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一兆年の夜 第二十四話 二十四時間の脱出劇(九)

 午後八時二十九分二十八秒。
 場所は第一南岸。そこには船は無い。
(銀河連合めッツ! このままではッツ!)
 二体の追っ手が四名に襲いかかる!
「俺様を甘く見るなああッツ!」
 シカットは背負っていた袋を降ろして中から足斧を咥えるとそのまま右方にいる犬型目掛けて投げる!
「外れっちゃ良くないっだろ!」
「学習してやがるッツ! 接近戦しかないのかッツ!」
「ここは僕がに隊の足止めをするよぞい!」
 サイ造は二体に下から上に首を二回振る。しかし、二体は弱そうな相手を選ぶ!
「僕目掛っけてえええ! 僕は美味しっくないよオオ!」
 雨山は逃げる--サイ造は雨山を助ける為に二体の銀河連合に突っ込もうとするが--
「待ってサイ造! ここはあっの小僧に任っせろ!」
「角を掴むなぞい! 痒くて仕方が--」
「ゴリ久の言うとおりにしろッツ! 雨山には足斧を着けてるッツ! それに追っ手はたったの二体ッツ。百獣型や獅子型を相手にしてるわけじゃないんだからッツ」
「しかし万が一にも--」
「信じろッツ! 子供の成長は大人が思ってる以上に大きいのだぞッツ! あいつは生者でなくとも立派に成長するんだよッツ! そう思えッツ!」
 サイ造は犬型と猫型に追われる雨山を見ながらそれでも心配する。
「シカットの言葉を信じたっらどうっだ? でないと雨山はいっつまで経っても母依存症は克服できっないぜ!」
「……信じるしかないのかどい」
 サイ造は雨山を心配する事を諦めた。
「サイ造さああああん! 助けってエエエ!」
 雨山はなおも逃げる--四番地に向かうように!
 一方雲は徐々に空を覆い尽くす。どちらに微笑むかを探りながら……。

 午後九時零分一秒。
 場所は南地区四番地。
 マモルモリノス・アダルネスは全身に無数の傷を出しながらも周りにいる銀河連合を残り三体まで減らす。
「はあはあ我もおう、こ、のままで、はぞう」
 彼の体力は限界に近付こうとしていたが銀河連合は依然としてマモリスにそこが見えないと感じ、退き気味になる。
 一方のマモリスは死を覚悟した。
「死なば諸共ぞう、ってのは死を覚悟するだけじゃ、無理ぞう」
 ゆっくりと三体に近付く。三体は後ろに下がってゆく。
「生き、る覚悟もぞう、必要、だぞう」
 マモリスが死を決めようとしたその時、南から二体に追われている雨山が現われた!
「はあはああはあ、はあ、ももう、げっん」
 瞬発力は優れるが持久力は今一つな雨山は徐々に距離を詰められてゆく!
「アブナアアイゾウ!」
 雨山を心配したのかマモリスは力を出して雨山を守るように飛ぶ!
 うえええ--雨山は高度成人体型十まで飛ぶマモリスに驚いて一瞬だけ疲れを忘れる!
 雨山を追っていた二体の上にのしかかるように落下したマモリス--落下音は西地区第二海岸まで届く!

 午後九時十分一秒。
 場所は西地区第二海岸。
 パタ音は両眼が腫れ上がり、前右足を脱臼されながらも残り一体まで減らす。
「この音やは?」
 南地区四番地から響く音に油を断った。その瞬間を狙ったのかは定かではないが鰐型はパタ音に襲いかかる!
「ボクって死ぬよの?」
 前左足を掴まれたパタ音は折られようとしていた。
「よりにも、よって鰐型、をのこ、すん、じゃ、ないやわねえええ!」
 咆哮と共にパタ音は後ろ両足に力を入れて鰐型ごと持ち上げるとそのまま大地に叩きつけた--同時に前左足も脱臼された。
「前両足を持って行きなさよい! ボクには後ろ両足と頭とヤマビコノ流関節技があるんだかやらわあああ!」
 鰐型の腰に後ろ両足を絡みつけるとすかさず後頭部に噛みつき、絡みつけた後ろ両足指で支えながら鰐型を逆さ『く』の字に曲げてゆく!
「うわあわあ、抵抗なんて寝技に当たり前やわだってええ!」
 鰐の伝統である回転で解かれそうになりながらもパタ音は全身の力を振り絞り、鈍い音を響かせた!

