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一兆年の夜 第三十二話 蛇の道は蛇

 九月百七日午前十時零分五秒。
 場所は波多八代地方川内集落東地区。二番目に大きな民家。
 放浪医者スネッガーは四日前に銀河連合人型によって重傷を負った齢四十七にして十の月と十四日目になる武内駱駝族のラークダムの診療をしていた。
 人型が投げた銀河連合果物型によって前右足の脛と前左足膝、後ろ右足の踵と後ろ左足の太腿、右脇腹に三カ所に傷を負った。あの時スネッガーが十の分駆けつけるのが遅れていたら命がなかった。それもこれも一カ所の傷を縫合するのに一の分かからないスネッガーのお陰であった。
 一命を取り留めたラークダムが意識を取り戻したのは治療を受けてから二の日より後。スネッガーにより半の年から遅くて一の年まで仕事を行わないよう忠告された。川内プリを栽培する事に残りの余生を注いできた老年にとっては聞きがたいものであった。そんな老年ラークダムを一生懸命に納得のゆくまで説いたのはやはり医者であるスネッガーであった。彼は医者である以前に一生命でもあった--ただ肉体を治すだけでなく精神の治し方も一族代々から伝わる法で授けられた。
「イデデじぇえ、この体はいつになったら治るんかなじゃあ?」
「昨日も説明したでしょうエエ。半の年エエ。それ以上かかる事も覚悟して下さいエエ!」
「はあじゃあ、半の年は長すぎるじゅう。でも先生は命の……いでで命の恩者じゃあ。わしは先生の言う事を信じるじゃあ」
 今ではすっかりスネッガーを信頼しきっていた。
「では検診しますぞエエ。痛いところがあったら隠さずはっきり言って下さいエエ」
 スネッガーは全身を使ってラークダムの頭から頂上にある瘤を回ると今度は瘤から後ろ両足にかけて回った。
「イデデじぇえ! 怪我したところ全て痛いじゃあ!」
「それなら必要最低限の日常生活で動くのに問題ないなエエ」
「あじゃあ、有り難きお言葉ですじゅう! とい--」
「ただしエエ、先程も言ったが農作業に出られるまでには半の年以上かかるエエ。それまで肉体に無茶な運動は避けるようにエエ。俺は爺さんの為ではなく俺の為に医者の誇りをかけるんだエエ! 爺さんがこれを聞かずに勝手な行動されると医者としての誇りが傷つくからなエエ」
 その言葉は本当ではなかった--医者を続ける理由に適当な義務を言っただけであった。
 真実は医者という道から離れたいが血は争えない--傷を負った者を見ると心身共に動き、結局助けられる命を助ける事になる。
(父スネッチだけじゃないエエ! 祖父であるスネッグムもまた俺を苦しめる存在だエエ! あのジジイがおよそ四十七くらいの年より前に医者らしからぬ行動をしなければ俺はここまで苦しまなかったというのにエエ!)
「どうしたのですかじゃあ、先生じゃあ?」
「あっエエ! 済まないエエ。患者の前で腰砕けをしてエエ!」
「いじい、いえいいですじゅう。大事な川内プリの栽培が出来ないけれどもその間に何か別の生き甲斐を見つけないといけないのうじゅう。わしは先生にその事を一の日まで聞かされて学びましたよじょお!
 あの時はとても悔しくて悔しくて死んでも死にきれない思いじゃったよじょお!」
「あの時はきつく言い過ぎたよエエ」
「いえいえお気遣いは結構ですぞじょお!」
 とはいえ心の中では認めない医者の道もどこかで愛している自分が居る事にスネッガーは気付きかけるが--
「スネッガーいるかい!」
 齢三十三にして七の月と二十六日目になるラテス蜻蛉族の中年が玄関の反対側にある窓から入ってきた!
「シ紋の腰砕けじぇえ! あれほど『玄関から入れ』と何ど言えば--」
「話は別でい! 集落担当官からお呼びだい!」
「集落担当官と言えば……国家神武かエエ!」
「わしの話を--」
「誰だったエエ?」
「そうかい、知らないんだねい。キュプロ栗鼠族のログバーコフ・メデリエーコフだよい」
 ラークダムを無視して二名は会話を続ける。
「あの老年なら行くしかないようだなエエ」
「あじゃあ、あのうじゅう。先生--」
「そうだったエエ。今日の診察はこれにて終了だエエ。後は俺の言う事を聞いて無理な運動は控えるようにエエ。
 俺は国家神武から派遣された者と話をしてくるエエ!」
「気を付けるんじゃあ! 中央から来る者は礼を知らん者ばかりじゃからのじょお」
「いやい、傭兵の方が礼儀を知らんと思うが--」
「どっちでもいいだろエエ? 俺も礼を知らん者だからなエエ!」
 彼は感づいていた--三の日より前にゴーリラーマ達が南地区を調査した時、とある埋葬地に何者かが入った形跡に関する件であると。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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