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一兆年の夜 第二十六話 海は広いな、大きいな

 サバ克は袋に詰めたルケラオス産の若布を食べる。
(でえ鬼ヶ島周辺の若布は食べられたものじゃないっておっちゃんが言ってた。でえ僕は活性炭入りの袋を設置するんだ。でえこれがおっちゃんは口五月蠅くて『ちゃんと距離を取っておかないと良くない』って言うんだよ。でえ五月蠅いよ、でえおっちゃんは)
 秋山サバ克は幼少の頃からサボり癖の激しい少年。全ての鯖族の行事である海洋横断の旅行でも途中の休憩地点で昆布を拾い食いした。戻ってきた鯖族の者は強引にサバ克を連れて行く事で期日までに横断を果たす。他には鬼ヶ島侵攻作戦で陽動任務に当たる時も彼だけ船に帰って拾い集めた石版でルケラオスにいる恋者に直撃文句を書いて送ろうとし、それを伯父であり隊長であったサバ吉に説教と独房送りを受けた。
(でえ僕は別にサボってなんかないよ。でえ若布を食べていつでも空腹にならないことも隊員の務めだよ。でえそれにしても武内産の若布はあんなに遠いのに流味が落ちて無くて美味いよ。でえ生き返る)
 サバ克は袋の中に入っていた若布を全て食べると深くまで沈む鬼ヶ島製の岩で構成された環状に向い、南側にある岩に生えた成人体型一とコンマ三もある巨大な海草に全身をもたれ掛かる。そのまま両眼を閉じて眠る。
(でえ食べた後は寝るだけだあ。でえ今日も一仕事を終えたし)
 眠りは僅か一の分も経過せずに同じ部隊に所属する齢十八にして二の月と十二日目になる海洋藤原鯖族の少女が口から泡を吹き付けて起こした。
「何する!」
「『何する』って何よ! こんな所でサボってないでちゃちゃっとしなさい!」
「えっと何を?」
「活性炭入りの袋は現在どこまで置いた?」
「二個だけど。いいかな?」
「目標は三十一でしょ! 何で僅か半の時をかけてたったの二個なのよ! もう手伝うから袋がどこにあるか教えて!」
「ここから北の方にあるよ。確か目印に若布入り袋を置いといたから」
「また摘み食いなの? 呆れた雄ね、サバ克君は」
「そっちこそ世話焼きが過ぎるぞ、サバ音さん」
 二名の会話は魚系なら誰もが行うエラ会話。よって人族のように標準的な会話になるのは当然である。本来はサバ克の思考が示すように『でえ~』訛り。
 だが、水中では声は出せない。声は通り難い。それを解消すべく魚系の種族はエラ会話を開発した。
「また隊長に独房送りされちゃうよ」
「見つからなきゃ大丈夫だよ」
「銀河連合みたいになってない?」
「恐いこと伝えないでよ」
 藤原サバ音と呼ばれる少女はほんの少し年下でありながらもサバ克にとって姉のように慕われる存在。ただし、恋憧れるほどの感情は彼女に抱かない。
「サバ音さんが部隊にいて嬉しいよ」
「偶然サバ克君のような怠け鯖に出会っただけよ」
「それでも居てくれると助かるよ」
「まあ礼を言われると誰だって嬉しいんだから」
 同じようにサバ音もまたサバ克を慕いはしても恋憧れるほどの感情は抱かない。彼女には海洋藤原に住む頭でっかちな青年に恋憧れている。
「この任務が終われば僕達は恋者が待つ故郷に戻るのかな?」
「マス太先生を困らせてないのかな、サバン通は?」
 二名は一の時をかけて袋を置いてゆくも十五個しか置くことが叶わず、そのまま部隊の寝床である成人体型縦五十、横八十、高さ七十にもなる海洋種族用の船に戻った。
(でえ塩水が美味くないよ。でえ鬼ヶ島周辺はあんなにも水質が死んでるのか? でえ船に戻れるなら幸せなことはないよ)
 この時二名は若布の形をした銀河連合が虎視眈々と付け狙っていることに気付かない。それがやがてサバ克を怠け者から一命前の鯖に成長させる悲劇へと繋がる事も……。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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