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一兆年の夜 第三話 あたいは生きる(六)

 あたいは必死であれから逃げたわ!
 服がボロボロになるのも気にせず、足が傷だらけになっても気にせず。
 でも、あれはあたいの逃げる方逃げる方にすぐ回り込んではあたいが逃げるのをただ見ては割り込んでまた見て……
「何がしたのよ! はっきり言いなさいよ! あたいを食べたいならさっさと食べればいいじゃない!」
 ちゃんと大きな声で伝えた--これで五回目。でもアレはうんともすんとも言わない。
「言葉を……話せないの?」
 あれはもはやあたいら命ある者達とは別の存在のように感じました。当然といえば当然かも。何しろあれは--
「兄貴や史乃さん、それに子音ちゃんや……ユーリディスを死なせてもまだ足りないの?」
 これ以上何を言っても時間の浪費だと感じました。
 あたいは例えあれに逃げられないと分かりながらも必死で逃げました。必死で逃げ--
「行き止ま、り?」
 確か今日の朝に羽通之に言ったことを今頃になって思い出したような。雪が積もると発射台のような物になる崖の近くにあたいはいた。
「あたいってなんて間抜けなんだろうね。伝統というモノから必死で逃げようとしたらいつの間にか伝統という物を追い求めていたなんて……」
 何言ってるんだろう? あたいがユーリディスや羽通之みたいに理知的に考えられないのはあたい自身が一番よく分かってるはずなのに。何で理知的みたいなことを?
「そうか! あたいが一番良くなかったんだね。伝統という物に憧れているのを知らずに伝統から逃げたふりなんてするからあたいは大切な物を死なせたんだよ」
 ユーリディスはあれに食われて死んだのではない。ユーリディスはあたいのせいで--
「あたいがユーリディスを死なせたんだよ!」
 なんて独り言を言ってるとあれはゆっくりと近づいてるよ。あたいをゆっくり食べるんだろうね。
「でもあたいはあんたに食われるのはお断りします」
 身も心も得体の知れないモノが駆け巡ってるね。これってなんて言う感情だろう?
「でもそんな感情よりもあたいはユーリディスの最後の言葉を優先する!」
 あたい自身でもわからないけどまさか崖から飛び降りるなんて--もちろんあれ自身はそんな行動をするなんて思わなかっただろうね?
 でも不思議だわ。こんなことしているのになんだか体中を駆け巡っていたモノが消えていく感じは。まるでそう--
「死ぬってことなの?」
 いや、これはそうは体には思えない何だか--


 心地よい感情なのかも知れない

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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