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一兆年の夜 第三十二話 蛇の道は蛇(三)

 午後二時十二分十五秒。
 場所は川内集落中央地区食物庫。立方体にして成人体型千。出入り口は二つで対称的に設置。
 食べ物は保存が利く物に限られ、主に米や小麦粉。それら食べ物は今回の治療でスネッガーが使用する予定だ。
 スネッガーは酋長邸から出ると食物庫に患者を集めるようにシ紋に呼びかけた。
(ここに来て十の分経過エエ。距離がある分エエ、それだけで患者の容態に影響を与えかねないエエ!
 ここに来るまでには皆も応急措置はしているはずだエエ。そこの所は俺達全生命の誇りだからなエエ!)
 考えの主旨は自分も含めて全ての生命は教育しなくとも誰かを助ける為に行動する--銀河連合にない慈悲深い心を生まれつき持つという意味だ。
(だからこそ銀河連合はそれを良からぬ方向に使うエエ! 生命を助ける為ではなく己の望むままになエエ!)
 主旨は銀河連合全ては教育関係無しに誰かを死なせる為に行動する--自分達生命にはない慈悲無き欲望が尽きる事なく心すらも食らうようにという意味。
 スネッガーがあれこれ思考する内に最初の患者がエリフェインの背中に背負われて運び込まれた。
「北地区から患者を一名持ってきたうえ! 種族は羊族でえい!」
「うう、うう--」
 スネッガーは額に米粒二個分の傷を受けた旅者の老年にしっかりと包帯が巻かれているのを確認するとすぐさま包帯を少し開けて額の傷を舌で舐める。
「イタ! な、な、何すルーんですか!」
「じっとするんだエエ! 至急縫合を開始するエエ!」
「縫合ってスネッガーでえい。縫い針はどこに--」
 上下の歯で成人体型二はある熊懐製の糸の先端を軽く噛み締める。そこから彼は傷口目掛けて三十の秒に満たない時間で縫合して見せた--八カ所を糸の尖った箇所で穴を開けるという芸当を駆使しながら!
「イデデ! 余計な傷を増やしイーたんじゃないーイだろうな!」
「もう一度包帯を巻くから身体を動かすなエエ!」
 包帯は二の分かけて丁寧に巻いた--血の付いた包帯から新品で綺麗な包帯に。
「包帯巻く速度だけは普通で良いかうえ?」
「早すぎれば却って治りが遅くなるエエ。遅い方が良いエエ」
 迅速で丁寧に--代々医者の一族であるスネッガーは日頃から早い事と遅い事の両方こそ医者に必要である事を叩き込まれた。齢が二十九になった今でも守り通す。
「包帯を巻かれルーんと自然に痛みが感じなくなってるような?
 いや痛くなーイ! ありがとう先生!」
 老年はスネッガーに礼を言うもスネッガーは--
「礼をするのはまだ早いエエ! どうやら次の患者が来たみたいだエエ!」
「老体に何て過ぎたるん労働をさせるんか!」
 そう言いながら二足歩行で軽々と後ろ両足に怪我を受けた牛族の少年を横抱きで運んだログバーコフ。
 深呼吸するとスネッガーの前にゆっくりと降ろした。
「ぐ、ぐぐう! いでえよう!」
 スネッガーの表情は先程治療した患者の老年相手に見せたものよりも一層頬の皺が寄る。
「ワシよりもまずイー! 特に後ろ右足首が斜めに曲がってルーん! ど、ど、どうすれ--」
「静かにしろエエ! 患者を恐がらせてどうするエエ! 患者にとって肉体よりも精神が大事だエエ! その精神の為にも口を閉じるんだエエ!」
「という訳だようえ。小声になるようにうえ」
「へいーイ……」
 羊族の老年は声調を低くした。
 スネッガーは静かになったのを確認すると少年の後ろ両足がどうゆう状態かを一の分くらい見つめる。
「まだ--」
「静かにうえ」
「いでえう! 助けてっよう!」
「……これより後ろ右足首の固定に入るエエ。爺さんとエリフェインエエ?」
「自分にかうえ?」
「何じゃい。わしに何をし--」
「倉庫にある米袋や棚を何個か持ってきてくれないかエエ? 患者の背中を立たせたいエエ! 牛族や羊族などは固定させるのが困難だエエ。俺一名では時間がかかるエエ。足を貸してくれないかエエ?」
「わしを重労働させおって!」
「わかってえい」
「呼ばれてないーイがワシも先生の足伝いする!」
 三名は言われた通りの事をする--棚を三つ胸以外を挟むように三方向は位置する事で少年の背中を立てた。
 次に米袋三つを少年後ろ右足太腿の下に潜らせる事でやや固定させた。
「いえでうでで!」
 それからスネッガーは触診しながら生の状態を確かめると--
「果物包丁を俺にくれエエ!」
 エリフェインに頼んで受け取った綺麗な果物包丁の柄を噛み締めながら手術を開始!