 午後九時二十二分七秒。
 場所は西地区三番地。
 エリファウルは前右足に装着した足斧を既にただの飾りにした。
「殴ってももう死なんぜえい! まだ三体もいるなんてぜえい」
 エリファウルの動きは鈍く、いつ噛みつかれるか定かではなかった!
「銀河連合よりももっと高くぜえい、もっと速くぜえい、そしても……何だぜえい?」
 エリファウルは雨粒を受けた--それは鼻から周囲に広がるように当て続け、やがて大雨に変化!
「うわっ……しまったああうえ!」
 エリファウルは掠り傷で済むが、右肋の部分の羊毛を食われて荒野だけが佇む。
「折角の色雄がうえああ!」
 エリファウルは悔しさと共に全身を叩きつけられた--羊毛のお陰で重傷の内に済んだが一瞬だけ動けない。
「が、が、はあはあうえ。このいっしゅんはぎんがれ、んごうにと、ってはぜえい」
 徐々に距離を詰めながら今か今かとエリファウルを食らおうとする三体の銀河連合。
「囲んでくるとはうえ。万事休すぜえい」
 大雨の中エリファウルが口に出した途端、エリファウルの頭付近に近付く鹿型に大きな影が降ってきた!
「万事休すはまだ早いぞう!」
 鹿型を踏みつぶす大きな影--それは雨の中では西地区二番地だけでなく第三東岸まで響き渡る!

 午後十時六分六秒。
 場所は西地区二番地。
 巨大な鍋にいる生命は既に事切れた側で一つの生命も事切れる寸前まで追い込まれた。
「周りは銀河連合ウウ。こんだけ攻撃を食らいながら軽傷で済むのはわしが若者を腰砕けに見るせいじゃナナ!」
 イノ吉の前右足に着けた足斧は既に使い物ではなくなっていたとしてもイノ吉は自分が助かる見込みはないと思うはず。
「これもゴリ久坊主の作戦ならわしはここで死ぬ生命じゃないぞオオ。とはいえ雨だけは予想外じゃナナ」
 大雨で周りの囲まれながらもまだイノ吉に諦めの気持ちは微塵もない。自分が生きると信じるだけではない。
「わしは目の前の生命を死なせた罰ジャジャ! 死んでたまるものかイイ!」
 一斉に銀河連合がイノ吉を食らおうとしたその時だった--東より波の音が近付く。
「何のお--」
「じいさあああんぜえい! 鍋の中に乗れええい!」
 西よりパタ音を抱えたエリファウルが全速力で波から逃げてくる!
「うお、ごぷウウ! 無事じゃナナ、二名イイ!」
「さすがイノ吉殿おう! あれだけの猛攻をかするだけで済ますとはおう!」
 イノ吉の周囲に巨大な影が踏みつけんとばかりに落下--イノ吉は鍋のような物の左取っ手に前左足を絡め付ける事で巻き込まれるのを回避。
「わしまで死なせて罪を背負う気かアア、若造ウ!」
「にしてもこの年でどんだけ体力あるよの、爺さん?」
「若いもんに負けないからのウウ」
「とか言ってる暇がある場合ですかアア! ママアアアア!」
 エリファウルは抱えながら両者とも鍋のような物に入った!
 一方のマモリスは右取っ手に鼻を絡ませ、雨山はマモリスの背中から飛んでギリギリ中に入った!
「死、死体っイイイ! うわあああああ!」
「叫ぶやな! 耳に--」
「波がこっちにぜえ--」
 波は鍋のような物に触れた物全てを呑み込みながら東へと流してゆく!

