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一兆年の夜 第四話 どうしておいらなんだ(三)

 ソウスブは覚悟を決めた。
 今日という日は人生の総決算である。自分自身の最後を決める日。
(おいらはその為にんもこんな所でおっちょこちょいでいてんたまるか!)
 ただし、今の今までがおっちょこちょいだったことには後悔していた。
「で行こうんか、コケータ、ラシー、ブヒン!」
 彼のお供は全部で三名。そのうちの一名は既に紹介済みだ。
 一匹はテレス犬族の犬丸ラシー。ソウスブの二つの年上で無口だ。
 一頭は大陸藤原豚族の藤原ブヒン。移民出身にして三十の年。一行の中では年長者に当たる。
「後悔すぶなソウスブのあんちゃん。おめぶさんはまだまだ若いぶじゃ」
「ありがんと、ブヒン!
 では……親善大使ソウスブ・ブルホル!
 テレス牛族代表として! テレス村代表として!
 そして神々の代表として長老北条ブル璃に謁見に参る!」
 ブヒンの言葉で肩の力を抜くことが出来たソウスブはゆっくりとした足運びで寺に入った。
 戸をゆっくり開けた--奥の方から齢四十二にして二の月と三日目になる老婆が腰を上げて待ち構えていた。
「よくんぞ来やしいたなソウスブやう」
 老婆はテレス牛族の北条ブル璃。北条ウル子の叔母にあたる。
 ブル璃の人生はソウスブに勝るとも劣らず破天荒である。
「うう、偉大なるんブル璃様とお話が出来るうことを光栄に思いますう。今まんで自分自身のおっちょこちょいなせいでう幾年もブル璃様や神々のうみならんず、村の者達にどれだうけ迷惑をかけたか分からんないものでしてう。こんな自分がブル璃様と謁見できるん資格があるうのかと今日まで思うましたことでございますう」
 それを聞いたブル璃は首を横に振った。そして--
「そなんたがそこうまで思い詰めているうとはのうん。
 けれんどもそれくうらいならんばわしとて同じことよう。十七の年より前にわしは人族の雄と禁断の恋だけではなうわい。その後も初恋の雄が死んだこうとも認めっちゃ、遺族の前で口論になったうこと。
 更には家を飛び出しんて村より南に成人体型十万離れたゼノン村へ行きう、お酒浸りの毎日を送ったこと。三の年まで保護してっちゃ飛遊家から何の通達もせずう失踪したこうと。その後ゼノン村よりん北西に成人体型九万離れたメデス村に行きっちゃまた酒に溺れて周囲と口論の日々。また五の年まで保護してくうた--」
 突然右横に座るお供が口を挟んだ。
「礼を良く思わなくて申し訳ございませんが、そろそろ本題に移るべきかと……」
「おお、そうだっちゃ! ではソウスブやう。本当に自らの人生を投げ打つ気なのかう?」
「はい! そうのつもんりでございまうす!」
「こう言うんのも何じゃうが、今から撤回すっのも手じゃぞう! そなんたは若い!
 むしろ老い先短くうて恥さらしんな人生をう送り続けったわしがゆうくべきもんのじゃが--」
「礼を失うん覚悟で口を挟みとっございますん!
 自分の人生もう恥さらしでござんますう! 自分は度々ブル璃様や他の者のうみならずん、神々にもん迷惑をかけうた所存でありまうす! けがれをう払うんにはもはや人生を投んげ打っち村を救うん以外にないかうと自分は思うます! なのでどうんか自分に行かうせて下さいん!」
 それは皆の前で自ら親善大使になる為に言ったことそのままだ。その言葉を再度聞いたブル璃は本人の意志を尊重して--
「よかろうん、そなんたの覚悟……しかと受け取ったんぞう!
 ただん、これだけは言わせてもらうんぞ!」
「な、なんでしょう・・・・・・かう?」
 突然のことでソウスブは少し困った。
「そなんたは決して穢れてうなど居らんぬ! 外の様子をほんの少うし聞いていたんが、そなんたは皆に担がっらてここにやってきたんじゃろうん?」
 それを聞いてソウスブは焦った。
「あ、あのそれにうはろいろろいろと--」
「惑うことの物でもなうわい! それんは皆に慕われうとる証拠っじゃ!」
「えっ!」
「驚くんでもないわう! 担がれるんことは本来自分をう溺れさせとすまうもんじゃよい。わしが酒を担うで溺れとみたいにのう。
 だが、そなんたは溺れてなどいいない! それは即ちそなんたは自分自身の撒うと種に溺れるんことなくう真っ直ぐん進めるうだけの強い何かを持っということっじゃ。それは皆に癒しんになっとるう事よ!
 なのんで自分に自信を持と! わしが言うといのはそれだけじゃう! おっと少し言う過とて良くなかったのう」
「いえいえ! 有り難きお言葉を頂戴致しました!」
「ではゆくんのだテレス牛族の雄、ソウスブ・ブルホルやう!」
 ソウスブはゆっくりと頭を下げ、戸の前に下がった。また頭を下げて戸をゆっくりと閉めた。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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