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一兆年の夜 第二十五話 大空のトリ(六)

 ハヤブスは袋から物部刃を出そうとするが--
「あ、袋が……」
 フォウルンが落とされた衝撃が大きいのか袋ごと物部刃を落とした。雀型はその一瞬を見逃さず拾った翼持刀を活用して刃のようなモノを放つ! ハヤブスは右捻りする事で物部刃の刃先ギリギリで躱すが、雀型に背後を取られる!
(徒手空拳の状態で背後を取られたら何も出来ねえ! ただ鬼ごっこの鬼族みたいに逃げるしか手立てがねえ!)
 ハヤブスは刃切れスルまで音の波を読みながら雀型の猛攻を避け続ける!
 その頃、徐々に風が強まり始める。
(速度を落としたつもりはないのに何だか風げえ。風が徐々に強くなって……ううっ!)
 急速に強くなる風の影響でハヤブスは左翼の中央先端に刃を受けた!
(血は出てるのけえ? ますます速度を出せない上でえ、左翼の怪我で全体の均衡が偏って……避ける事もギリギリけえ)
 今度は右翼に命中--幸い羽に刺さるだけで済むが僅かな重みでハヤブスは高度を大きく下げる!
 更にハヤブスを危機に陥れる存在が左方より出でる--五体の銀河連合が海から這い出た!
(このままじゃ海に落とされるのけえ! あっしはフォウルンと同じように海に沈むのけえ? あいつの仇も取れずねえ……)
 ハヤブスが諦めかけたその時だった! ハヤブスの前方に見慣れた三名の姿が見えた!
「カブ壱いい! ハヤブスをおお保護しろおお! 小生いいは濡れええたてのおお銀河連んん合を相手すううる!」
「了解ね!」
「私が相手よう!」
 ブク郎は海から這い出たばかりの銀河連合に単身挑み、ウェンディは翼持刀を持ちながら袋から物部刃を取り出すやいなやすぐさま雀型との距離を縮め、刃を放つ!
 一方のカブ壱は命令通りハヤブスを救助しようと高度を下げ、彼に近付く!
「もう安心ね! 僕が居ればハヤブスだって--」
 それは間違っていた--カブ壱は両翼でハヤブスを持とうとしてそのまま海に落下!
「ゴボボボ! ばあ、なにがば! あんじじじぶぶ……」
 二名はそのまま海へと沈む。だが、二名の真下から成人体型六に満たない影が這い上がる。影はそのまま二名を救助した。

 七月十六日午前七時七分三秒。
 場所はエピクロ海。鬼ヶ島の北西に漂う成人体型縦五十、横八十、高さ七十にもなる海洋種族用の機動力が優れない船。甲板の真下にある一室。
 左翼に包帯を巻いたばかりのハヤブスと近くの毛布にくるまる首から股間まで包帯を巻いて仰向けになるフォウルンが居る。
「てっきり死んだかと--」
「俺が死ぬかよい。ググ!」
「無理するねえ。その傷じゃあ今日は無理でえ。まああっしもこの傷では飛べねえ」
「くそい! 俺がもう少し回りを警戒していればこんな事に!」
「無理もねえ。あっし達がどんなに強くても時として空から落ちるのでろう。情けない話でろう」
「お前はまだいい! 俺なんかこの傷では医者から空を飛ぶ事を止められるかも知れない! 医者はそうゆう連中だい」
「それならあっしもその領域に踏み込むぜろう」
「あらう? 二名とも意外に元気じゃなう?」
「それだああけに空をおお飛べないのおおは念がああ残るのうう」
「とにかく元気で良かったね」
(カブ壱が出てくると何だか怒りが湧けろう! あいつのせいで海に突き落とされたからねえ)
 扉から出てきたのは坂井組の三名だけじゃない--齢三十六にして三の月と十五日目になる老年入りかけの武内蛇族の医者だ。
「スネッグムのじじいかい?」
「コラアアア! 口いいを慎まんかああフォウルン!」
「いいっていいってエエ、坂井組長エエ。ちなみに我はまだ中年だエエ」
「先生が入ってきたと言う事はフォウルンの状態について何か言いたそうですねえ」
「『仰りたそう』でしょう!」
「細かいことね」
「うむエエ。実はフォウルン君の今後について話し合う為に五名全員この部屋に集めたよエエ。実は--」
 スネッグムは予め書いておいたフォウルンの全体図を五名に見せた。
「医学はああよおおくわからああんがこれええは?」
「実はここの部分エエ。これはね……」
 スネッグムは三十の分掛けて説明した。
「そう、それじゃあフォウルンはもう……」
「彼は余生を歩いて過ごすしかないのだよエエ」
 五名中二名は納得いかない様子だ! 特に当の本命は飛ぶ事に生涯を掛けたばかりに医者の言葉に耳を貸そうとしない。
「医者ってのは偉い? 偉いってかい? そうやって患者を傷つける事が仕事かい?」
「偉くはないエエ。ただ我は事実を述べたまでだよエエ。君が今後飛ぼうとすればその影響で身体全体にまで危険が及ぶエエ。そうなると今度は飛ぶ以上に歩く事も食べる事も出来ない身体になるぞエエ」
「そんなのあんまりでえ! フォウルンは産まれた時から両親が他界して日毎の生活を飛ぶ事でまかなうしかない生き方なんだぜえ! なのにそんなあいつに飛ぶ事を捨てたらどうやって生き甲斐を見つけるんでろう!」
「それは彼自身で見つけてゆくしかないと我は言うがねエエ。我は医者だエエ。医者は仙者でも長者でもない存在エエ。助ける事もあれば時として苦渋の道だって進める穢れ深い者達だよエエ」
「言う事あおおは言うんんんだのおおう」
「でもフォウルンが無事に生きられるのなら私達はフォウルンの分まで戦うしかないもんねう」
「大丈夫ですね、二名共ね。僕が居れば--」
「お前じゃ無理でえ! けどあっしの傷じゃあ当分は飛んじゃならんのけえ?」
「我は医者だエエ。飛ぶのは勧めないエエ」
「納得いくかよい! 俺は鳥だぞい! 飛べない鳥は鳥と呼べないぞい!」
「あっしも納得いかないがフォウルンの為にもここは--」
「緊急事態ダ! 空ヨリ銀河連合およそ二十体襲来! 繰り返ス! 空ヨリ銀河連合およそ二十体襲来!」
 突然として齢二十九にして四の月と三日目になるエピクロ鯨族の青年が船全体に振動を与えるように伝える。
「壊す気けよう、あの鯨でえ!」
「我は患者が数十名待ってるのでこれで礼を失するエエ! くれぐれも無茶をするなよエエ!」
「じゃああ小生達いいは出陣すううる!」
「僕が居れば安心ね!」
「二名だけで戦うのは辛いけでう、坂井組は他の組の者より遙かに優れてるからこれくらい何とかしてみせるわう!」
 四名ともそれぞれの持ち場に戻ってゆく! 残った二名は--
「このままこうするかい?」
「あっしは我慢出来ないねえ。こっそり抜けるけえ?」
「そうしようぜい!」
「ただしお前はその傷じゃあ無理だから他の者の引き付け役に回れえ!」
「悔しいがそうしようい」
 二名は無断出撃へと翼を広げる……。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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