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一兆年の夜 第二十五話 大空のトリ(八)

 午後八時一分六秒。
 場所は医務室。ハヤブスとフォウルンが寝る所とは別の部屋。
「三名とも命に別状はないエエ」
「うぐぐねう」
 ウェリンティは何かを言いたそうだ。
「ウェンディさんをう、連れてきてう」
 二の分より後、ウェンディが入る。
「どうしてう、ウェリンティさんねう?」
「僕は情けない雄でう! 鬼ヶ島からわざわざ敗走するなんてう!」
 ウェリンティの痛みは喋る事に関しては苦痛はない。だが、心はそうでもなかった。悔しさの余り両眼から涙が勢いを増してゆく。
「ううううう! 死ぬ覚悟が出来てるつもりであってう! あってう! うううううああああ!」
「そんなに泣かないでう、ウェリンティさんう! あなたの悔しさは痛いほど分かってう!」
「君は何か食い異ねう! 僕は銀河連合から敗走したんじゃねう! 実は--」
「緊急事態発生! 銀河連合がオヨソ五十体! しかも真ん中には指揮官型と思ワレルモノが! 繰り返ス! 銀河連合がオヨソ五十体! しかも真ん中には指揮官型と思ワレルモノが!」
「何だってエエ……だエエ、大丈夫かエエ!」
 普段は冷静なスネッグムもさすがに指揮官型の襲来を聞き、引きつった顔になった!
「本当じゃないねう? 本当じゃじゃじゃななないねねねうねう?」
「指揮官型の強さに恐怖して僕達はああ……」

 午後八時十分三秒。
 予報を聞いた二名の顔はむしろ覚悟が据わった。
「指揮官型が来るなんて予想だにしねえ! だげえ、恐怖心はああいつと戦っていくらでも味わってやるでろう!」
「俺は楽しみ。何せ指揮官型を倒せたらお前より強いと証明できるからない!」
「言っておくがあっしが組で最も強いのは無理してるからでろう! 無理しないあっしはカブ壱にだって負けるせえ!」
「言ってろい!」
「ところでいつ出れえ?」
「一刻を争うい! すぐに取り掛かるぞい!」
 二名は独房を覚悟して命がけの無断出撃を決める--フォウルンも!
 ハルブスはいつも通りフォウルンが弟子五名を引き付けるのを確認した後、甲板を出ようとしたが--
「ハルブスが甲板を出ようとしてるぞい! 第三出入り口から出ようとしてるぞい!」
(でえ? 何故フォウルンでえ?)
 逆にハルブスが陽動を任された--弟子五名に見つかり、すぐに毛布で二重にくるまれた!
「顔だけは確保してるんでねう」
「当たーり前だーよ! 息ー出来なくーて死んだーら神様に申ーし訳ないでーしょうーが!」
「それもそうだねえ」
 ハルブスは捕まり、医務室に戻されたが--
(フォウルンは飛ぶ気でろう! それはやってはいけないことでえ! スネッグム先生は優れた医者でろう! あの方の意見を聞かないと言うことはフォウルン・フォーディーは指揮官型に挑む気でろう! 何としてもあっしが止めないてろう!)
 だが、毛布から脱出するのに手間取る!

 午後八時三十分五十三秒。
 場所はエピクロ海。その上空で坂井組を含む五もの組は銀河連合と空中戦を展開!
 だが五十体を相手に刃切れ、行動癖、疲労などにより徐々に押されてゆく。
「これええで九体目ええ! 刃がああ残おおり一本。それをおお指揮官型にいい!」
「組長う! 私は切れましてう! 一旦船に戻りませう!」
「数が多すぎる上ね、まるで僕達の行動を読めるかのような動きね。僕はあちこちに刃を受けてもう無理ね!」
「ウェンディはしばらああく休ううめ! カブ壱はああ船にいい戻ってええ治療をおお受けええろ! 小生いいは指揮官型をおお倒おおす!」
 ブク郎が指揮官型まで近付く--二組相手に無傷のまま鳥たちの身体を切り刻む羽付きの指揮官型のおぞましき姿があった!
「二組をおお全ん滅! 何一つうう刃をおお受けええずに!」
 そんな異形の存在にも臆せずブク郎は単身挑む!
 一方でウェンディとカブ壱は命令通りの事をしていた矢先--
「フォウルン君う! 外に出たら良くないよう!」
「知るかい! それよりも翼持刀はないかい?」
「物部刃の入った袋は僕が持ってるね。でもやっぱり出るのは危険ね!」
「それを貸せい! それに俺から飛ぶことを取ったら何も残らない! 俺は飛んで指揮官型を倒すぜい!」
「意地を張らないでう! そんな身体で……キャウ!」
「翼持刀を使わせて貰おい! 俺は最後まで鳥だ! 鳥は空を飛ぶ為に生まれ、飛ぶ為に死ななきゃならないんだい!」
「行くなね、フォウルンんんんんえんねえねええええ!」
 フォウルンは残り二本入った袋を背負い、ウェンディから強引に取った翼持刀を右に抱えてふらつきながら空を飛ぶ!
「医者がどんなに凄くてもい! イデデデエい! 俺から飛ぶことを諦めることは出来ないんだよおおおい!」
 一方、医務室で脱出を試みるハヤブスはきつく締めた毛布二枚に苦しむ。
(早く行かないとあいつは必ず死ねよう! 死んでしまうでろう! いい加減弛んでしまえばいいのにでえ!)
 そんな姿を見て堪えきれないスネッグムは医務室に入ってきた。
「先生でえ! あっしは空を飛ぶぜえ! どんな事になろうとも空を飛ぶんでえ!」
「医者として飛ぶことを許さないエエ。フォウルン君と同じく飛べない身体になるぞエエ」
「だからこそあっしはそれを覚悟してもう一度飛ぶんでえ! こんなに想いを伝えても聞かないのけえ?」
「そうだエエ。それが医者というものだエエ」
 突然扉が開いてそこからウェリンティが現われた。
「行かせて下さい先生ねう。僕のせいにしてう」
「ウェリンティけえ。どんな風の吹き回しでろう?」
「……」
「でないとあなたが死ぬ恐れがありますよう。それでも医者として止めるねう?」
「……どうやら我は後継者に譲る時が来たなエエ。今すぐハヤブス君を離すエエ」
 スネッグムは丁寧に布団を解いた。
「ありがてえ。ウェリンティと先生でろう」
「我に礼を言うべきでないなエエ」
「僕は無理だってう。でも君ならもしかしたら勝てるかも知れねう!」
「それは買い被りすぎでろう! だが雄として生まれた以上は格好付けないと雌に惚れられねえ! 今すぐ行くぜえ!」
「生きて戻れエエ。我が医者として最後のお願いだエエ」
 ハヤブスは飛ぶ--悲劇の空へと……。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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