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一兆年の夜 第二十二話 二つの星 覚醒篇(三)

 未明。
「中々固いわ。んんー、んんー!」
 齢十五にして一の月と五日目になるアリスト人族の少女が銀河連合によって全裸にされながら両手両足を縛られていた。
「丸一の日が経ったけど、お腹の虫は鳴るし疲れるし、何よりここの匂いがきつくて頭が変になりそう!」
 それでも親指と同じ大きさの両眼を開けながらも必死で両手両足を縛る縄の強度に近い血管を解こうとした!
「はあはあ、参花様! 参花様!」
 少女は愛する者の為に行動するが、どうしようもない現実を前に諦めかけようとしていた。
 その時、少女の視線の奥より齢十九にして八の月と二十七日目になるキュプロ豚族の少女が全裸になりながら逃げてきた!
「あれって?」
「はあはあはあ、こ、こにぶいた!」
「あ、なたは誰?」
「私? はあはあ私の名前はリンボル。名字はクロウッチ。キュプロ豚族の者でぶ。
 あなたはどなた様?」
「あたしの名前はユキ・ライダル。アリスト人族よ!」
「そうでぶか。と、とにかく縛っていぶ血管を解きまぶ」
 リンボルは派手血管全てを引きちぎる--千切られた際、大量の赤黒い液体を放出しながら!
「あ、有り難いけどこの液体は身体に良くなさそう!」
「私なんか口に入っど水で濯ぎだぶわ!」
 二名は液体を下に落としてゆくが、一度付いたものは中々落とせない。
「気になるけど、リンボルさんはここで--」
「そ、そうだっぶわ! 私は必死で逃げよぶとしだぶわ!
 国家神武そのものであぶ銀河連合の外へ出ぶ為に!」
「え?」
 ユキは自分が国そのものを食らった銀河連合の体内にいる事実を正確に認識できなかった!
「ユキちゃん。ここは体内ぶ。ここは国家神武の成れの果てだどよ!」
「いやいや、そもそも国家神武っていうのは代々聞いた話じゃああちこちに建物が--」
「銀河連合は全てを食だい尽くしぶこんなにしだぶよ!」
「信じられるわけないわ!」
 ユキは水色の長髪を乱しながら言い伝えとは程遠い国家神武の姿に望みを絶った!
「と、とにかく私達は一刻も早くここから出なぶと!」
「え、ええ。そ、そうですよね!」
 ユキは平常心を取り戻そうと必死だった。
「ユキちゃん! 私の背中に乗って!」
「重たくない?」
「豚族の雌を嘗めないで!」
「わかったわ!」
 ユキはリンボルの肌色な背中に乗る--リンボルはすぐさま出口を求めて走る!

 七月十三日午後六時七分二秒。
 場所は旧トガ由紀道。かつてマンドロス山の除去作業で銀河連合との戦闘で仲間を庇って死んだ陸上官藤原トガ由紀を称える道路。
 参花含む二十名のボルティーニ団はそこを通る。
(まだ国家神武が見えないなんて! そんなに遠いところにあるなんて!)
「ところでマンドロス町を取り戻したんはいいですがだ、町をどうしますかだ?」
「え? えっとそれは--」
「アラウン? 忘れたの?
 町に来る途中、キュプロ町の放浪猫、大山ニャロ助に頼んでおいたわ!」
「それが心配だ!」
「うん、行き当たりばったりだよな、僕達って!」
 参花は自分達は無計画に行動している事に少し安心できない気持ちになる。
(けれどもここで退くわけにはいかない!
 僕は指揮官だ! 『一・指揮官は常に強くあれ』を実行中!
 今は何が何でも弱いところなんて見せられるか!)
「弟君? いつだってあたいに相談しても良いのよ!」
「いつ銀河連合が現われるか分からない以上それは後にするよ!
 それに僕が強気でいかないとみんなが元気付かないよ!
