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一兆年の夜 第四話 どうしておいらなんだ(二)

 ソウスブは腹の虫を抑えられなかった。
「お腹の虫さんに食わせんの忘れたう。口に出すほどんだう」
 そこへ羽をばたつかせてやってくる男が声をかけてきた。
「よう親善大使さんや! 相変わらずのオッチョコちょいっぷりだっち」
「うるうさいぞ、コケッター! 昔からおまんは好かん雄だう!」
 彼はテレスにわとり族のコケッター・コケラッタである。ソウスブの幼馴染にして劣友になる。
「まっまっ、親友同士だからこそおらは親善大使一行になっちゃ!」
「劣友の間違いだう! 一行に選ばれたのがおまんじゃなくてウル子だったらよかっとべ……」
 そうこうしているうちに四本足でゆったりさせるように歩く女性が話に割り込んできた。
「相変わらずうね、ソウちゃん!」
「おお、ウル子! おまんにあえてよか--うう」
 思い出したようにお腹の虫が鳴った。
「張り切り過ぎんて朝ご飯食べ忘れんみたうね、ソウちゃん!」
「そうみたうだ、お腹の虫さんに何か食べさせないと……」
「なっさっけねってーの、親善大使さんや!」
「おまんは口を閉じんかう!」
「そう思うて、これあげるうね!」
 女性は服の腹ポケットから殻と皮を剥いだばかりのテレスプリを取り出した。
「これんおいらの大好物テレスプリだう! ありがとうウル子!」
「どういたんしましてねん!」
 ソウスブは早速渡されたテレスプリを豪快に口に運んだ。
 ちなみに女性はテレス牛族の北条ウル子である。ソウスブの幼馴染にして初恋の雌。そして、テレス村の牛族で一番の美雌である。
「うぐ、うまうだ! テレスお売りはさくさく感が良いんだう」
「よかあた……いつものソウちゃんで」
「どしたうんか? どうしてウル子はおいらの方を見て心配なぬんか?」
 ソウスブはウル子の様子がおかしいと感じた。理由は親善大使という役目であることに当の本人は気付いてない。
「心配して当然っけ! 何せ……いやそれはいかっち!」
「何がういたいんだう! コケッターの癖においらを遊んでるの--」
「待ってうソウスブ! コケッター君が言うんには親善大使になるんと言うことんはもう私達は一緒にいらんれなくなるうと思うてかなしんどるとことだけど……ごめんなさいソウスブ」
 ソウスブはようやくウル子の気持ちに気付いた。ソウスブに待ち受ける運命というものを知ってのことなのかそれが心配で仕方がない心持ちと分かった。
(そうか、ウル子はそこまでおいらん事を思って……いや考え過ぎんか)
「まあ大丈夫だう! ウル子やコケッターだけ心配してるわけじゃないんだぞう!
 村中のみんな、それに万物の神々だっておいらの運命を心配しとうんだう!
 こんなことで挫けんたら駄目だう、もっと顔を上げんと見送るのが一番だう!」
 これはソウスブなりに精一杯の励ましだった。
「誰が心配だっち! それにおらは一行だっけ! 送る側だっと」
「やっぱうコケッターはお供にするべきじゃなかうべ!」
「ふふふう、二者共微笑ましいわ」
 三者仲良く会話している所を野次者が集まって会話に割り込んできた。
「オイオイ、ソウスブの旦那じゃないッスか?」
「あなたさはプラトーから来た鼠族のチュウ備さんかう!」
「アラアアン、あたしいいのっこと忘れてなああいかしいいらあん愛おおしのソウスブちゃあん」
「良かったけ、親善大使! 猫族の脚蓋きゃぶたと会えてっと」
「ぎゃあうん! さっさと逃げんなうんどおおお--」
 ソウスブはキャブ宝にっげようと力一杯前右足を踏みつけて旋回するよう逃げた--しかし前方の大きい者にぶつかり横転。
「逃げるとは良いドオきょうだぜ、ソウスブのおねしょ野郎がア!」
「よかなういいい! 前門のベアッ九に後門の脚蓋なんて駄目だうぞう!」
「鶏族のコキータおばちゃんがやってきったー頃には何とクマ族のベアッ九君まっで来るなんてすっごい集まりになったっちね、ソウスブちゃん」
「カカアが来るんじゃないっち、恥ずかしいっち!」
「離せう離せう! おいらはみんなに遊ばんれる為んに親善大使になったんじゃないうぞい!」
 彼は御輿担ぎされるが如く運ばれ、目的地である長老ブル璃が住む寺に運ばれた。
「こんな事されんで参ったわけじゃないうんのに……」

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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