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一兆年の夜 第二十二話 二つの星 覚醒篇(四)

 七月十四日午前九時二分四十二秒。
 場所は旧トガ由紀道。二十の仮設民家が平行四辺形を描くように立ち並ぶ。その中心にある独特の形をした仮設民家。
 天同参花は毛布にくるまれ、仰向けで濡れた手ぬぐいを額に当てながら寝込む。
「速くしな、いとユキが--」
「そうはいきませんだ! 参花様がそんな状態で進行すればどれだけ式に影響を及ぼすかお分かりですかだ!」
 看病をするのはアラウン・アルティニムム。他十八名は銀河連合の奇襲に備えて動きやすいように配置。
「ごめん、みんな!
 僕が雨、に打たれな、がら、身体を拭かな、かったからこ、んな事に!」
「お喋りは身体に影響しますだ!
 今は我が団長の遺言をお読みになってだ、その都度指令を下しますだ!」
「で、でもギャレイ土さんは言うこ、と聞くか、な?」
「一応だ、『周りをよく観察してくれないかだ?』と提案したら聞いてくれただ」
「よ、かった。『六・全体を観察するべし』は、実行され、てるん、だね」
「それから里香殿にはだ、『銀河連合がどうなったか見てきてくれないかだ?』と提案したら聞いてくれただ」
「『七・銀河連合の行動を観察するべし』は、実行され、てるんだ」
「お喋りはここまでにしましょうだ!
 今日中だ、参花様は寝て下さいだ!」
「そ、うしよう、かな?」
 面倒だなだ--とアラウンは小声で呟く。
「ご、めん……」
 参花は謝罪の言葉を口にするとそのまま眠りに落ちる。
(『八・働くな』を実行中。みんなを信じよう。
 でないと迷惑をかけて……)
 参花の意識は黒い穴に落下してゆく……。





 未明。
 ユキとリンボルは駆けてゆく--赤い世界を!
「はあはあ、も、もう限界が来てる、かな?」
 ユキはリンボルから落豚--右うつ伏せに倒れ込む!
「だ、だいじょう、ぶ?」
「だいじょう、ぶじゃない。お腹の虫が鳴りすぎて、も、う無理!」
 ユキの両頬は徐々に直角を描くように萎む。それはリンボルも同じだ。
「わ、わたしも、もぶ限界が」
 リンボルの前後両足にかかる筋肉は立つのも辛くなる。
「いつ、に、なったら出口が、見え、るの?」
「そ、ぶ、前にここにいぶ、心臓の銀河、れんご、うがわ、たしを」
「え? ど、ど、どうゆうこと!」
 ユキは自分の見知らぬ情報に思わず両腕を立てた!
「お腹はすきすぎてもう動けないけどそれだけは聞きたい!」
「な、何をを--」
「リンボルさん!」
 ユキは一族代々伝わる威圧感でリンボルを圧倒させた!
「ユキちゃん! まさかこの話を--」
「早くして! それを聞いたら直ぐ倒れるから早く!」
 とても倒れていた者の言葉ではない!
 とうとうリンボルは--
「わかっぶわ! この話を聞ぶど恐怖しないぶね?」
 心臓型の銀河連合に関する話を始める!
「ここは私を逃がどくれぶ者の話では拠点型銀河連合の体内。
 私達は拠点型の産む道具としぶ扱われぶわ!」
「う、む道具?」
「言葉にすぶのは気分のいい事じゃなぶ。
 でもそぶとしか考えられなぶわ! だって私達はこうしど裸にされてぶのよ!」
「ええ、成り余らない部分まで隠させないんだから!」
「恥ずかしくどお嫁に行けなぶなるわ!」
「同感!」
「そ、それよりもどうして私達を産ぶ道具にするど?
 それは推測でしかだぶけどより強い銀河連合を生み出す為なのかぶ?」
「かぶ? はっきりしないわね!」
「あまり生意気な口を利かなぶでね。好きな子に好かれなくなぶと得しだいわぶ!」
「うっ!」
「良い子。ちゃんと聞いどくれぶね」
「そ、それより話の続きを聞かせて!」
「わかっぶわ! 拠点型はいかにして私達を産む道具にすぶかをね?
 それは心臓型が--」
 それ以降リンボルが口にする事はなくなった--突如背後から血管が成り余らない部分から子宮を貫き、その勢いで口まで届く!
「あ、れ? 腰砕けたことなって?
 目を瞑ろう!」
 ユキは目の前の光景を信じないが、再度眼を開けても同じものしか映らない!
「あ、ふ、あふ!
 い、い、いま、いま、いますすぐに、に、に」
 リンボルの口から溢れんばかりの血が滝のように流れ出すのを見ながらユキは恐怖心を必死で抑えるしかなかった!
「ややや、と--」
 ユキが立ち上がるとリンボルを貫通した血管は彼女からゆっくりと離れる!
「見ちゃいけない! に、に、げないと--」
 ユキは血管に背を向けて腕立て伏せを一回した直後--飛ぶように走る!
「お腹の虫が鳴るけどど、もうそんなな、の気にしないでね!」
 独り言を呟いてでも空腹を抑えようと必死だ!
 しかしー-
「はあはあ」
 五の秒走っただけで両腕を大地につけた!
「から、だがおも、うよう、に」
 ユキは僅かな力を出して、血管の死角になる部分に隠れた。
「見ちゃ、いけ、ない。こ、の、まます、ごさ、ない、と」
 しかし、ユキは隠れながらも血管を見てしまった!
「ヒイ!」
 血管の先端から成人体型二くらいある楕円形の卵が落ちる。卵はやがて膜を破り、現われたのは--
「あ、わわわ……」
 ユキは泡を吹いて意識を向こう側にゆく……。

