰の医者であったスネッチを知ってるかッケロ!」
「ええッケロ、知ってるわッケロ」
「あの方の死因が何なのかオタ実はわかるのかッケロ? 銀河連合を助けたが為に
その銀河連合によって食われたのだぞッケロ!」
 銀河連合は恩を仇で返す--スネッチの死を通じて全生命体に広がった。
 オタ実は痛いほどわかっていた。けれども--
「それでも絶えられないわッケロ! その子だけはお願いだから助けてッケロ!」
「助ける切りはこれっぽちも--」
「僕からもお願いしたいッケロ!」
 蛭戸は卵を前両足平に乗せながら咽を通してオタ留に訴えた!
「君の言う事は正しいッケロ! 傭兵である僕達は依頼された事を何としても遂行
するッケロ! それが熟練された傭兵としての資格さッケロ!
 でも僕はそんな傭兵でも子供を抱えるとどうしても情に左右されやすい時期だって
あるんだよッケロ。いくら銀河連合でも産まれる以前の者まで死なせる意味はある
のかッケロ? 僕はそう思わないッケロ」
「蛭戸の言う通りよッケロ! オタ留もどうかその子だけは助けてッケロ!」
 オタ実はオタ留の眼前で土下座をした--蛙族にとっては容易な構えだがオタ実
が行うと話は変わる。
 さすがのオタ留も蛭戸の訴えとオタ実の必死な願いに心が折れる。
「『蛙型全て倒せ』と言う依頼は受けたが『卵まで倒せ』という以来は聞かないッケロ。
いいだろうッケロ! 好きにしろッケロ! ただしそいつが周りを傷つけるような事が
あれば俺自身の足で責任を取るッケロ! いいなッケロ?」
 顔を上げたオタ実の両眼から涙が互いを逃げるように流れゆく!
 ありがとうッケロ、あなたッケロ--という感謝の言葉がその後に続いて。
(助けた以上はこの子は絶対に俺達を食わない存在にしてやるッケロ!
 銀河連合にだって物分かりのいいのが少しでも居たらこんな悲しい戦いを済まない
可能性だって現われるんだッケロ!)
 川上オタ留オタ実夫婦は産まれてくる蛙型銀河連合に名付けた名前はオタ奈
 オタ奈は果たして全生命と同じような存在なのか?
 あれから八の年が過ぎる……。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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