 午後十一時零分零秒。
 場所は第三東岸。
 袋にある足斧は残り一つ。シカットはそれを刃毀れした足斧と交換するように右前足に装着。
 一方のゴリ久は船に乗っかる亀型をてこの原理で海に落とすとそのまま船を奪還。
「数が増えすぎて僕達三名じゃもう--」
「泣き言を吐くなッツ! 俺はあと三回倒せるぞッツ!」
「取り戻しったのにまった銀河連合が船に乗ってくる!」
「おらッツ、でえッツ、そらッツ! くう! 二体しか倒してないのにもう刃毀れをッツ! この雨だなッツ!」
 傭兵の誇りなのか、シカットはまだ戦い続けた--鹿族の誇りである角を駆使しても!
 一方の船にはサイ造が乗る。
「シカットさんどい! 早く乗って下さあい! 波が来ますぞい!」
「マモリスの踏みつける音だけじゃなく波が来るなんてッツ! だがッツ、まだ銀河連合がいるぞッツ! こいつらだ……くうッツ!」
 人型に両の角を掴まれたシカット。
「シカット!」
「船を離すんだッツ! 俺様はここで死なんッツ! でえいいいいッツ!」
 首を左に多く九振り回して人型を離すが、角はへし折られた!
「また勲章が出来たよッツ! 今飛ぶぞッツ!」
 成人体型五まで離れた船にシカットは乗っかろうと跳躍する!
「どわっを!」
「うんぬッツ!」
 前両足を後尾に絡めたシカットは勢いを付けて全身を船の中に押し込めた!
「助かったぞい」
「いやッツ、銀河連合はまだこの船に--」
「え? 何でわかめにまっで成れっる?」
 若布型は数十体も船に絡みつきながら三名を食らおうと近付く!
「ここまっで来ながっら俺達は……」
「死ぬ運命ぞい? いやだよおいいい!」
「俺様と救出者七名を生かすという依頼を達成できないなんてッツ……」
 三名が諦めようとしたその時だった--西より成人体型二十以上の巨大な波がイノ吉ら五名を乗せた鍋のような物を流しながら船まで呑み込もうとしていた!
「あ、れは生命質十三名を茹でたものかッツ! あそこにイノ吉ッツ、雨山ッツ、パタ音ッツ、エリファウルッツ、そしてマモルモリノスもッツ!」
 波は情無く船を呑み込んだ!
(いしい、が、あ、あ、あ。いやッツ、俺様はここに来て寝てた、か、かなッツ? も、う、寝ようッツ。しんだ、な、か、まがいる、とこ……ろにッツ)
 シカットは額の十字傷が出来る切っ掛けになった七名の仲間が死ぬ悲しき思い出を振り返っていた。彼は当時イノ吉、マモリス以外の五名と同じく未熟者だった。未熟故に彼は助かる見込みのない命を助けようとした。結果は当然彼以外の全員が死んだ。彼は七名の仲間を失い、額の傷だけが未熟者である彼を一命前の傭兵に育て上げる事になるとは。

 未明。
 場所はエピクロ海。
 国家神武の依頼でシカットと七名を救助しに来た鯨族の一団は海に沈む者または浮かぶ者、船に捕まる者、鍋のような物に入る者を引き揚げた。
「鍋に入っテル十三あル遺体の身元を行え! それと生存者でアル八名はあちコチ傷は付いテル物の命に別状はナイ」
 シカット達八名はほぼ一日も眠らない為、今日この日はお日様が頂上に到達するまで眠る。
「それニシテモ鼾の五月蠅い物は後々説教すル必要があルナ! 特にシカット・ムーシと言う傭兵に関しテハ!」
 シカットは夢の中でかつての仲間達と飲み会をする……。



 ICイマジナリーセンチュリー八十二年七月九日午前零時零分零秒。

 第二十四話 二十四時間の脱出劇 完

 第二十五話 大空のトリ に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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