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一兆年の夜 第二十九話 大樹の銀河連合 後篇(零)

 ICイマジナリーセンチュリー九十三年十一月百日午後八時六分。

 場所は応神諸島南東応神小島東地区二番地。その中で一番大きな建物。
 齢十九にして三日目になる応神鰐族の少年が十二組目の腹筋を始めていた。
「百二十八っが、百二十九っど……」
 そこに齢十八にして六の月と十二日目になる応神河馬族の少年が呆れた顔で
現われた。
「また筋肉鍛錬グバア? いい加減に飽きたらどうグバア」
「口が大きいっど! 全くカバンナはどこまで面白い顔付きだっざ。百八十七っじ……」
「口が大きいのは河馬族の伝統グバア! 噛む力ならアリゲルダに負けないグバア!」
 齢十九にして二の月と三日目になるエピクロ蛙族の少年と齢十六にして六の月と
三日目になるエウク蜘蛛族の少女が飛び込むように現われた。
「どうしたグバア? そんなに急いでグバア?」
「じッケロ、実は地震速報を伝えに来たんだッケロ!」
「南南東小島近海で暮らすヒトデナシナマズノカミが明日中に必ず地震が発生」
 それを聞いたアリゲルダとカバンナは慌てて双方とも口が交差するように
ぶつかる!
「いでっでえ! カバンナは口が大きいから好きじゃないがん!」
「お前が言える口グバア! お前の場合は口が長くて世を遮る事ばかりす--」
「おいおいっち、喧嘩は止めとけっち」
 何時の間にか齢二十にして六の月と二十三日目になる仁徳鼬族の青年が齢十七
にして十二日目になるルケラオス蟹族の少年と共に部屋の中に入り込んでいた。
「いつの間に来てたんだッケロ、イタ造先輩とカニシカッケロ!」
「はアリゲルダとカバンナがさ抱き合う時にはこっそりとみ。はあれはさ良い見物み」
「生意気な後輩だっぞ! 真鍋傭兵団で最も好かん雄だなっぞ!」
「ところで本当に来るのかグバア? そうなるとまた津波の被害が--」
「神様の怒りっち、あるいは神様の生理と呼ぶだろうっち?
 わてがいくら学者でも地震の予測だけは無理だっち」
「だから応神鯰族の地震研究家であるナマズノカミさんが深部五以下の所で暮らし、
事あるごとに素早く私たちに伝える」
「たまに外れる場合もあるから油を断てないんだよなッケロ」
「外れたっていいさっぞ! それも良い方向に外れてくれたらわしはそれでも
構わないがん」
 アリゲルダは十三式目の腹筋を始めながら仲間との温かみを考える。
「アリゲルダ? 別れは突然起こる。それは覚悟する?」
「はサク巳ささんみ。は吉でないことはさあまり言うものじゃないですよみ」
「御免なさい。私はいつも悲観的に思考する」
「まあ悲観的になる気持ちもわからないわけじゃないっち。わてだってそうゆう時期は
あったっち!」
「イタ造先輩がそんな時期があったなんてっが!
 生命は見た目で判断できないっがん!」
「お前もそんな感じだろグバア!」
「筋肉鍛練中だっぞ! 数を間違えたら噛むっぞお!」
「やってみろグバア! この応神河馬族のカバンナ・ジョンソンをなめるなグバア!」
「喧嘩すんなッケロ!」
「ははさはみ、は二名は相変わらずでさ安心できるよみ」
(これは走馬灯っが? どうして今更こんな--)