 『二・仲間を元気づけろ』を実行中だからね」
「ふうん、団長の遺言は守るんだね!」
「今は突き破る時だよ!」
 参花は微笑みで返す。
「うーん、やっぱり君は誰に相談したほ……ん?」
 中条隊の隊長中条里香は前方に現われた影を発見!
「参花様あ! あの体あは剥き出あされてえいる!
 間違いいなければあ銀河連合だあ!」
「僕だってわかったよ!
 しかも数は十、二十--」
「坊主! 俺の視力と勘を駆使すれば援軍を含めて百は超えるぞ!」
「モルルカの予測を下回っともオラ達に利がないう!
 ここは--」
「わかりました!
 全軍、ここは後退だ!」
 ボルティーニ団は銀河連合との直接対決を避けるべく右回りに退却する!
(『三・多数の銀河連合に勝負するな』を実行中!
 ただでさえボルティーニ団のみんなは少ない! 国家神武跡に向かうまでに全員を何としても生き延びなければ!)
 参花は全体を眺めながら撤退戦を繰り広げる--それは正に大規模な鬼ごっこだ!
 その頃、天気は曇りとなる。
「参花様? 雨漏りはどうされ--」
「ロージャさん! 今は天気のことなんか頭に--」
「参花様だ! 急接近する銀河連合が来ますだ!」
「え?」
 それは鷲型に運ばれて高度成人体型十の高さより指揮官型が落下した!
「あれは指揮官型! エリオットさんを死なせた銀河連合!」
 参花は左腰に掛けている里香から渡された天同狭間の遺品である新式神武包丁を抜くと逃げながら構えた!
(仇は討ちたい! 怒りを出したい!
 でも指揮官型には勝てない! やり合えば必ず僕が死ぬ!
 けれども抵抗せずに死ぬのは御免だ!)
 指揮官型は大地に着地するとすかさず参花に向かって突撃する!
「ガアア! 速い! 踏み込みが速い!」
「参花様だ! お怪我は--」
「大丈夫! 守の教えに従い、怪我は少なくした!」
 参花は指揮官型の繰り出す攻撃を避けずに全て神武包丁で防御した!
(けどいつまでも防御に回れない! 狭間姉さんの遺品はそこまで僕を守れない!
 ならば--)
 参花は左手を柄から離すと右腰に掛けていた二式雄略包丁を抜いてそのまま指揮官型に斬りつける!
「外れた!
 でもそれが狙いだ!」
 指揮官型は回避した時に体勢を崩したのか次の行動に出られない--その隙を突いて参花は日本の包丁を鞘に戻すとすかさずボルティーニ団へ一斉攻撃の合図を出す!
「例え倒せなくてもいい! 銀河連合から撤退してくれたら僕達が有利となる!」
 団員は指揮官型に一斉攻撃を掛ける!
 一方の参花は空を見上げる。
(『四・天候を観察するべし』を実行中! この場合天気は僕達に利が適わない。
 だったら『五・頭を狙え』だ! 指揮官型を倒せたらいいけど撤退したらそれに釣られて他の銀河連合も撤退してくれるはず!)
 指揮官型は反撃する暇もない団員の総攻撃に状況不利と感じたか、隙を窺って素早く撤退する!
「逃がすかあ!」
「ギャレイ土隊長! 怒りをお鎮めになりましょうん!」
「くう!」
 ロージャの言葉に反応してギャレイ土は足を止める!
「おかしい光景ね。銀河連合が一斉に撤退するね」
「んー? 雨ー? 雨がー降ってーきたよ!」
 空から一滴一滴と最初は静かに、そして徐々に勢いは増し、やがて大雨となった!
「みんな! どこでもいいから雨漏りしよう!」
 ボルティーニ団は急いで仮設民家を作ってゆく!
(これは勝利じゃない! 僕達は勝負を避けていくしか今の道はない!
 ユキ。今頃どうしてるのだろう?)
 参花は自分が三十の分掛けて作った仮設民家の中で雨によって全身が濡れた状態でユキの心配をする……。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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