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一兆年の夜 第二十六話 海は広いな、大きいな(六)

 午後七時二十三分二十四秒。
 場所は鯨族区域。壁は鯨族の巨大な音に耐える為に通常の二倍の四重構造と成る。鯨族六名分は入る大きさだ。
 二名が入った時の第一印象は……真っ赤な世界だった!
「骨がでかすぎて何名の鯨族が死んだのかわからない! 気を付けろ、サバ克! 中に銀河連合が潜んでるかも知れ--」
「もう潜んデル。私の体中ニ」
「あなたは?」
 二名が見た生存者は成人体型六に満たない巨大な鯨。彼こそはエピクロ鯨族にして海中部隊隊長ワルシャーワン・ホエンラドン。
「ホエンラドンさんか?」
「エラ会話は必要ナイ。私ハ鯨族。特殊な波を送ル。自分の咽で会話シロ」
「でええ? でえ口で話せるの? でえ本当に話せるの?」
「でえあんたは海中部隊隊長のホエンラドンさんか?」
「そウダ。私の名前はワルシャーワン・ホエンラドン。エピクロ鯨族の偉大ナル雄……のハズダッタがもうそれは過去ノ話」
 ワルシャーワンの身体は無数に囓るモノが湧き出る。その意味するところは--
「でえ銀河連合! でえどこまで穢れ深い奴等だ!」
「でえ刺せないよ! でえ刺すとホエンラドンさんまで」
「刺シテモ無意味だな。銀河連合は細カイ。急所には当タラズそのまま増殖スル」
 それは即ちどう転んでもワルシャーワン・ホエンラドンに待っているのは避けがたい死であった。
「でえ話を変えるぞ! でえホエンラドンさんは知ってるよな? でえ海中部隊長ならここにいる骨がどうなったかを!」
「全ては私に寄生スル真正細菌型が原因。奴等は菌にまで形を変エルことが出来る。そのせいで瞬ク間に仲間達が死んだ」
「でえ真正細菌?」
「でえ真正細菌族はわしらとは異なる系統だ。あいつらは言葉を持たないがわしらを日頃から助ける頼もしい奴等だ!」
「でえそれが銀河連合だと恐ろしいモノになるの?」
「でえああ! でえ土壌が死んでゆくのは今思えばひょっとすると--」
「でえ真正細菌型が原因なの!」
「だとしたら背後に近付く気配はまさか--」
「私が庇ウ! お前らは逃ゲルンダ!」
 ワルシャーワンは二名に近付く微少な銀河連合に食われる覚悟で突進--二名は左に避けた!
「でえこれ以上囓られたらさすがの部隊長さんでも!」
「私のことはイイ! お前らはサッサトここから逃ゲルンダ!」
「でえそんなのできな--」
「まだ未熟のヨウダナ! お前も雄なら私を助ケルことは自身の死期を早メルゾ! さっさと私ヲ見放せ! 例え神様へ申しわけが付カナイ行為だとしてもだ!」
「でえそうゆうことだ! でえ部隊長さんの覚悟の為にもここを出るぞ、でえサバ克!」
「……でえわかりました! でえそれでも僕はホエンラドンさんなら生きて帰ると信じます! でえですので僕はさよならなんて言いません!」
 サバ克はホエンラドンに希望を託した--ホエンラドンもまた希望を託すサバ克に僅かな期待を寄せた。
「お前も生キルンダ! そう言った以上は生きて帰ラナイト私は想念の海に旅立タナイゾ!」
 そう言ったのを最後に口会話は終了した。
「行きます!」
「全力でここから脱出だ!」
 二名は入ってきた出入り口の反対側にある一般海洋種族用の一階に通じる出入り口を水圧を抑えながら速度を上げて泳ぐ!
(でえこの事実を伯父さんに伝えないと!)

 午後八時三十七分二十七秒。
 場所は海洋種族用二階食堂。
 そこには秋山サバ吉と客員組長タケミカグノアララギがいた。
「二名は無事脱出できたか?」
「坊やは二名の底力を信じないのか?」
「そうだな。それにしても死体だらけだ。供養するのは厳しいぞ」
「ああ、そうだ……なな?」
「どうした、アララギ殿?」
 アララギは白目を剥いたまま二度と意識は戻らなくなった。
「さっきから痒いと思ったら……俺もいずれアララギ殿と命運を共にするか?」
「どうゆうことなの、伯父さん?」
「『どうゆうことなの』と伝えたのか? どうしてここにいる、サバ克!」
「それはわしも同じですよ、隊長さん」
 三名は合流した。それはサバ克にとって更なる悲劇の始まりでもあった……。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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