 十一月百日午後十一時五十三分二秒。
 応神諸島全域で震度六弱の地震が発生。範囲はナマズニュウト七とコンマ五。
 大半の建物は瞬く間に崩れ、形状を保つ建物の多くも応神諸島に降りかかる津波
により力尽くで流される。
 半壊した建物から無事に脱出した応神鰐族の少年ヤマビコノアリゲルダは追い
打ちをかけるように崩れかかる建物群に止めを刺すように津波が流すのを目撃。
(ああっず! わしはなんて無力だっぞ! 筋肉鍛錬に夢中で多くの生命を死なせて
しまうなっぞ!)
 後悔しながらもアリゲルダの肉体は自然と生命救助の為に動く--十五の年から
真鍋傭兵団に所属し、数百に上ろうとしていた活動経験が無意識下で反応する。
「わしは真鍋傭兵団応神支部のヤマビコノアリゲルダがん!
 聞こえていたら返事しろっぞ! 今すぐに救助すっぞ!」
「……げるだみ」
 アリゲルダが脱出した建物より北東方向から声が発した。
(この声はっが? あっちだがん!)
 アリゲルダは叫び声が聞こえた北東へと成人体型六十六を九の秒台で駆け抜ける
速度で匍匐前進しながら探索!
「どこにいるっぞ! その訛りは蟹族だなっぞ!
 わしにわかるように何か……ああがあ? 何だっぞ?」
 彼は見てしまった--木の瓦礫が針鼠族のように地面に倒立しながら崩壊した
建物からアリゲルダの後輩にして十四の若さで真鍋傭兵団に入団したルケラオス
蟹族カニシカ・ジッダマラの右鋏がひび割れた状態で助けを乞おうとする姿を!
「カニシカがん? 聞こえるかっが?」
 肝心のカニシカに反応はない。アリゲルダが長い口で挟んでも。
「カニシカは死んだっち。あきら……グブ!」
 アリゲルダの背後にやっとの思いで立つのは一つ年上の先輩傭兵にして
仁徳鼬族の山岡イタ造。彼は津波に流された影響で右肺が潰れ、今にも死にそうで
あった。
「先輩っぞ! 今は間に合うからすぐに--」
「がぶああ! はあはあっち、どんく、ら、っち、はい、たかな……」
 イタ造は樽一杯分の血を吐いた後、仰向けに倒れた。
「先輩っがあ! 腰砕けは止してくださ--」
「諦めようッケロ。先輩を楽にさせてくれッケロ」
 アリゲルダの右横からオタマンとカバンナが現われた。
「オタマンとカバンナは無事かっど!
 あれっが、サク巳さんはっず?」
「俺達は散々探したけどグバア、見つからず……んグバア?」
 助け--止めるような訛り遣いを三名は聞いた!
 先に反応したのは--
「応神諸島一の美雌を死なせてたまるグバア!」
「待てカバンナっが! 先に二名を弔う方から--」
 その先を言おうとするがアリゲルダは津波が迫る音を北北西の方向より聞く!
「無茶だッケロ! そこはサク巳ちゃんの声が聞こえた方角ッケロ!」
 二名の体はそれでも生命救助の為に働く--傭兵としての本能がそうさせるよう
に!
 一方のカバンナは大きな口で木の残骸を次々と砕く! 糸井サク巳を発見すると
すかさず口で挟みながらさっきまでいた方角に投げ飛ばす!
「カバンナさん!」
「美しい子を死なせる雄は良い雄じゃないグバア!」
 飛ばされたサク巳の踏み台になるようにオタマンは滑り込んだ!
「助かったッケロ!」
「ありがとう。でも早くカバンナさんを助け--」
「カバンナああああがあん!」
「俺はこんな所で死ねるグバア!」
 カバンナは成人体型百三十三を十の秒台で押し抜く津波から逃れようと足に力を
込めて走るが--
「わしに掴まれっがん! そうすれば津波の威力を少しでも--」
「俺達は津波の影響が少ない場所に逃げるッケロ!」
 オタマンは救助したサク巳を連れて左端の散乱した木々に隠れた!
 一方のアリゲルダはカバンナの大きな口を長い口で挟もうとするが--
「カバン--」
 時既に遅かった--津波はカバンナ・ジョンソンの五体全てを紙破りの如く呑み
込んだ!
(カバンナの口からっが、御前右足からっぞ、目からっぞ……)
 アリゲルダは鍛え上げた肉体と津波の当たる方角が幸いしたのか呑まれながらも
軽傷で済む。
(カニシカっがあ、イタ造がん、そしてカバンナっどお。
 もうあんな思いはさせな……)
 アリゲルダの見る光景は過去から現在へと移る……。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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