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一兆年の夜 第二十七話 海洋藤原の伝統

 ICイマジナリーセンチュリー八十七年二月六十五日午前八時零分三秒。

 場所は東海洋藤原不比等村深部三。一番大きな洞穴。
 齢三十二にして十の月と九日目になる海洋藤原鮭族の熟女が眠っていた。数百
にも上る石版で山を築きあげながらその下に出来た穴に潜って眠り扱ける。
 数百の石版は一般のアマテラス文字で記され、内容はあらゆる知識が詰まる。
どうやら彼女は学者のようだ。
 書かれた内容の例を挙げるならオッツール・バルケミン著『野菜健康日誌』、物部
ワニ造著『物部刃はこうして作られた』、原案ストルム・ササーキー、キッシャ・
キッシェール著『イマジナリーセンチュリー』、天同読四著『国家神武八年 一年目』。
 彼女は膨大な石版の著作物を読み返しては研究資料の作成を進め、更には日に
一回は天体観測をしながら新たな発見を探し、研究が詰まってくるとまた著作物を
読み返す。不規則ではあるが様々な試みをしながら眠るのは深夜過ぎ。彼女は
いつも睡眠に悩まされる。
 それが彼女の使命。彼女の一族伝統行事なのだ。彼女の一族は古来より学問に
励む。それは趣味ではなく神々を理解する為。神々に感謝の意を表す為。
 彼女の名前は--
「サケ那いる? ああ! 起こさないといけないわ!」
 齢三十一にして九の月と十四日目になる海洋藤原秋刀魚族の熟女はエラ会話で
独り言を表現しながらサケ那と呼ばれる熟女の留守を確認。眠りこけた彼女を見つ
けるなり、泡を眼の部分に吹き付けて起こした。
「ああ? サン樹? 起こさないでよ、眠いし」
「そうはいきませんわ。あなたは後一の時に集会所で講演するんでしょ?」
「講演? 延期して」
「はあ? 勝手すぎるわ! どれだけの者に迷惑がかかるのよ!」
「だって新しい発見がないんだから講演しても意味ない」
「はあ。大変だわね、サケ那も」
「ちなみに私は『サケ那』ではない。一応は一の週より前に母から『藤原マス太』の名
を受け継いだわ。この先も私は『藤原マス太』なのよ。だから『サケ那』と呼ぶのは
今日でお終いにして!」
「『マス太』は雄の名前でしょうに」
 彼女は藤原マス太。襲名前は藤原サケ那だった雌。現在彼女で十九代目。
「気にしない。十九代目も大変なのよね。出産で死んだ母の後をいきなり継いだから
母がどうゆう風に調べ上げてたのかわかんなくて」
「あなたの叔母様も大変ね。雌として生まれた以上は出産だけはどうする事も出来
なくて」
「雄の方が大変だわ。交尾しただけで死んじゃうんだもの」
「ってそんなことは後にして! その……マス太! 出来が良くなくて良いからさっさと
講演しに行きなさい!」
「だからさっき伝えたじゃない。延期よ、延期!」
「いいから早く!」
 サン樹は十九代目マス太の右鰭を噛みながら深部一にある集会まで引っ張る。
「鰭を噛まないでよ。千切れて泳げなくなったら罪深いよ」
「あんたは雄勝りの雌なんだからこれくらい平気でしょ!」
「サン樹だって同じでしょ!」
 なお、十九代目藤原マス太は現在産卵期間に入る。つまり--
(はあン、マス美さんとの出会いがもう少し遅ければン、私だって行き急ぎしないのに
ン。公演を延期すべきだわン。残りの人生を有効活用する為にもン)
 彼女の夫は交尾して三の日より後、衰弱により墓石の下に埋められた。
(子供達を生む前に実績と次期藤原マス太を探さないとン!)
 産卵からまだ一の週より前だった……。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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