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一兆年の夜 第三十二話 蛇の道は蛇(二)

 午後零時一分三十二秒。
 場所は川内集落中央地区酋長邸。二階娯楽室。扉より反対側にある寝床の頭上に開閉式窓が一つだけある。
 この部屋にはスネッガーと正岡シ紋、それに齢四十四にして十の月と十一日目になるキュプロ栗鼠族のログバーコフ・メデリエーコフの三名が居た。
「わしは国家神武武内大陸波多八代地方川内集落担当のログバーコフ・メデリエーコフじゃ!」
「俺は一応放浪医者であるスネッガーだエエ」
「我は真鍋傭兵団の正岡シ紋だい。それじゃあこれより尋問を開始するい」
「事の始まりは南地区にあるん埋葬地に何者かが入ってそこで眠っていた人型をどうゆうん怪しげな方法かは存ぜぬんが甦らせて東地区にいたラークダムを始めとした二名に重傷を負わせた事件。
 この事件の解すん事が可能でない点があるん。それは埋葬地に入ってきた者が何なのかというんことじゃ。
 スネッガーよ。そちならわかるんかの?」
「解りかねますエエ。そいつが銀河連合という可能性はエエ?」
「エリフェインからの報告じゃが銀河連合というん可能性は九割方じゃ」
 九割エエ--スネッガー呟きながらも僅かに自分達生命の誰かが銀河連合を蘇生させた可能性に戦慄を覚えた。
「心配するんじゃない。九割は銀河連合じゃぞ。残り一割でわしら生命体だからとて気に止むん事はないぞ」
「でも可能性はあるのかエエ。その候補に俺が含まれているのかエエ?」
「何言っとるんのじゃ。自らを問い詰めるん事はやるんべきじゃないぞ。確かにお前さんは生粋の医者なのでもしかしたら助けてしまうんやもしれんのうん」
 助けてしまう--スネッガーはその言葉を聞いて目元に皺を寄せた。
「どうしたスネッガーい? まさかと思うがい、お前も父スネッチと同じように銀河連合を助けたのではないだろうない?」
 更に皺が寄る--さすがの二名もスネッガーが思う事がわかった。
「そうんか。どうやらスネッガーも医者の道から外れんようんじゃの」
「何がわかるエエ! 医者という職種がどれほど平等が乗っかるかわかるのかエエ!」
 声を荒げるスネッガー。だがログバーコフは軍者らしく堂々と構えながら口元を動かす。
「そう言ってくるんならそちには国家神武の軍者がわかるんのか? 常に穢れを纏うん職種。神々に面を上げきったままにさせるんような職種の何がわかるんかね?」
「質問を質問で返すなエエ! 俺の方で返答を聞くまで返さないぞエエ!
 もう一度言うエエ! 医者の何がわかるかと聞いてるエエ!」
「わからない。シ紋はわかるんか?」
 シ紋はいきなり自分に話を振ってきた為、羽音を甲高くさせながら両羽をばたつかせた。
「五月蠅い! 老体に響く音を出すんな!」
 一の分経過してようやく落ち着いたシ紋は深呼吸して咽を通して発声する。
「医業い。矢を囲う字の如くあらゆる怪我の元をその場で捕えい、患者を救い出す命職い。我なら頭良さそうな感じでこう答えるない」
「これじゃから傭兵は意味不明な者が多いのじゃ!」
「それでいいだろエエ? 本来の意味は敢えて申さないがそうゆう意見だって俺は受け入れるつもりだエエ。
 爺さんの質問にそろそろ答えようエエ。残念ながら爺さんと同じようにわからないエエ。何故なら軍者と医者はちょうどメエガン・メヒイストが提唱した『貸借対照宇宙論』のように鏡合わせの職種だよエエ。
 一方が生命を死なせる職種ならもう一方は生命を生かす職種エエ。寧ろわかってもらう方が礼儀として宜しくないなエエ」
「成程。確かにそうんじゃな。お互いわかってしまうんなんてあってはならないものじゃ。
 けれどもその答えはちと悲しいと思わないか?」
「もしや『俺達全生命と銀河連合は永遠にわかり合えない』と答えるのかエエ?」
「正解。これほど悲しいものはないのうん。仮に埋葬地に入って人型を蘇生させたのがわしら生命の側だとしたら助けたはずの銀河連合はその恩を感じるん事なくわしらを死なせてゆくん。両者の思想は永遠に一致するん日は来るかの?」
 シ紋は「来ないと思いますい」と口を挟もうとしたが空気の流れを察知して寸での所で口をつぐんだ。
「それでも父はこう答えるでしょうエエ。
 『わかるまで我等は誰彼構わず患者を救ってみせる』とエエ」
「本来は死者は口はない者。じゃがスネッガーは誰よりもスネッチの事を理解するん者じゃ。あやつならそうん言ったじゃろう。
 それが溜まらなくん辛いんじゃろうん、スネッガー?」
 さすがは大樹型に単身乗り込んで生き残った軍者--とスネッガーは心の中でログバーコフの心眼に感服した。
 同時にスネッガーはこう考える。
(この爺さんの前では隠し事は出来ないエエ。本当の事を話すのは好きじゃないエエ。しかしエエ、隠し続ければ尋問が長引くエエ! もう好きなだけ吐露してやろうかエエ!)
 円を描くように胴体をくねらせるとログバーコフの正面に顔を近付けながら--
「実は一の週より前に--」
 窓を勢いよく開ける甲高い音が部屋全体に響いた--そこから齢二十八にして九日目になる武内山羊族の青年が寝床の上に四本足を突っ立てた!
「緊急事態でえい! 東西南北の地区の門から軽傷から重傷を受けた患者がここ川内集落に入ってきたうえ!
 スネッガー先生でえい! 至急どこの地区からでもいいから早く来て下さいうえ!」
 突然の事にスネッガーは一瞬焦ったがすぐに冷静を取り繕う。
「じゃあ中央地区に東西南北から来た患者を集めろエエ! 各地区に散らばっては手遅れになってしまうエエ!
 エリフェインよエエ! そう現地に伝えてきてくれエエ!」
「自分に命令して良いのは酋長とゴーリラーマ殿なんだけでえい。
 けど緊急事態だしやってやろうでえい!」
「余り無茶するない!」
「わかってえい! 行くぜえい!」
 エリフェインは入ってきた窓から外へ飛び降りた--その様子を見ていた三名はすぐさま扉の方に目線を向けて患者を救助しに動き出す!
(全くどこまで俺を医者の道に引きずり込めば気が済むんだよエエ、神様エエ。
 だが不思議と嬉しい気分になれるのは何故だろうエエ? 俺の一族が代々医学に全てを注いだからかエエ? もういいかエエ。
 今は目の前の患者を診てエエ、感じてエエ、身体を動かしてエエ、そして全て助ける気で臨むエエ!)
 『医者は誰彼構わず救え』それは彼自身にも刻み込まれた言葉であった……。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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