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一兆年の夜 第二十六話 海は広いな、大きいな(二)

 午後二時二分四秒。
 場所は海洋種族用第二空き室。別名は独房。
 秋山サバ克は伯父にして隊長である秋山サバ吉におよそ二の時もの説教を受けた。その後、彼は無理矢理引っ張られ、独房に送られた。
 独房に入れられた者はおよそ一の週はそこで生活しなければならない。肝心の食糧は海洋種族用の食堂で働く鱈族の熟女が運んでくる。ただし、儀礼が重なる場合は運ばれることが無く、空腹に耐えるしかない。
(でえ全く叔父さんも大人げないな。でえいくら国家神武で定めたこととはいえ一の週もここにいるのは良くないよ。でえあーあ、でえサバ梨ちゃんと石版のやりとりがしたいよ。でえ寂しがってるだろうに。でえん? でえ誰か来た? でえ食堂のおばちゃん?)
 やって来たのは齢二十八にして八の月と二十九日目になるルケラオス鯖族の青年。先程までサバ克を説教し、独房に放り込んだ者。
「伯父さん! ようやく出れるって事?」
「異なるな。出る条件にもう一つ追加しなくてはならないことを伝えに来た」
 それを聞いてサバ克は鰭をダラしなくしてしまう。
「そこまで落ち込むな。追加条件はお前の為になるぞ」
「どんな条件?」
「『万が一の命材不足が発生した場合は現場指揮官の判断に任せる』とのことだ」
 それを聞いたサバ克は--だったらここから出してよ--とエラで懇願するもののサバ吉は規律を守る軍者故、身体を横に揺らす。
「あくまで万が一だ! それに現場指揮官の判断も加わるとサバ克は期日通りここで暮らすことになるぞ。わかってるのか?」
「でも緊急時じゃない! 僕が居ないとみんなが明るく--」
「仲良しごっこは軍以外でやれ! ここは軍だぞ! 軍である以上、俺は軍規を最優先する! 穢れ深いがわかってくれ!」
「はいはい……」
「『はい』は一回で済ませろ! 俺は忙しいので帰るぞ! お前が必要だと思う時は必ず出すように伝えるからそこで身体の柔軟をするんだぞ!」
 サバ吉は身体を縦に振った後、左に振り返りながら独房の扉から離れた。
(でえサバ梨ちゃんに会いたいよ~。でえサバ梨ちゃんは僕をきっと心配してるんだよ。でえサバ梨ちゃんに……誰か来る? でえ今度は誰? でえサバ音さん? でえいや何か肌模様が異なる)
 擦れ違うようにやってきたのは齢二十三にして五の月と五日目になるラテス鯖族の黄色肌の青年だ。
「元気で何よりだ。ただ、これを読ませていいか迷う」
「塚本さん! 塚本サバ次さん! 励ましてくれたの!」
「励まそうと思って石版を持ってきたけど、読んでみると……まあ励ましにならないから良くないかな?」
「えっと……誰宛のもの?」
「お前の恋者……だった下野サバ梨さん宛だよ」
「『だった』? 何それ?」
「読むのか読まないのかと聞いてる? けど読まない方がお前の為だぞ」
「そんな伝え方じゃ余計に読みたくなるよ! 通してよ!」
「ま、まあお前の気が済むなら渡してやるよ。じゃ、じゃあわしはこの辺で」
 逃げるようにサバ次は扉から飛ぶように去った。残ったサバ克は内容を見た。するとそこには--
『敬愛していたサバ克へ。

 私、サバ克が遠くへ行ってる間に彼氏が出来ました。御免ね。

                         サバ克が愛するサバ音より』
 たった一行ではあるが、サバ克の心を粉砕するのに十分だった。
(でえ? でえ? でええっと? でえこれはきっと夢の内容なんだ。でえ僕がサバ音ちゃんに振られるわけないじゃないか。でえこれはきっと神様が与えて下さった夢の続きなんだ。でえこんなのいくら何でもあんまりだよ! でえ僕達で了承したことなのによ! でえ了承した、でえ事、でえなの……)
 サバ吉は両眼から水泡が溢れる。水泡は部屋全体に乱れるように当たってゆく。それだけ彼は失恋で心を痛める。
 そんなサバ克の様子を知らないのか、齢四十にして十一の月になったばかりのパルメニデ鯖族の老年が差し入れを口に掴みながら独房の外にやってきた。
「小僧や。元気にしてたか? おや、差し入れが嬉しいからって水泡が老いぼれの所まで来とるぞ!」
「帰ってよ! 僕は一名で悲しみたいのに!」
「差し入れを持ってきたのにつめ--」
「帰ってくれ!」
「差し入れは中に放り込むからから気が済んだなら少しかじってみるんだのう」
 一連の行動を済ました老年はゆっくりと立ち去った。
(でえうう、でえええう。でえサバルバのお爺さん伸さし入れでも食べて落ち着こうかな。でえん? でえこれはパルメニデノス! でえ海洋果物の一種で僕の大好物であるノス。でえその中でホエンラ丙が豊富なパルメニデノス。でえ酸っぱくて美味いはず……酸っぱい! でえでも生き返る! でえありがとう、でえお爺さん!)
 サバルバと呼ばれる老年の差し入れを美味しく頂くサバ克は徐々に立ち直ってゆく。その様子を外から眺める者がいた。
 サバ音もまた恋者から失恋の石版を送られ、傷心していただけに彼の心が修復する姿に感動していた--両眼から溢れんばかりの水泡を出して危うく独房に中に入りかけるくらい弾け飛んだ。
 だが、それでも二名は仲間として互いに慕い合う。これから訪れる悲劇を乗りきる切っ掛けになるように……。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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