 七月十四日午後九時五分一秒。
 場所は旧トガ由紀道。二十の内、真ん中にある天同参花が寝る仮設民家。
(……!)
「ユキイイイイイ!」
「なだ! 何事ですかだ!」
 参花は上体を起こしながら両眼を限界まで開けた!
「ユキが、ユキが--」
「参花様だ? どうなされたのですかだ?」
 参花は立ち上がろうとするも--
「う、うう--」
 未だに熱は治らない--そのまま仰向けに倒れ込む。
「クソ! 僕が熱で倒れなければ今すぐユキの所、に--」
「参花様だ。お気持ちは痛みを発するほどわかりましただ!」
「わかって、たまるか! この痛みは僕だけで、十、分だよ!」
「いえだ、わかりますだ!
 ユキは我等ボルティーニ団にとって女房のような存在ですだ!」
「女房?」
 その言葉に参花は食らいついた。
「ええだ、ユキは八の年より前に母親を死なれただ。その時、団長に拾われて以来ずっとボルティーニ団と運命を共にしますだ!」
「ユキはずっとボルティーニ団と共に?」
「当時の我は子供だったよだ!」
「今とどう--」
「話を続けますだ。当時ボルティーニ団は結成してまだ日は少なかったよだ!
 我とギャレイ土だ、それにイズモノキミ殿にリアクター殿だ、それから里香殿と狭間様もいらしておりましたねだ」
「え? 狭間姉さんまで!」
「団長は狭間様のお話はなさらなかったのですねだ」
「知らなかったよ!」
「まあだ、狭間様は一の月の間だけ我等と共に行動しただけだよだ。
 あの方は参花様の事で夢中だったものでだ」
「良い迷惑だよ!」
「話を戻しますだ! ユキは母親譲りの大変面倒見のよい子だったよだ!
 我等を母親譲りの威圧で叱りつけると思ったらだ、身の回りの世話を懸命にこなしたよだ!」
「何だかますますユキは弐高にたか姉さんに似てるよ!
 威圧感といい、面倒見の良さといい」
「弐高様ですかだ。あの方について宜しいでしょうかだ?」
「いいよ、長くなって明日まで熱で寝込むわけにいかないよ!」
「そうですかだ。長くお話をして申しわけありませんだ、参花様だ」
「いいよ。ありがとう、アラウンさん!
 そしてお休み! 明日は元気になってみせるよ!」
「お休みだ、参花様だ」
 挨拶を交わした参花はゆっくりと眼を閉じる。
(ユキの事について少しだけわかった気がする!
 弐高姉さんが生きていたらユキは姉さんに焼いた餅を焼くようになってたかも?
 もうそんな考えはいいか。それよりも僕は!
 僕はユキを取り戻す為にも明日こそ生子様が眠る地に……銀河連合が住み着く
国家神武に乗り込んでユキを助ける!
 例えエリオットさんのように命を捨ててでもな!)
 明くる日、参花は十五の誕生日を迎える……覚醒は間近に迫る!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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