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一兆年の夜 第二十五話 大空のトリ(四)

 午後九時零分十二秒。
 場所は船の甲板。
 空戦部隊の半数が集合。その中にはハヤブスが所属する坂井組も含まれる。
(鬼ヶ島奪還戦では海戦部隊との連携が不可欠でえ。しかし--)
 部隊長である齢二十五にして三の月と二日目になるゼノン雁族の青年遠山ザギ彦は点呼するなり立場を代表するかのような碌でもない事を口にする。
「……ワレ々は海戦部隊との連携をと口にスル。ソンナのは本当ではナイ。ジッサイは縄張り争いのタメ、カイセン部隊を無視してでも我々は我々の責務を全うしなければナラナイ!」
(そうなるでろう。あっしだってあいつらと仲良くするのは無理でえ。いくら事情を理解しようとしてもあいつらはいつも石版付きで送れと五月蠅いでえ。だからってそれを口にするけろう? 部隊長の考えは理解できねえ)
「……タダシいつも無視しろとは言わナイ。ヒツヨウなら彼等の海に関する知識もまたこちらにとって有りガタイ。ナノデ緊急時には彼等と連絡シヨウ。デナイト我々は銀河連合相手に全滅する危険がタカイ!」
(だけど石版をいちいち彫らなきゃならないでろう。連絡用に鰐族が居れば手間は省けるでろう。なのにいないから困るでえ。そこがいつになっても空陸海が一纏めにならないわけ何だよねえ)
「……コッカジンムはひっきりなしに空陸海を統合せよとの通達をダス。ケレドモそれは無理なハナシ! オカにはオカヲ。ウミにはウミヲ。ソシテ空には空の流儀がアル! オオ空の鳥タチヨ! トウ合にはまだ我々の知性は追いつかナイ! ニク体が追いつかナイ! ソシテ精神が追いつかナイ!」
(その言葉はかの学者一族バルケミンのユートリスから引用でえ? 『統合には知性と肉体と精神の三つが最大値に届かなければ実現は遠のく』でろう。統合するのは容易いがそれを維持するとなると些細な喧嘩が絶えねえ。あっしらの他種族または同種族関係だって些細な事で喧嘩する以上どうしようもねえ)
「……ソレでも統合する事に意味はアル! ギンガ連合を倒す為には統合しなければならナイ! カノ歴代最強の仙者天同生子が築いた旧国家神武は銀河連合の宇宙からの飛来によって僅か八の年で歴史に幕をトジタ! ソレはナゼカ? ギンガ連合は複数ではなく一つの統合された集団なのダカラ!」
(銀河連合はその名の通り銀河規模の存在でろう。一個命で収まればいいけどそうじゃねえ。あいつらは今確認した連中でも結局は何億光年も離れた本体が送り込んだ分身でしかねえ! その事は藤原マス太が再三の研究で明らかにしてろう! そうなると本体はどれくらいの大きさけえ? 天の川銀河規模でえ? いや想像が出来ねえ)
「……ダカラこそ我々は銀河連合を倒す為にも統合しなくてはならナイ! ドンナに縄張りを主張したところで流れに任せて我々はいずれ銀河連合全てを倒す為にも好きでない者達との仲間関係を深めなければならないノダ! コノ一戦はそんな仲間意識こそが戦いの全てを左右するノダ!」
(いくら強すぎるものがいても結局は数こそ戦いを左右せろう! そして数がどんなに多くても結局は緊密な関係こそ戦いを左右せろう!)
「……ドンナに苦しくても見るに堪えない事が待ち受けても我々は鬼ヶ島を取り戻すのだああアア! オニガシマの空を取り戻すのは我々空戦部隊なのダアアア! ミナのモノ! キヲ引き締めて取り掛かれえエイ! イジョウダ! カイサン!」
 遠山ザギ彦の点呼は気付いたら演説に様変わりした。彼は代々ゼノンの者としての誇りを大事にしてきた。故に食われた知を取り戻す事に懸けては誰よりも強い思いがあった。
(だからって点呼が長くなる理由にならねえ。先祖が燕族のシュラッテー・ベンデルウムと出会わなければこんなに長くなかってろう。世の中はどう転ぶかは生子様でもわからないかもでえ)
 ここから鬼ヶ島奪還の短くも辛い戦いが始まる。坂井組の任務が陽動であろうと彼等に待ち受ける悲劇は想像すら困難であった……。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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