(時間との勝負だエエ! 骨を正しく処置しないと肉体にも精神にも関わるエエ!
 良し……ここだなエエ!)
 彼は少年の後ろ右足を手術し終えた。時間にして僅か二の分--勿論縫合も含めてである。
「イデエの治らねえっよう!」
「次は後ろ左足の方だなエエ」
 後ろ左足の方は米粒一個ほどの大きさ。包帯を解いた後は予め清めた水で濯いだ後、綺麗な包帯に換えて一の分かけて巻き終える。
「こ、これでいいでえのう。治るう?」
「左後ろ足の方は一の週かければ後は神々に任せれば治るエエ。
 問題は右後ろ足は半の年か早くて三の月かかるエエ。両者の均衡が傾く恐れがあるので傷口が塞がった後は一の月以上掛けて最適化が必要だエエ。
 済まないなエエ、少年エエ!」
「謝らなくてもいいよう。ありが……イデデ!」
 痛がりながらも少年が礼を送ろうとした矢先に--
「大変じゃあ! 意識不明の物を今すぐ助けてくれじぇえ、先生じゃあ!」
 怪我が完治しないラークダムが東地区から重体の患者を運んできた。
「腰砕けをするんな、ジジイ!」
「あんたにジジイ呼ばわりされる覚えは--」
「静かにしろエエ! 爺さんの件は後で叱りつけるエエ!
 それより患者を俺の前に降ろせエエ!」
「ははじゃあ、先生じゃあ!」
 ラークダムは齢七くらいと思われる人族の少女を降ろすとすぐに転がりながら痛がった。
「だから言ったじゃろうん! 腰砕けするんなと!」
「静かにしろエエ!
 これより患者を触診するエエ!」
 スネッガーは少女の全身を身体全体で触れると一旦彼女の頭上近くで思考する。
「だ、大丈夫かなう? イデデ--」
「お喋りするんな! 声の声帯を低くんしろ!」
「ログバーコフの若造もだぞじょお!」
「どっちも口を閉じるんでえい」
「大丈夫かなイー?」
 羊族の老年が小声で言った後すぐにスネッガーは心配蘇生法を開始!
 彼は気道を確保しているかを確認。気道確保がわかるとすぐに蛇式胸骨圧迫で数回行うと今度は唇と唇で触れあいながら空気を送る生命呼吸を数回。繰り返すように蛇式胸骨圧迫と生命呼吸を十の分かける。しかし、患者の意識は戻らない。
「仕方ないエエ。かくなる上は代々一族に伝わる禁忌蘇生法を行うエエ。みんな目を瞑れエエ!」
「どうしてう? 何で--」
「患者の命がかかってるんだエエ! 急げエエ!」
 スネッガーの鬼族に近い気迫に押されてその場にいた全員は両眼を瞑る。だがラークダムは半の分はかからずにすぐ開けたが。その間にスネッガーは信じられないやり方で患者の息を吹き返した!
「なじゃあ、何をしたじゃあ?」
 秘密だよエエ--とスネッガーは顔全体に皺を寄せながら返答。
「確かに禁忌だな。あれは普通の物が真似しちゃいかんのうん」
 ログバーコフだけでなくラークダムも何かに気付いた。
(これで少女は生きられるはずだエエ。
 いや生き返らないと俺は--)
 スネッガーの思考をする暇もなく次の患者が運ばれた。今度は北地区のシーピーが猿族と犬族の青年を背中に担いで現れた。
「先生! この者達を看てもらえルー?」
「今度は二名同時か--」
「先生! 西地区正門で倒れてる闘牛族の夫婦を土竜族の者達と一緒に運んできたにゃ! 看てもらえ--」
「先生!」
「先生! 俺からもたの--」
「順番に並べえい! 一度に二名以上はさすがのスネッガーでも--」
「出来るエエ! 俺なら十名でも二十名でもエエ!
 だがその為には優先順位をこちらで決めるぞエエ!」
 その後も次々と患者が食物庫に運び込まれてゆく。スネッガーはそんな状態でも足を借りなければならない状態以外は全て果物包丁と熊懐製の糸で数の差も感じさせずに次々と治してゆく。勿論包帯はエリフェイン達に任せる。
 そうして十の時が経過。深き夜になる頃にようやく全ての患者の治療は終了。昨日と今日の現在で治療中に死んだ患者は一名として現われなかった。それがわかったスネッガーは眠りに誘われ、意識を深い所に沈めた。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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