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一兆年の夜 第二十六話 海は広いな、大きいな(七)

 三名はそれぞれ報告し合い、三名とも苦悶の表情を隠せない。特にサバ克は伯父の命があと僅かという報告を聞き、涙で視界を阻まれそうだった。
「涙を堪えろ! 雄たる者は一命前の雄の覚悟に涙していいのは隙を見せていい時だけだ! ここはそれに相応しい状況じゃないぞ!」
「それでも伯父さんはたった一名の伯父さんなんですよ! 伯母さんが悲しんだらどうするんですか!」
「サバ香の事か? あやつにはいつだって万が一のことは伝え続けておる。それでもあやつを悲しませるのならお前が生きて慰めればいいだろ?」
「勝手すぎますよ!」
「雄とはいつだって意地を張る為なら勝手をしたがる性よ!」
「格好付けて申し訳ないけど、そろそろ今後についてどうするか決めて下さいよ隊長さん?」
 二名の会話に業を煮やしたのかサバ次が割り込んだ。
「身内だからついつい私心に泳いで申し訳なかった! 今後についてだろ? ここから脱出するぞ!」
「じゃあ早速--」
「待て! 脱出する前に俺に巣くう銀河連合や船内に残った若布型に一泡吹かさねばならない!」
「? 伯父さんは何をするの?」
「船内の圧力を高める」
「まさか船で銀河連合を挟むのか? 一歩間違うとわしらまで挟まる危険があるぞ!」
「やるしかないだろ? 俺にはもう残された時はない!」
「で、でもどうやってやるの? 僕達の持ってる雄略包丁じゃ穴を開けるのは--」
「俺に巣くう銀河連合は脆い壁を示してくれる!」
「まさか信じるのか! 隊長さんともあろう方が銀河連合を!」
「真正細菌族はどうやってここに入ってきたのかを考えれば自然とそう考える。行くぞ、二名とも!」
 サバ吉は二名と共に船の解体作業に取りかかる--残りの命を燃やしても!
(でえわかるのかな? でえ僕達の入れる区域はこことそれ以下の所しかいけないのにそこに穴を開けて挟ませるなんて)

 午後九時三分二十三秒。
 場所は海中部隊倉庫。ここには様々な道具が保管されてある。
「伯父さんはここに穴があるの?」
「単純に必要な道具を取りに来ただけだ」
「何だよ、がっかりしたよ」
「すまな……い!」
「伯父さん!」
「心配するな。まだ、動ける」
「早くしよう! 若布型が来たらこれらの道具もどんな穢れ深く使うか分かったものじゃないぞ!」
 三名はルケラオス製の縄成人体型二千分と海中雄略包丁用の袋十個と海中雄略包丁八個、活性炭入り袋七個を持参して倉庫から急いで出て行く。
(でえ伯父さんも心配だけどホエンラドンさんは今頃どうしてるかな?)

 午後九時二十二分二十二秒。
「ここが脆そうだ!」
 サバ吉は今にも刃が欠けそうな雄略包丁を咥えながら勢いよく刺す--壁は僅かに凹む。
「凹むということはここも真正細菌型の囓った後があるってことか!」
「僅かに凹むだけでは良くない。圧力によって挟むには中ぐらいまで凹ませないと良くない。次だ!」
 サバ吉は他にも囓った後のある壁を探す。
(でえ僅かじゃあ圧力はかからない。でえ伯父さんの命が消える前に一つでも穴を開けないと!)
 サバ吉の視力は徐々にぼやけ出す。それでも全体を見ることで脆そうな壁を見つけるとすかさず刺す!
「中ぐらいか! 急いでここから離れるぞ!」
「え? 何て伝えたんですか、隊長さん?」
「もしかして伯父さんの眼は--」
「いいからここから離れろ!」
 ようやく伝わると瞬きの差ギリギリで三名は見えなくなるほど離れた--すると壁は穴が開くほど変形し、そこから海水が勢いよく押し込んでゆく! 押し込まれた海水は陸上部隊の区域に圧力を掛けてゆく……。

 午後九時五十八分五十九秒。
 サバ吉は脆そうな壁を発見すると次々に海中雄略包丁を刺す。そうして彼は五本物雄略包丁を消費し、現在咥えてるのは六本目になる。
「隊長さん! 何だか上の方から鉄が圧迫するような音がするぞ。もしかすると--」
「もうすぐこの船は沈む。そう……な、れば、あ、ふ、ね--」
「伯父さん!」
「大丈夫だ。船の水位が上がれば比例する形で船が浸かる体積は増す。この船は下から押し上げる海水によって陸上区域と水中区域を分かつ二重構造は伸びきり、やがては--」
 どこかの一部が船中に響く音を出す!
「何だ? 耳が聞こえなくなりそうな強烈な音は!」
「こうなればこの船は海の藻屑となる! 急いで脱出するぞ!」
「船に挟まれたら碌な死に方をしないだろう! わしはそんなの御免被る!」
「僕も同様です!」
 三名は船首方角にある出入り口目指して泳ぐ!
 だが、サバ吉の肉体は限界に近付きつつあった!
「隊長さん! そんな遊泳速度じゃあ間に--」
「お前……らは、いそ、げ」
「伯父さん! そんなのでき--」
 サバ次は捉えた--サバ吉の背後に楕円を描くように高速接近する物体を!
「危ない、隊長さん!」
 サバ次はサバ吉をサバ克の方へ飛ばすと楕円の物体に縦に咥えた雄略包丁を向けて突進!
「サバ次さん!」
 サバ次は物体--銀河連合若布型--を倒す!
「心配するな! わしはそう簡単に死な--」
 それが塚本サバ次最後の伝言となる--隙を見せたところを右横から楕円に突進して斜めに胴体を切断! さらには逆方向より逆斜めに切断!
「サバ次……く、ん」
「ああ、ああ?」
「俺よりも生きられるのに!」
 二体の若布型は四等分したサバ次の死体を包み込むや両目ん玉と背骨を取り出すなりそれを数珠状に繋げた!
「何、がしたい? あんた達は何がしたいんだよ!」
「やめろ……。奴等にエラ会話しても意味はない。怒りをぶつけるのはやめるん、だ。お前はここから--」
「絶対に死なせてやる!」
「腰砕け!」
 サバ克は怒りの余り二体へ特攻を掛けようとするが、サバ吉は先回りして彼を二体から離すように吹っ飛ばした!
「伯父さん!」
「行け! 俺は命を懸けて奴等を倒す! お前は生きて生きて生きるんだ!」
「伯父さん!」
(でえ伯父さあアアアアああん!)
 サバ克は船首方角にある出入り口へと流されてゆく! 彼は徐々に遠くなるサバ吉を見続ける! サバ吉は真正細菌族に刃毀れさせられた雄略包丁を咥えながら今にも包み込もうとする若布型二体に最後の特攻を仕掛けてゆく!
 今際の際はどうなったかは永遠にわからなくなった。ただわかることは若き伝説は永遠に戻らない……。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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