FC2ブログ

一兆年の夜 第二十二話 二つの星 覚醒篇(九)

 参花はユキを抱えながら心臓型まで走り続けるが、その前に指揮官型が先回りをした!
「どうするの! 指揮官型と無数の血管。とても心臓型まで--」
「全体を観察する事は他者や銀河連合のみならず己自身の観察にも繋がる!
 僕は少し強くなったからそれを操縦する術をまだ知らないと言う事だった!
 だから--」
「そんな事言ってる……って襲ってきたわ!」
 指揮官型は逃げる以外の行動が取れない参花をユキ共々死なせようと持てる腕と足を駆使して攻撃!
 一方の参花は動きを緩める。
「ちょっ! それでは--」
 右隠し腕が参花の左脇腹に当たる瞬間--参花は流れるように左へ回避!
「ど、どう--」
 今度は左足が顔面に入った--それは幻覚だった!
「え? え? どうして指揮官型の背後に移動してるのよ!」
「こっちだ、僕達を食べたいんだろ!」
 参花は心臓型にわざと背後を取らせるように立った!
「わっ!」
「ごめん、ユキ! 指揮官型相手には姉さんの包丁で倒さないといけないんだ!」
 参花は刃の欠けた新式神武包丁を抜く!
「無理よ! 今のあたしの状態と同じよ!」
 言葉通りユキの肉体は限界を迎えた。故に立つ事さえままならない。
「だろうな! 無理だろうな!」
「『だろうな』じゃないでしょ! 本当に無理な事をするのは団長の望みなの!」
「そうだ! 僕はエリオットさんのようになる為にここまで来た!
 無理をするのは代々仙者の務め! 無理を押し通す!」
 参花は左に降ろしたユキの頭上に右手を翳す。
「何なの?」
「門忍姉さんは僕に過保護だったよ!
 いつもこんなおまじないをしたんだ!
 『頑張る事は嬉しい事。だから頑張りなさい』と。
 そしたら何故か--」
 不思議な事に限界を迎えたはずであるユキの肉体はみるみる生気を宿し、彼女は自然と立ち上がった!
「これ信じられる?」
「ほんの数の分だけだよ! それくらいなら--」
 銀河連合はそれ以上の会話を許可しなかった!
「のわっ! 身体が軽い!
 これなら--」
「さあ来い、指揮官型! 僕は敢えて利に適わない位置に立った!
 一瞬で決着をつけるぞ!」
 参花とユキは予報通りの展開を演じる!
 そして--
「もうすぐ心臓型の中に!
 けどこれが神々のお言葉だあああ!」
「ごめん、参花様!」
 ユキは何時の間にか心臓型にいる参花と指揮官型の近くまで逃げる!
 指揮官型は無数の血管に視界を阻まれ、参花の新式神武包丁を受け止める余裕を損ねた!
(気付かれた! このまま行くよ!)
 指揮官型は距離を誤った--刃の欠けた分だけ避ける間隔を外し、そのまま喉仏に刺さった!
「!
 けど、そのままああああ!」
 参花は無数の血管に絡まりながらも異常な力を最大限に発揮し、心臓型に血管ごと指揮官型をぶつけた!
 衝突した心臓型は指揮官型の隠し腕の尖った部分を含めて複数の穴を開け、そこから津波の如き血液を放出した!
「や……がああああああ!」
「参花さあああアアアアまあアアア!」
 二名は血液の津波に巻き込まれそのまま意識を暗闇へと移動させた……。

