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一兆年の夜 第二十六話 海は広いな、大きいな(五)

 午後六時一分二秒。
 場所は第一空き室。
「ここにはおらんのう」
「でも……骨が散乱してる」
 既に食われた隊員の死体を見てサバ克は目を逸らそうとする。
「逸らそうとしても自然と目は死体の方に向くのじゃ。本当に逸らしたいのなら死体を直に見るのじゃ」
「吐いても良いんですか!」
「水中では嘔吐物を片付けるのは苦労するが、状況は一刻を争う。今の内に吐け!」
「そう伝えられても吐く気にならなくなりました。これって僕の頭が変になってるんですか?」
「老いぼれに比べれば正常じゃ!」
 そうしてサバ克の心を安定させたサバルバは空き室から出て行く--海中雄略包丁を咥えながら隙を見せずに!
(でえお爺さん離れてるなあ。でえ僕はそんなに用心深くなれないよ。でえ咥えたままでも一々分けて行うんだから)
 そう思いながらもサバ克は海中雄略包丁を横に咥えながらゆっくりと無理せずに出て行く。
「そうじゃ。別に老いぼれ達のようになれた捌き方をしなくてもいいのじゃ」
「でも銀河連合が万が一に僕を狙ったらどうしよう」
「その時は老いぼれの全身全霊を掛けて小僧を守りきるぞ」
「でも死んだら良くないよ。僕は死者を見るのは好きじゃない」
「それでも人生に於いて死者を見る機会からは逃れられん。特に海洋種族はその機会が多い」
「良くない機会だよ!」
「まあ死者は穢れを纏うと聞くがの」
「聞いたことないよ、それ」
 二名は下らない会話をしながら心を平常に保つが……。
「何かの気配がする!」
「まさか銀河連合?」
 サバルバは振り返る--そこには右鰭を食いちぎられた鯖族の別隊員。
「助け--」
 隊員は若布型に包み込まれるように食われてゆく。
 遅れて振り返ったサバ克は口と共にエラを動かす。
「銀河連合!」
「口を動かすな! 雄略包丁を手放すぞ!」
 エラ会話に気付いたサバ克は慌てて持っていた海中雄略包丁を強く掴んだ!
「んん? どうやら背後にも銀河連合が来たのう」
 サバ克は同じ方向に周りながら振り返る--サバルバの読み通りだ。
「本当にいる! しかも若布型が……三体?」
「どうやら四体に増やしたのう」
 サバルバの方角に二体。サバ克の方角に二体……訂正して三体。合計五体が二名を食らおうと流れてゆく。
(でえこんなのないよ! でえ若布だからって本当に増えるのはどうかしてるよ! でえどうかしてるのは僕の方かも知れ--)
「老いぼれ達は正常だ! でないと銀河連合に隙を与えるぞ!」
「え、え? ああ、そ、そうだよね。僕達の方が正常だもんね」
 徐々に距離を縮める五体の若布型。サバ克は恐怖心と葛藤する。
(でえ恐い! でええ、でええ、でえ恐い! でえでも恐い自分に打ち勝たなくて何が秋山サバ克だ! でえ『克』とは『克服』って意味でいいだろ! でえ『何かに打ち克つ』という意味だろ! でえ打ち克つぞ!)
 サバ克は無謀な行動に出た--目の前の三体から中央に向かって特攻を仕掛ける!
「腰砕けな事を! それは勇敢とは言わないぞ!」
 サバ克に向かって若布型三体は一斉に包み込もうとする!
(でえな、でえ何だあ! でえええええうあああああ--)
「小僧はやらせんぞ!」
 寸前で後ろに飛ばされたサバ克は水圧で勢いが落ちながらも若布型三体の方へ目を向ける!
「お爺さん?」
 エラ会話はもうサバルバに届かない--中央の一体は倒せたが残り二体に呑み込まれ、全身を貪られてゆく。
 それは水中でもサバ克の耳に届く--紙を引き裂くような快くない現実の音を!
(でえ僕のせいだ! でえ僕が勇敢と無謀を違えたせいだ! でえ僕は……ああ、でえ後ろにも銀河連合が!)
 二体の銀河連合が飛ばされたサバ克を捉えるように近付き覆い被る……その瞬間だった!
「サバ克をやらせるか!」
 サバ次が二体まとめて串刺しした!
「サバ次さん! 来てくれたんだ!」
「ああ、ところ……くそ! サバ音ちゃんに続いて爺さんまで! 許さないぞ、銀河連合!」
 サバ次は勢い付けて引っこ抜くと左下に弧を描くように周りながら勢いを付けてサバルバを食べる二体に向かって突撃!
「良くないよ! 僕みたいにな……らない? 串刺しにしたよ!」
 ちょうどサバルバの骨だけの死体に傷を付けずにサバ次は同様に貫通させた!
「こんなことをしても爺さんは戻らない。わしが格好を付けてどうする!」
「サバ次さん。僕は、僕は--」
「独房送りを決めるのは隊長さんの仕事。今は死にゆく者の為にも銀河連合を片っ端から倒すしかないぞ、サバ克!」
「でも僕のせいで--」
「甘ったれるなら後にしろ! わしだって甘ったれたいのに隊長さんは副長二名と客員組長と共に二回で戦ってわしだけ除け者! わしだって甘ったれたかったんだよ! わかるか、この気持ち!」
 鬼気迫るサバ次の迫力に押し負けたサバ克は泣き言を伝えるのをやめた。
「わかったよ。サバ次さんの気持ち……確かに受け取りました!」
「ふう、ようやく楽に出来るな」
 サバ次は一の分もの間、一安心をした後--
「じゃあ行こうか、サバ克!」
「はい、サバ音さんやサバルバお爺さんの為にもこの区域にいる銀河連合を倒しましょう!」
 二名は進んでゆく--海上部隊のいる区域へ。
(でえでも安心できないな。でえサバ次さんは頼もしいけど、でえ何か引っかかる? でえ何かが後を追ってるような?)
 サバ克の予感は的中--背後には凝視しないとわからない銀河連合が壁を食い荒らしているのを……。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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