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一兆年の夜 第二十六話 海は広いな、大きいな(三)

 午後四時六分十二秒。
 場所は海洋種族用海中部隊会議室。通常の部屋と大差ない広さ。
 部隊長と副長二名、そして客員組長が一名。合計四名で会議をする。
 現在会議を開いてちょうど一の時が経つ。現在主張するのは左方副長である齢三十七にして一の月と一日目になるセネカ秋刀魚族の明石サン造。
「……皆に配るお金がこんだけじゃあ指揮に影響しますぞ。俺はこんな季節でも故郷に出来るだけ早く持ち帰るべく働いてますのに。たった五万マンドロンではどうかしますぞ。海洋種族用に精度の高い意志で出来た硬貨でも軽過ぎちゃあ故郷のカミさんは満足しませんよ。もっと--」
「サン造はお金しか頭にないのか?」
 途中から話に割り込むのは右方副長である齢三十六にして十の月と二十七日目になる仁徳鰯族のイザヤノイワシムカイ。
「イワシムカイもたくさんある方が生活に困らないだろ? 世の中はお金が大事だよ。お金はたくさんのものを買うのに必要だからな。でなきゃ--」
「長い! お前の話は長いんだ! わしは一生食べられるお金があれば十分だ。金稼ぎは二の次だ!」
「お金の話はここまでにしろ。俺達の任務は鬼ヶ島周辺海域を浄化させるべく活性炭入りの袋を配置すること! それを忘れるな!」
「わかってるよ、秋山の坊や。それを防ぐ者達が中に入るんだよねえ」
 サバ吉を小さく腰砕けに見るのは客員組長である齢三十二にして六の月と二十八日目になる応神?族のタケミカグノアララギ。
「銀河連合! 奴等のせいでどれだけの同胞が海の藻屑と消えたか!」
「遺産も大変な額でしょうな。未だにそれを保証できる制度が出来れば残された者も生活に困らないはずなんでしょうが。未だに国家神武ではそれを作る土台が--」
「それは国家神武に任せるんだ! とにかく銀河連合はやることなすことが正々堂々ではない! わしはどんな曲芸を持ち込まれても奴等を倒す! 一体残らずな!」
「『一体残らず』と伝えたのか? 某は目がぼやけて大変だな」
「エラ会話でもはっきりわからない仕草もあるんだね。水中において口で話せない以上は俺もエラの動かし方に困るね。少しエラの動きを間違えると伝えたいことまで間違うんだし! 俺はいつも困って--」
「とにかくこれだけは断定できる! 奴等は必ずこの船ごと--」
「緊急事態ダ! 海ヨリ特定困難な銀河連合現る! 繰り返ス! 海ヨリ特定困難な銀河連合現る!」
 突然、齢二十九にして四の月と九日目になるエピクロ鯨族の青年にして海上部隊隊長ワルシャーワン・ホエンラドンが船全体を大きく揺らしながら警告を発する!
「塩水の調整は苦労してるってのにホエンラドンの腰砕けは!」
「怒るなや坊主。某達はやれることを上手くやって部下を救わねばな」
「それじゃあ行こうか!」
 四名は急いで会議室から出た!

 午後四時十三分三秒。
 場所は海洋種族用第二空き室。
(でえ苦しい! でえ海水を間違って呑み込んじゃった! でえ辛くて苦しい!)
 サバ克は突然の警告で体内に含まれる海水を謝った調整をして、しばらく苦しむ。
(でえそりゃそうだよ。でえパルメニデノスを食べてる時にホエンランドンさんの警告が発したんだから。でえ間違って塩水を呑み込んでもおかしく……何で若布が入ってくる?)
 穴から若布が生きてるように入り込む--サバ克はそう思い込んだが……。
(でえ違う! でえ透き通った若布なんて聞いた事ないよ! でえ内部に血管が出てる若布なんて聞いてないよ! でえ間違いなく銀河連合! でえ僕は逃げないと!)
 逃げなきゃ食べられる--そう思ってもこの部屋は命令を守らない者を反省する為に送り込む。なので逃げないようにする為、扉には鍵が掛けられている。
(でえうわあああ! でえどんどん近付いてる! でえこのままじゃあ本当に--)
 突然扉は部屋の方に開く--そこからサバ音が飛び出す!
「サバ克君! これを渡すわ!」
 口に咥えた海中式雄略包丁を口で掴んだサバ克だったが、咄嗟に抵抗する余裕はなかった!
(でえやられ……え? サバ音さん?)
 サバ克の眼前でサバ音が若布型に右エラごと抉られ、口から赤い水泡を数え切れんばかりに溢れ出した--彼女は二度とエラ会話をすることは永遠に有り得ない。
 突然の出来事にサバ克は身動き一つ取れない。
(でえサバ音さんが死ぬ? でえ恋者はどうなった! でえサバン通さんの為に生きるんじゃなかったの? でえあれ? でえこんな事が--)
 骨だけになったサバ音の死体を放り出した若布型は今度こそサバ克を食らおうとゆっくりと近付く!
(でえ僕もサバ音さんみたいに骨に……あれは伯父さん!)
「部下をやらせるか!」
 サバ吉はサバ克に触れる寸前で海中雄略包丁を咥えて素早く若布型に接近--中心部に刃を突き立てて、即死させた!
「ありがとう、伯父さん!」
「若布型である以上、感触の方を心配したが何とかなったな!」
 サバ克は喜びはしたものの頭上に浮かぶサバ音の死体を気にしてか悲しみの方が勝った。
「悲しいか。サバ音君を救えないことが悲しいのか? それともサバ音君が死んだのを悲しむのか?」
「どっちもです! 僕は、僕は! 僕が命令を無視しなければ彼女を!」
「それなら俺にも責任がある! しかしだ! 責任問題を起こすことをサバ音君が望むか?」
「伯父さんに彼女の何がわかるんだ!」
「わからない! 死んだ者はどこまでも口を開けない以上はな! だが、意志を読むことなら俺達は出来るはずだ! そうやって俺達は生きてきたんだ! それを大事にするんだ!」
「穢れ深いよ、僕達海洋種族は!」
「海を流浪する以上は穢れを避けて通るなど出来ようか! 俺達は死んだ者達の為にも流浪するんだ! この広い海をな!」
「はあ、伯父さんはいっつも脱線するよな。今は鬼ヶ島の清掃が大事なのに!」
「お前も同類だろ? 俺を腰砕けに見る暇があるなら少しは成長しろ! でないと骨になってもサバ音君は--」
「もういいよ。僕も成長しないとならないってことは! 僕に出来るかな、成長なんて!」
「お前次第っってことだろ?」
「曖昧だよ」
 サバ克とサバ吉はサバ音の死体を運んでゆく。運び先は海洋種族用第五空き室。そこは他の部屋と違い、やや冷えた部屋。遺体を安置するには最適だ。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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