 未明。
「んん、ああ?」
 参花とユキは眩い夕日に目が眩む!
「さん、かさ、まあ」
 声が聞こえたのか参花はユキを探した!
 すると褌に両手を掴みながらうつ伏せに倒れ込むユキの姿があった。
「ユキ? 無事な、のか?」
「さんか、さ、ま?
 参花様! 生きてらし……って何変な物を掴むのよ!」
 ドワオ--という声を出しながら参花はユキに右手正拳突きを顔面に受けた!
「よ、かった。ユキが無事で!」
「よくな……あれ、力が?」
 ユキはとっくの昔に肉体の限界を迎えた為、およそ夜を過ごすまで立ち上がる事は叶わない。
「参花様。恥ずかしながらもうユキ・ライダルは立ち上がる事は叶いません!」
「済まない、ユキ。もう少し早く来ていればこんなに……え?」
「参花……様?」
 参花は目の前に倒したはずの指揮官型が両足と右手のみとなりながらも二名を死なせようと静かに歩を進めるのを!
「な、んで?」
「くっ! 残ってるのはもう使い物にならない二式雄略包丁だけか!」
 それでも参花は鞘から錆びた包丁を抜くと両手に持って最後の突きを放つ!
「うおおおおおおお!」
「あた……え?」
「う……グオ!」
 参花の突きは指揮官型の眉間に届く前に股間から隠し足で参花の鳩尾に当てた!
(ぎん、が、れん、ごうを……。
 はあいての、つ、ぎ、のこう、ど、うを、し、るこ……)
 参花の意識は地面に倒れると同時に黒くなる……はずだった!
『俺のようになるな! お前は天同参花!
 エリオット・ボルティーニでもなければ天同棟一でもない!
 離の教えを今こそ思い出せ!』
 ほんの僅かではあるが参花は見ず知らずである兄棟一の幻聴によって意識を繋げた!
 その一瞬--左手で地面を抉るように叩きつけると左手のみで指揮官型の頭上まで飛び上がる!
「天候を知る事はアアアア!」
 指揮官型は余裕を持って迎撃しようとした瞬間--お日様は参花に味方する!
「天の神々を味方につけることを意味するうううう!」
 光で視界を阻まれた指揮官型に参花は飛び脳天斬りを放ち、そのまま直撃!
「指揮官型を斬る前に包丁はあちこちにち--」
 だが、指揮官型は脳天に受けた事で先ほどまでの傷と相乗して立ち眩みした!
 参花は壊れた包丁を離すと右手を熊手状態にしながら神武包丁の刺さった咽目掛けて--
「今度こそ楽にします!」
 当てた!
「死、んだけど……参花様?」
 指揮官型は活動を停止--最後の抵抗を試みたのか隠し足は臍に、右手は左胸に刺さった!
「グアアハア!」
 参花は吐血しながらもそれぞれ引き抜くとユキの元に歩き出す。
「参花様! その傷では--」
「な、にを言うか!
 こ、れぐら、い……グブ!」
「良くないです参花様!
 このっままじゃ死んでしまいます!」
「タメ口で良いってギャレイ土さんが、ガッハ!
 言ってたじゃ、ないかあ」
 参花は血だらけになりながらもユキを抱っこすると力を振り絞って光が漏れるところまで登るとそのままユキを投げる!
「参花、様ああアアア!」
 参花は投げ終えると中に戻るように落ちてゆく……!
(これでいい。僕の命はここで尽きる。
 後、はまあ任せていいかな?
 働かない事は指揮官にとって必要な事。無闇に働くと仲間が成長しない。一命前に成れない! 僕はここでは働かずに後はアラウンさん達にユキを救助してもらおう。
 はは、何だか、さむ、くなてきたよ。これって死んでいく過程なの?
 こ、恐いよ! 暗いよ! 助けて姉さん! 門忍姉さん! 狭間姉さん! 弐高姉さん!
 僕を一名にしないでよ! お願いだから助けよ!)
 参花は迫り来る死に恐怖するが--
『折角格好が付くと思ってたけどやっぱり参花は参花なのね!
 はあ、どうしようもない弟を私は持って辛いわ!』
「こ、の声は?」
『だけど私はこの世で一番参花が好きなのよ!
 だからこそ参花には生きてお嫁さんを貰い、たくさんの子供を作り、そして私達の生きた証をこの先もこれからも受け継がないといけないのよ!
 だからあなたは生きなさい! こんな無理な状況であってもあなたは生きなさい!
 天同だからだとか仙者だからとかもうそんな事言うのはやめるから生きなさい!
 それが私、天同弐高の死んでもなお伝えたい遺言なのよ!』
「にた、かねえ、さん!」
『自分からも伝えなければならない事がある!
 自分が死んだのは心身共に目が見えなくなったからだよ!
 でも参花様はそうじゃない! あなたは見えるじゃないか!
 自分には見れないモノを! それを生かさずにどうして自分の真似事が出来る?
 あなたには自分以上のモノに自信を持ちなさい!
 それが自分の教えた離なのだから!』
「えり、お、とさ、ん?」
(それから僕はイズモノキミさん、ジンバルさん、ライ子さん、ピネラさん、リアクターさん、スワンダさん、フル太さん、里香さん、それに狭間姉さんや門忍姉さんやその他いろいろな幻聴を聞いたかな?
 そして最後に--)
『想念の海に旅立つのはまだまだ早い!
 参花は生きるのだ! 俺達以上に長生きであれ!』
(無理な相談だな……)
 参花は自然と笑みが溢れだす。
 それは生きる選択をした証……!

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR