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一兆年の夜 第二十七話 海洋藤原の伝統(四)

 二月六十八日午前一時七分九秒。
 場所は深部零。
 天気は快晴。星空は今日も綺麗に輝く中、ただ一つの大きな流れ星が他を圧倒するように目立つ。
 流れ星の名は『櫛灘彗星』。およそ七十五の年に一回は水の惑星に現われ、全生命体を魅了してきた。全生命達は櫛灘彗星がどこから現われ、どこに向かうのかを常に注目し続けた。
 縦と横の概念があるなら水の惑星や火の惑星、金の惑星も海の惑星、果ては木の惑星も土の惑星だって横に周り続ける。だが、櫛灘彗星だけは縦に周る。しかも土の惑星以上に大きく周り続けるが如く。
 そんな櫛灘彗星に魅了された全生命体の中で研究熱心なとある熟女が大量の卵を生成しながらも櫛灘彗星を観測する。
 彼女の名前は藤原マス太。その十九代目だ。
(綺麗ン。私は研究者以前に雌としての感情が先走るわン。
 これが吉を離す彗星『櫛灘』ン! 死ぬ前に見られて今にも死んで良い気分になれるなんてン。
 でもまだ死ねないン。そこは研究者としても意地を優先するわン。この彗星が見られる頃ン、真正細菌族の方々はどうなるン? 無事でいるかなン? ちゃんと避難したン? 
 私の理論が正しければ種子型は一斉に--)
 突然、マス太の尾ひれに誰かの泡が当たる--それに反応して海中に頭を戻す。サン樹が顔を青白くしていた。
「サン樹! どうしたの--」
「どうしたもこうしたもありません! 不比等村が大変なのよ!」
「まさか銀河連合が現われたの!」
「ええ! しかも深部五から村のみんなに襲いかかってるわ! 危険だから一刻も村から脱出しないといけない!」
 ところがマス太はあろう事か櫛灘彗星の観測を続行する。
「ぶはああット! 観測してる余裕ないでしょット! ぶおおおう早くここから逃げようット! 私達は戦いが出来ないんだから早くット!」
「逃げる気はないン。ブボオ人生に一度見れるか見れないかわからないのよン。この眼で刻まないと論の完成が--」
「ぶぶぶおおそんな暇ないでしょット! 早くしないと私達は銀河連合に食べられるのよット! ぶううおおう研究は諦めてよット!」
「はあぶく藤原マス太を受け継いだ以上はマス次郎の為ン、将来生まれてくる子供達の為にもン、ぶくうぼあ研究を断行するン!」
「頑固すぎるわット! ぶくくうもう勝手にしてット! 私は先に逃げるわット!」
 余りに研究熱心な態度に怒りを覚えたサン樹は海中に戻り、そのまま村の北側を泳いで逃げた!
(頑固ねン。それが藤原マス太よン。それに私は残りが短いなら長い時と同じように日課を続けるン。でないと今までの人生を捨てるようなものだわン。だから私は--)
 またもや尾ひれに泡が当たる--振り向き様に下へ顔を向けると今度はマス次郎とアジオが来た。
「止めても聞かないわ、マス次郎にアジオ」
「お母さんの言うとおりになったよ。櫛灘彗星が現われる日は本当に良くない事が起きるっていうのは!」
「そんな事より村から出るんだ! 今、村では若布型と正体不明の形をした銀河連合を対処すべく村長ら戦える者達が必死の抵抗をしてるがそれにも限界が訪れる!」
「そうだよ! いくら藤原マス太だからって櫛灘彗星の--」
「ちょうど良かったわ。二名とも外の空気に触れよう」
 マス太は二名の制止を無視する形で櫛灘彗星の観測を続行。
「ぶうわはあ腰砕けをっししてる場合か! 銀河連合にった食べられたいか!」
「見てン! ハブククまるで発光するように櫛灘彗星は光を出してるン」
「発光するように光を出すって表現は今一……ってお母さんは何のんびり観測続けるのン!」
「だから藤原マス太だからよン。ブククウこれは私心でも公心でもないわン。海洋藤原鮭族の天体研究一族ン、ばくああ藤原マス太心なのよン」
「勝手っすすぎる! バカボク死ぬ間際であってもっけ研究第一なんてっみ認めるか!」
「藤原マス太心がそうしてるなら僕はこれ以上口を挟まないン。ばあぶ最後までお母さんに付き合うよン」
「ぶくうくマス次郎がそうっい言ってしまうともう自分もっと止められん。自分も最後までっつ付き合う! ぼぼっくうただし緊急時なら……早くもっき緊急時がっお訪れたな!」
 マス太とマス次郎が海の方に視線を向けるとそこには若布型と例の正体不明の銀河連合が迫っていた。
「お母さん。もしかしてこれが種子型?」
「さあ?」
「『さあ』ってそんな他者ごとのように伝えるのは--」
「エラ会話のお喋りはこのくらいにしろ! 自分が盾となるからお前達は安全な場所に避難しろ!」
「私は続行するはずだったけどあのエラ五月蠅いアジオ・カワックが相手なら仕方ないわ。別の場所で観測を続けましょう」
「少しは諦めるという心を持とうよ、お母さん」
 三名は銀河連合が間合いを取る前に北へと逃げてゆく。
(もう少し見たかったわン。櫛灘彗星はこの先二度と見れないもんねン)
 産卵から四の日より前の悲劇の序章だった……。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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