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一兆年の夜 第二十九話 大樹の銀河連合 後篇(六)

 午前七時十分十秒。
 場所はラテス島海底火山南南西付近深部一。大樹型銀河連合のちょうど南側。
 根による攻撃が始まったのは午前六時から。それから一の時以上もホエ人は戦う。
 ホエ人は大樹型による複数の根攻撃を全てかみ砕く--真下、真正面、斜め下などあらゆる方角から一斉攻撃を躱さずひたすら受け続けながらも!
 しかし、彼の肉体は限界に近付く。最初は複数の掠り傷で済んだ。その掠り傷は新たに受けた傷と合わさり、徐々に血の出る度合いを増してゆく。
 そして現時刻午前七時十二分二秒。血は大きな赤い羽を伸すように身体の外へと出て行く! このまま羽が広がれば体内から三分の一が流れて死に至る。ホエ人の脳裏に死がよぎる! 死と共に恐怖が体中に広がり、動きが鈍くなる。大樹型は機会を得たかのように恐怖が広がるホエ人に対してより苛烈な根攻撃を仕掛ける!
 ところが--
「恐怖が体内に増シタナラ僕はそれで良イト感じた!
 何故ならモウ世界観補正を想念ノ海まで持ッテユク準備が整ったカラダアア!」
 独り言を吐いていない--それはここから深部零十六段上にいる二名に届く叫び声であった!
 叫び声と共にホエ人は一切の防御をかなぐり捨て、根の発生源に向かって突撃--加速した時に津波を発生させるくらい大きい力を出して! 体中に無数の根が刺さり、傷口は更に開いてもホエ人の動きに『止まる』という三文字は存在しない。猪型の如く止まる事を知らない速度で発生源の間合いに入ると一気に口を限界まで開き、力強く噛みついた!
 根は一斉に動きを止める。大樹型はこれ以上大きくならなくなった。
 発生源を倒したホエ人は上を向いて--
「今助ケル……」
 深部零まで一気に上るとそのまま十六段上まで力の限り飛ぶ!

 午前七時十三分五十一秒。
 場所は大樹型銀河連合。十六段目。
 アリゲルダとサンショウ五は既に全身傷だらけの状態であった。
 アリゲルダの方は自慢の鱗がもはや防御壁になら無いくらい捲れる。
 一方のサンショウ五は熊型との戦いで受けた傷が予想以上に響く--機動力は衰え、枝攻撃を受け続ける!
 それでも二名は傭兵の意地を懸けて戦い、全てへし折った!
(もうすぐだがん。もうすぐ真正細菌族の出番だがん。後少しっがあ、もう少しっだがあ)
 アリゲルダはカマキュロスに託された袋を背負い、一歩ずつ中枢に近付く。
 だが、大樹型は黙る事を知らずか再び無数の枝攻撃を仕掛ける!
(もう限界だがん。後はたの--)
「恐怖が体内に増シタナラ僕はそれで良イト感じた!
 何故ならモウ世界観補正を想念ノ海まで持ッテユク準備が整ったカラダアア!」
 後は頼んだ--そう思考する前に吉良ホエ人の叫びを聞く!
「アリゲルダ? 聞こえたよね? ホエ人さんの声が?」
「まだ生きてやるっぞ!」
 ホエ人の叫びは二名にほんの少しではあるが大きな前進を与えた--通常よりも速い動きで回避をかなぐり捨てた突進をする!
「痛みがどうだっていう? ホエ人さんはもっと痛いんだ?」
「わしらは中枢に向かうんだがああああん!」
 サンショウ五は途中で無数の枝に絡まれて立ち止まる。残ったアリゲルダは傷が増えながらもなお駆け抜ける!
(あちこちが痛いっで! もう限界だがん!)
 悲観的に思考しながらもなお速度は落とさない。寧ろ更に増してゆく!
「見つけたっぞお! わしの役割はここまでっだ! 後はあんた達に任せたあああっが!」
 中枢の巨大な壁は穴という穴をアリゲルダに見せつける。それは即ち--
(入り込む余地がないっぞお! ここまで来てわしは--)
「水先案内は吉良ホエ人が務メル!」
 その叫びと共にホエ人が信じられない力で現われ、中枢に風穴を開ける突進をした!
「ホエ人さんっが!」
 直後に無数の枝がホエ人を串刺しにした!
 彼の人生はそこで止まる。永遠に……。
「あああああっざ、わしはっがあ、わしはっだがん!」
 傭兵の意地が彼を動かす--ホエ人が命に代えてでも切り開いた門にヤマビコノアリゲルダは最後の力を振り絞って袋の中に入れた!
「が、ああ……」
 そこでアリゲルダの意識は暗い洞窟をかけてゆく……。

 午前七時二十分二秒。
 場所は応神諸島北西応神小島。その中央にある小屋。
 糸を紡ぎながら糸井サク巳はラテス島が見える方角を見つめる。
「あれ? 大樹が力なく萎れる。とうとうみんなは倒した? そうか?」
 疑り深いサク巳は突然現われたもう一つの大樹型を見つめた。
「あれも萎れる。そう。連動してる。やったのアリゲルダ?」
 サク巳は直感で実行したのはアリゲルダと推測。複数の足を躍動させながらサク巳は彼等の無事を祈る。
「アリゲルダをはじめ、オタマンも無事。そうやって祈る。私は二名とそれ以外が過去を清算出来るなら必ず生きて戻る。そうやって信じる。私」
 彼女もまた過去に大きな宿題を残した。
 けれども彼女は宿題を済ませるよりも彼女の一族が代々受け継いできたモノをひたすら守り保つ。
「糸巻きは私の生き甲斐。生き甲斐は過去を背負いつつ清算出来る。私の道はそうやって開く。
 でもアリゲルダとオタマンは異なる。彼等は戦い続ける事で過去の清算をし続ける運命。道無き道。それでも二名は進む。過去と向き合いながら過去を忘れない為。
 だから私は信じる。彼等ならどんな危険でも無事生き残る」
 糸井サク巳の推測には根拠はない。だが、真実として表れる。彼女の吐く真実は現実となる。
 一の日より後に……。




 ICイマジナリーセンチュリー九十四年八月百四日午前七時三十五分五十秒。

 第二十九話 大樹の銀河連合 後篇 完

 第三十話 母はそれでも強い に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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