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一兆年の夜 第四話 どうしておいらなんだ(四)

 午前十の時に近づいた。ソウスブら親善大使一行は村の南門から出発しようとしていた。そこには親しい者のみならず、老若男女のお年寄り夫婦、産まれたばかりの赤子を抱える主婦、一人母、主夫。卵を抱える主夫や代わりに暖める子供。ソウスブを慕う多くの子供達まで。親善大使とは何なのか分かっていない者が数多い。けれども分かる者にとっても反応はそれぞれだ。それでも--
(おいらは行かんならう。これはおいらにしかできんことであるう。皆を守る為の精一杯のことじゃっと!)
「何に考えとっけん! そろそろ行くってー親善大使どの!」
 ソウスブはコケッターの言葉に口を歪めるが、言葉を返さず見送る者達に一礼した。
 数分の後、一同は門の向こうへ振り返り、足を進めた。
(父さん、母さん……おいらは二人の処へ向かんます。おいらは今までんの人生、後悔するうことばかんりでしたう)
 ソウスブはストテレス山への道中、思い出を振り返っていた。それは自分の中にある恐怖心と呼ばれるモノを振り払おうと懸命だった。
「恐怖心……覚えておきなぶ! 五年前、プラトー山から生還じた飛遊実兎ひゆうみうが造っだ言葉だぶ。これはな--」
「怖い怖いよおってっでろ?」
「違ぶ! 意味は心の中にあぶ冷えた恐さ。そじて前進が凍り付くような怖れ。得体の知れないモノと出会った感じをそどばまに飛遊実兎という雌が編み出した言葉だぶ。実はわてはこれから初体験するかもしれないぶ」
 途中で話しかけられたせいで思い出を振り返る作業を妨害された。
 だが、ソウスブにとってかえって良かった。
 実は親善大使の目的はストテレス山を登り、得体の知れないモノに身を差し出すこと。
 何故なら得体の知れないモノは村の各地、特にテレス山、ストテレス山、それにプラトー山といった山に登る者達を次々と食らった。テレス村関係者だけでも一場雄吉、葉月御幸、常陸雄一を筆頭に十七の年月で少なくとも千名以上の生命が死亡した。
『得体の知れないモノは生命を食らうことに躊躇いはない。彼らと出会う者達は必ず恐怖心が芽生える。彼らは空から降ってきたモノ達だ。恐怖心という贈り物と共に
(この言葉を言ったのうは今は亡き海洋藤原鮭族の天体研究家、藤原マス太先生だう)
 話を親善大使関連に戻す。テレス村が親善大使制度を始めたのは四の年より前である。当時村一番の美雄子と言われたテレス蟻族である故ダッギ・ジニン。彼は得体の知れないモノの情報を調べていく内にある結論を導き出した。
 それは--
『彼らも我らと同じ生命。ならば我の身を差し出して空腹を抑えて進ぜよう!』
 当然この言葉を聞いた一同は猛反発した。
 けれども彼の気迫に押されたのか、一同は涙を流しながら彼を送った。
「そうだう! それ以降はしばらく彼らも食らうんことなくなったよねん!
 それはダッギさんの命がっきゃの行動が示したん結果だよう! まあさすんがに親善大使が毎年続くなんて思わなかったけどんね! うう……いつまで続くうだろうんこんなの」
 ダッギさんの後も次々と志願する者が現れた。選ばれるのは老い先短い者ばかりかとおもえばソウスブと同年代の者もいて、更には雌まで。
 そのたびに身を捧げた者達を悲しむことを強いられてきた。それを今度こそ終わらせる為にソウスブは--
「おいらの人生を持っとこうな悲しみのん泉は終わらせんと次の世代がまた悲しむを受け継ぐんど!」
「長年の付き合いだからわからっけど、今にしっと思っと……うう」
「泣くのコケッター! おいらと別れん時まで泣くうの堪忍!」
「どぶやら振り切れたみたいだぶ!」
 別れる時は笑顔で別れる--ソウスブは心で誓った。
 そして一行はストテレス山の北入口に到着した。すると--
「ど、ど、ど、どぶやま出迎えがいるみたいだぶ」
「ブ、ヒ、ヒ、ヒン! こ、こ、これってききききうふっしん?」
 一同は得体の知れないモノと初対面した。恐怖心と呼ばれるモノを芽生えることによって。
(感じんとら凍り付くう! 村の皆との思い出を夢ををを、胸にんいいっしなとう)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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